企業のいま

5Gが生み出す「業界融合」の実現に向け、アクセンチュアがもたらす価値提供とは

高速・大容量・多接続を実現した5Gは、4Gの延長線上にあるものではない。これからの企業の戦略やビジネスモデルに、非連続的な変化をもたらすと言われている。では、「なに」が「どう」変わるのか?拡張するバトルフィールドで、次に打つべき手を問う。

「高速・大容量」「超低遅延」「同時多接続」を実現。通信速度は理論上約100倍に達する。そんな5Gが本格展開すれば、ビジネスにおけるデータ活用のあり方が根本的に変わり、様々なイノベーションが生まれることが予見される。

5G実用化の要となるのは、ネットワークを握る通信事業者だ。アクセンチュアの「通信・メディア プラクティス」は、業界のエキスパートとして通信事業者が進むべき方向を見定め、クライアントの変革を主導する。

2012年の入社時から通信業界の幅広いテーマを支援し、専門性を深めてきたシニア・マネジャーの筒井亮介は現在、5Gを前提としたデジタルビジネスの立ち上げに従事する。5Gがもたらすビジネスの変化とそこにある課題、渦中の業界を支援する仕事の醍醐味について聞いた。

5Gは4Gの延長線上にはない非連続的な変化をもたらす

――通信・メディア プラクティスという組織の概略と、強みを教えてください。

我々は、おもに通信事業者やメディア系事業者のお客様に対してコンサルティングを行う組織です。

ビジョナリーであることを前提に、ストラテジストであること、プロデューサーであることを重視しており、単にクライアントの依頼や要求にだけお応えするというよりは、業界の変化やテクノロジー動向をいち早く捉え、アクセンチュアとしての視点を打ち出しながらコンサルティングを提供しています。

我々は長くクライアントと伴走しながら培った深い業界理解や、ビジネス・テクノロジーの両側面から、課題・ニーズを多面的に把握できている点が強みです。また、これはアクセンチュア全体の強みになりますが、他業界の知見を持つチームとコラボレーションができることも大きいです。インダストリーコンバージェンス(業界の垣根を超えて価値創造すること)と言われるように、通信業界が持つ5Gのようなテクノロジーを用いて小売など他の業界が持つ課題を解決しよう、というような案件が増えてきています。

筒井亮介
ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ シニア・マネジャー。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、2012年アクセンチュア入社。通信業界を中心に、新規事業戦略立案・成長戦略立案・ビジネスプロセス改革等の幅広いテーマを支援。近年はAIやIoT、音声認識等の技術に加え、5G・MECを活用したデジタルビジネス立上を中心に従事。

ーー筒井さんは、5Gのインパクトをどのように見ていますか?

「次は5Gだ」という話が聞かれるようになったのは2010年代中頃でしたが、当時は4Gの延長線上にあるテクノロジーだ、という理解が一般的でした。高速・大容量・多接続だから、今まで1分かかっていた動画のストリーミングが瞬時に終わりますとか、たくさんのデバイスが繋がりますとか、単にそういう話だという捉え方です。

しかし、ここ数年で我々の見解・知見を取り纏める中で、5Gはビジネスを大きく変える起爆剤になるだろうと認識するようになりました。

ーー5Gがもたらす変化を具体的に教えてください。

まず、5Gそのもの単体での変化だけを捉えるのではなく、5Gによって様々なテクノロジーに派生的な影響が及んでいくことを念頭に置くことが重要です。例えば、5Gと共に普及が期待されるものとして、MEC(Multi-access Edge Computing)というテクノロジーがあります。これは、データ処理をクラウド上でもデバイス上でもなく、ユーザーに近いエッジ拠点で行おうという発想です。

代表的な例として倉庫内での作業を担うようなサービスロボットについて考えてみましょう。LiDARなどのセンサーが取り込んだ周囲の映像などの情報をロボットというデバイスの上で処理し自律的に動かしていく方法が一般的なやり方です。しかし、デバイスで行うのはセンシングだけに留め、処理はサーバー上でやりましょう、というのがMECの考え方です。センシングしたデータを5Gの大容量ネットワークを通じてMECに送り、処理した結果をデバイスに返すことでロボットを動かしていくわけです。そうするとデバイス自体は高機能である必要がなくなるので、デバイスの低コスト化・軽量化が進みます。

