企業のいま

変化なしに企業の成長はない。あらゆる業界の専門家が集い「クライアントの先にいる顧客」の体験まで考え抜く

高度経済成長期の成長戦略から抜け出せないまま、失われた30年をやりすごしてきた企業は多い。しかし、その先に「成長」はないことは自明の理だろう。クライアントの成長を実現する専門組織を持つアクセンチュアでは、どのような戦略で支援をするのか?今の時代に必要な「変化」を問う。

日本企業の成長が鈍化して久しい。原因のひとつは、「既存の商品・サービスを効果的、効率的に提供し、シェアを拡大していく」という高度経済成長期の成長戦略から抜け出せないまま、失われた30年をやりすごしてきた企業が多いことにある。そんななか、今の時代にフィットした成長のあり方を支援するのが、アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部にある専門組織「カスタマー&セールス」だ。

シニア・マネジャーの中村耕介は、新卒で入社直後に情報システムのアウトソーシング事業の立ち上げに参加。続いて日本企業の海外法人グループを支援するプロジェクトに志願して参加後、大手製造業のグローバルなプロジェクトを中心に、BtoBの営業やマーケティング領域でコンサルティング経験を積んできた。カスタマー&セールス プラクティス異動後はBtoCにも範囲を広げ、海外の動向も見据えながら顧客の成長に寄り添ってきた。多岐にわたるプロジェクトに携わってきた中村の視点を通して、企業の「成長」に必要なこと、そしてこれからのコンサルタントに求められる資質を考えていく。

「変化」することなしに企業の「成長」はない

――「カスタマー&セールス」はクラアントの成長を実現する専門組織とのことですが、企業の「成長」をどう定義しますか?

市場、あるいは顧客に価値を提供するために常に変化にチャレンジしていくことだと考えています。

クライアントのニーズも、企業が持つ技術も常に変化し続けるものですから、同じモノやサービスを同じクライアントに提供し続けるという形では10年、20年と生き残ることはできないはずです。変化なくして成長はありません。

――では、現在はどのような方向への「変化」が求められているのでしょうか。

私が担当させていただくことの多い製造業のクライアントであれば、これまでは、なるべく多くの消費者に自社の製品を届けるということが「価値を提供する」ひとつの方法でした。しかし「モノからコトへ」とよく言われるように、消費者はモノそのものよりも体験やサービスを求めるようになってきています。効率的に製品を作ってどんどん市場に投入するというよりは、市場のニーズを細かく捉え、消費者の求める体験やサービスを提供していくという形に変化していくのが、今の成長の方向性ではないかと思っています。

ただ、こういう変化は一朝一夕には実現しません。先行している企業においても、10年ほど前から取り組み、試行錯誤をしながら、やっと5年ほど前から新たな製品やサービスが出てきているのが実情です。日本企業も当然取り組みははじめており、モノを売るだけではないサービスを開始したり、月額利用料をいただいて商品を提供する「サブスクリプション型」のビジネスを展開しようというところが出てきています。

できるだけ多くの消費者に自社の製品を届けるだけの時代は終わりつつある。消費者はモノそのものよりも体験やサービスを求めるようになっているからだ。

今の段階では、BtoCのビジネスをしているクライアントの方が変化のスピードが速いです。しかし、BtoBでも購入の意思決定をするのはクライアントの中の個人ですから、広告やeコマースでの体験など、個人のニーズに合わせて提供していく必要があります。そういう意味では、BtoBのやり方も、BtoCに近づいていくのではないでしょうか。

今あるものを活かし、時には手放す。その組み合わせで「成長」を実現

――クライアントの成長をどのような戦略で支援されるのでしょうか。

アクセンチュアとしては、企業が生き残っていくためには成長が不可欠で、それを支援するのが我々の仕事だと考えています。その成長の仕方ですが、大きくはふたつの戦略があります。ひとつは新しいサービスや商品の開発をしたり、新しい市場を開拓したりということです。もうひとつは、既存の事業の価値を上げていくということです。