5GとMECが普及すれば、データ関連のコストが劇的に下がる。テクノロジーを前進させる上でのボトルネックだった、データを取り扱うことの難しさが解消されれば、想像で終わっていたようなユースケースが現実のものとなっていく。

他にも、今は色々な場所に監視カメラがありますよね。それがネットワーク上に繋がれば、集められるデータの量が加速度的に増えていきます。センサーやカメラは一般的なもので構わないので、それがありとあらゆるところに埋め込まれデータを取っていけるとなると、データの生成コストが大幅に下がっていきます。

また、5Gになったからといって通信単価が大幅に上がるわけではないので、ビット単価は下がり、データの転送コストも下がります。後は集めたデータをMECなどの基盤上で処理していくわけですが、インプットデータが増えるほどAIの学習スピードが早まるため、処理のコストも下がっていきます。

つまり、5GとMECによってデータ関連のコストが劇的に下がるわけです。これまではデータがテクノロジーを加速させていく上でのボトルネックでしたが、5GとMECでそれがなくなっていきます。そうすると、「AIを使えばこんなことができますね」という、今までは想像で終わっていたようなユースケースがいよいよ現実のものになっていくでしょう。これは非常にインパクトの大きいイノベーションの可能性を秘めていると思います。

ーー企業の戦略やビジネスモデルにも大きな影響がありそうです。

中国の三一重工という世界第2位の時価総額を誇る建機メーカーは、MECでの処理を前提とした無人搬送フォークリフトを導入しています。それによって、これまでのデバイス上での処理を前提とした高額なフォークリフトと比べ数分の1の価格を実現しています。

これは別に建機だけに留まった話ではありません。メーカーは今後、いかに優れた機械を作るかというハードウェアビジネスから、いかに優れたユースケースを作り、最適なアーキテクチャで実現するか、どのように機械のインテリジェンスを高めていくか、といったソフトウェア的な発想へのモデル転換が求められるようになってくるでしょう。

通信事業者のバトルフィールドが拡大、他の産業への提案力が求められる

ーー通信事業者にとってのインパクトはどうですか。

もちろん大きいです。今までは、通信業界という閉じた世界の中でどう戦っていくかという話が中心でした。しかし5GとMECの例が示すように、通信とデータ処理が一体不可分な形で融合していきますので、通信事業者はネットワークとMEC、クラウドを最適に配備し、最もパフォーマンスの高い組み合わせを提供していくことが求められていくでしょう。

そうなると、クラウドの主戦場を担うMAG(Microsoft / Amazon / Google)との対峙は避けて通れません。バトルフィールドがどんどん拡張していくことになります。

これは通信事業者にとって困難な局面であると同時に、通信事業者固有の5GやMECといった強みを武器に、新たなビジネスに参画できるチャンスとも捉えられます。

5Gがもたらすインパクトは通信事業者にとっても大きい。クラウドの主戦場を担うMAGと対峙していかなければならないからだ。

ーー他の業界とのコラボレーションの芽は出てきていますか?

はい。例えば、ある小売業のお客様が次世代の店舗というものを構想しています。5GやAI、IoTを活用するというイメージはお持ちですが、自分たちのビジネスにどう適用するのかを具体的に描くのは難しい。そこに対して、通信事業者側から「こういうことができるんじゃないですか」と力添えをしていくようなことが期待されます。

最近は他のお客様で金融系の案件も出てきています。例えば顔認証による決済はよく話題にはなりますが、認証用のサーバーを店舗に置いておくには多大なコストが掛かります。しかし、店舗ではカメラで顔画像を撮るだけで、それをMECに上げて処理するというのであれば低コストで顔認証が実装できます。そのような形で顔認証決済がいよいよ普及してくれば、金融ビジネスが変わってきますよね。

これは海外の例ですが、中国建設銀行という銀行は無人の店舗を作りました。ドアや壁など、至るところに取り付けたセンサーで来店者のデータを取るんです。そうやって多角的に大量のデータが低コストで取れるようになると、より深い顧客理解が可能になっていきます。それにより、例えばその人の属性や状態に合わせた最適な金融商品を提案するといった価値を提供し、売上を伸ばせる可能性があるということです。

ーー5Gの実用化は、現在どのような段階にありますか?