前者については、実現するのに非常に時間がかかります。人やモノや資金など、あらゆる意味でリソースが必要になります。ですから、まずは効率化によって既存の事業を改善し、新しいことに取り組む余力を作りましょう、というアプローチを取ることが多いです。

全く新しい分野や市場で成功するのは、やはり簡単ではありません。既存の事業や自社の強みをきちんと理解してそれを活用しないことには、成長できないと思うのです。一方で、何かを切り捨てないことには新しいところに行けません。我々は「ピボット」と言っていますが、既存ビジネスを強化することで足元の利益を捻出しながら、新たなビジネスモデルの実現に向けて踏み出していくというのが、基本的な考え方だと思います。

――成熟した既存市場は飽和しており、成長は望めないという考え方もありますが、その点についてはいかがですか。

既存の市場が飽和しているとは思いません。たしかに便利な世の中にはなりましたが、何かしらの不便さ、窮屈さというのはあって、全ての人が大満足している状態ではないですからね。クライアントが既存商品の何に価値を感じていて、まだ満たされていないニーズは何なのか、そこをちゃんと捉えられれば、既存のビジネスで成長する余地があるはずです。

例えば、私が担当しているクライアントに、家庭用の機器を販売している会社があります。すでに定番の商品ですが、その商品をより利用者がストレスなくタイムリーに利用できるように、利用状況を企業側で把握し、消耗品の提供や修理の必要性をプッシュ型で提供するようなサービスを検討しています。

ひとりではなく100人で考え抜いたほうが考えのレベルが上がる

――企業の成長のために、アクセンチュアだからできることとは何でしょうか?

アクセンチュアは「クライアントの先の顧客を見る」ことを重視しています。我々はクライアントに対して、「皆さまの顧客は、こういうことを考えている」と語れないといけないと考えているのです。

例えば、いわゆるリサーチをかければ、一定の情報をつかめますが、アクセンチュアの良いところのひとつはあらゆる業界の専門家がいるというところです。リサーチでは分からない生の声を、社内の専門家を通して知ることができるのです。クライアントの顧客の業界の課題やニーズを把握した上でコンサルティングできるというのは、ひとつの価値だと思います。

――なぜ、そのような専門家がそろっているのでしょうか?

アクセンチュアはあらゆる業界のクライアントに対してコンサルティングをさせていただいていますので、その知見が溜まっています。また、様々な業界から様々な人が集まっており、実際に身をおいていた業界だから大変によく分かっている、そういう人たちに話を聞くことができるのです。

――社内の専門家とは、どうやってつながるのですか?

アクセンチュアには、グローバルで利用されているナレッジ共有サイトがあります。そこで関連事例を見つけて、各事例のコンタクトパーソンに連絡を取ることができます。

加えて、もっとオープンに、社内SNSなどで質問や相談を投げかけてみることも可能です。クライアント名などを伏せた上で、「今こんな仕事をしていて、こんなことが知りたいです」と投稿すると、海外のメンバーも含めてかなりの反応があります。

もともと、一人ひとりが自身の専門性を追求・確立してキャリアを築いていくのがアクセンチュアのメンバーの特徴でもあるので、上司などを介することで適切な相談先となるメンバーにたどり着くことも多いです。

――部署や国も超えてナレッジが共有できるのは、アクセンチュアの強みですね。

突き詰めると、コンサルタントの価値は考え抜くことでしかないと思っています。ただ、ひとりで考え抜くよりも100人で考え抜いたほうが、当然考えのレベルが上がりますよね。「ひとりで考えただけの状態でクライアントと話してはダメだよ」とプロジェクトのメンバーにもよく話しますし、自分でも常に意識しています。

コンサルタントに必要なのは「賢さ」よりも「コラボレーション力」

――今、コンサルタントに求められている資質や磨くべきスキルとはなんでしょうか?