5Gは基地局の整備がまだ途上段階にあり、MECもこれから面的に配備していくことが必要になります。5Gが本格化するのは2023年頃と言われていますので、そのタイミングを目掛けて企業の動きも加速していくでしょう。

それに合わせて、我々としてもまだこれから更に貢献できる範囲を拡げていく余地があると思っています。5G事業の戦略を構想・策定するといったご支援から、インフラの整備・業界融合の進展に伴って、通信事業者と異業種とのコラボレーションを図り具体的な実ビジネスを策定・伴走していくご支援の機会が増えればと考えています。

アクセンチュアだから、異業種の協力関係を促進できる

ーー5G時代のビジネスを成功させる鍵はなんでしょう?そして、その先にはどんな未来が予測できますか?

未来を完全に予見することはできないというのが、私のスタンスです。5GとAI、IoTなどが絡み合って進化していくので、それらのテクノロジーが組み合わさった際にビジネスがどう変わっていくか、もう予測するのは不可能だと思うんです。

ちょっとかっこよすぎるかもしれませんが、自分たちで未来を作っていくしかない。あるいは、ものすごく早い変化に合わせてどんどん方向転換し、機敏に対応できるような組織作りや企業運営をしていくか。そのどちらかにしか、「解」はないんじゃないでしょうか。

5G時代の先の未来、ビジネスがどう変わっていくかを予測するのは不可能。それならば、自分たちで未来をつくるか、変化に合わせて方向転換し、機敏に対応できるような組織づくりや企業運営するかだ。

ーー柔軟に変化できる組織を作るしかないと。

そう思います。そういう判断を事業部単位でやっていくのは難しいですから、社長などトップマネジメントやCXOがリーダーシップを持って進めていく必要があるでしょう。

ーーそのような世界において、アクセンチュアが提供するソリューションの強みはなんですか?

我々、通信・メディア プラクティスと、他の産業の知見を有するチームとが一体となって業界間のコラボレーションを進めることができる点です。

5Gは今後更に普及していきますから、新しいユースケースが矢継ぎ早に出てきて未来が思わぬ方向に変わっていくはずです。後追いではなく一歩先を見て取り組むことが大事で、我々は共に未来を創っていくパートナーとして貢献できるはずです。

特に、5Gを活かすには企業間のコラボレーションが鍵になります。通信事業者側と他の産業側と、双方が共に物事を進めていく必要があります。それぞれの産業で幅広いクライアントに対する支援実績があり、各企業のCXOクラスとの関係性があるアクセンチュアだからこそ、双方を繋ぐという役割ができるのではないかと思います。

立場に関わらず「Think Straight, Talk Straight」で、自分なりの考えを示せる人と働きたい

ーー筒井さんにとって、この仕事の面白さはどこにありますか?

コンサルタントって、難しい課題をどんどんいただく立場ですよね。その課題に対して、我々なりのビジョンを策定していくわけですが、その過程で「本質はこういうことなんじゃないか」というのがパッと見えるようなタイミングがあるんです。独りよがりかもしれませんが、その瞬間は「他の人より一歩先の未来を見ている」という感覚があって、それが楽しくてやっているところがありますね。

学生時代から、新しいテクノロジーを使ったイノベーションに興味を持っていました。アクセンチュアに入社して通信業界を志望したのも、通信業界がイノベーションに対して非常に積極的に取り組んでいると感じたからです。そういう場に身をおいてワクワクしたいという気持ちはずっと変わりません。今もまさに、5Gでビジネスが変わっていく節目にいますから、他の業界とも交わりながら、新たな事業や産業創出に携わっていきたいです。

イノベーションによって生まれる「一歩先の未来」、そういう場に身をおいてワクワクしたいという気持ちはずっと変わらないと、筒井は目を輝かせる。

ーー最後に、これからの「通信・メディア プラクティス」では、どんなメンバーを求めていますか?

アクセンチュアの社風を表す言葉として「Think Straight, Talk Straight」があります。経験や役職に関わらず誰もが考え抜いて価値を追求し、自分の意見を素直に発言する。これにより良いアイデアが生まれるという考え方です。

プロジェクトを成功に導くためには、そのために必要な強みを持っているメンバーでチームを組成します。そんな中にあって、まだ業界の知見や経験の蓄積が少ない若手のメンバーが価値を出していくのはなかなか難しいことです。それでも、自分なりの視点を持って「こういうことなんじゃないか」と意見を言えるような人を、私は積極的にチームに入れていきたいと思っています。

私も全ての正解が分かっているわけではないし、メンバーに言った通りそのままに従って欲しいとは思っていないんです。自分なりに考えてどんどん「Talk Straight」で議論できるような人材を求めています。