「コラボレーション力」ではないでしょうか。これが15年ほど前であれば、コンサルタントにはとにかく「賢さ」が期待されていたのだと思います。「お客様の課題はこれです」「目指すべきはこれで、打ち手はこれです」と言い切り、少人数のチームで計画を立てて実行を支援するようなイメージですね。

今は、そういうコンサルティングはある程度コモディティ化しているように捉えています。我々としては、個別のクライアントそれぞれに対し、業界横断で様々な知見を取りまとめ、社内の様々な部門から必要なリソースを集めてコンサルティングサービスを作り上げようとしています。

そのためには、社内の色々な方とコラボレーションしなければいけませんし、他社との連携も必要です。さらに言えば、クライアントとの関係もコラボレーションと捉えて色々な取り組みをさせていただいています。アクセンチュアだけですべてが実現できるわけではないので、クライアントとパートナーシップを築いて一緒にやっていけることができるかどうかが重要な点だと思っています。

社内の様々な部門から必要なリソースを集めて、クライアントの変革を支援するアクセンチュアにおいて、「コラボレーション力」は最も問われる資質ではないか。

――クライアントの方からも、一緒にやっていこうという姿勢が感じられますか?

正直、最初の時点では「コンサルなんでしょ?あとはお願いね」というクライアントも少なからずいらっしゃいします。ですが、我々の方からは「全力でサポートしますので、一緒にやりましょう」という伴走型のプロジェクトをご提案します。とにかく「やりきる」こと無しには改革は実現できないので、計画を作るだけではなく実行フェーズまでお付き合いすることが多いんです。

プロジェクトの期間は案件によってバラつきがありますが、実際に改革の実行までやり切ると、例えば組織や業務プロセスを変更しきるには1年かかるようなケースもあります。そういうプロジェクトを進めていく中で、クライアントの姿勢も変わって来ると感じています。

――組織や業務プロセスにまで手を入れるとなると、クライアントとの意識合わせも大変では?

たしかに、いきなり理解し合えるということはありません。途中でさまざまな議論をしながら、クライアントと共に改革を進めていきます。まずはしっかりとクライアントのお話を聞いた上で、我々の仮説や提案を理由も含めてきちんとお話し、どれだけクライアントのことを考えているのかが伝われば、最終的には信頼関係ができていくのだと思います。

私にとっては、クライアントとのコミュニケーションこそがこの仕事の醍醐味です。それが一番楽しいし、クライアントと接するところに価値があるとも思うのです。

――これまで、コンサルタントとして大事にしてきたことはなんですか?

そうですね......3つあります。1つ目は「為せば成る」。アクセンチュアのプロジェクト、あるいは任せられる仕事で、最初から「できそうだな」と思える仕事はあまりないんです(笑)。でも、基本的には「やります」と言うようにしています。そうすることで個人として成長できるし、そうしなければクライアントの成長もアクセンチュアの成長もありませんから。

2つ目は「謙虚」です。コンサルタントによって色々なスタンスがありますから、あくまで私自身の考えですが、まずは相手の話を聞くことが重要です。コンサルティング業界には、クライアントの話を遮って「いや、それはこうですよ」と話し始めるタイプが多いですが(笑)、私はそういうタイプではないですね。「これって、こういうことですよね?」とか「そうだとすると、こういうことがお悩みですよね」とか、2回・3回聞き返しながら話を聞くように心がけています。

3つ目は、「助け合い」です。先にもお話したとおり、簡単ではない課題に対して、一人で考え抜いてもベストの答えにはたどり着けません。アクセンチュアでは、自分で考えながら相談すれば誰かが助けてくれるので、その環境を生かして仕事しようと心がけています。

「クライアントとのコミュニケーションこそがこの仕事の醍醐味」と語る、中村のコンサルタント像は実に明確だ。

――最後に、ご自身のキャリアのビジョンを教えてください。

私はもともと、BtoBのクライアントがメインだったのですが、最近はBtoCや、サブスクリプションサービスのような案件も担当するようになりました。これからも「カスタマー&セールス」がカバーする領域のスキルや知見を伸ばしていきたいです。

一方で、アクセンチュアでは今年(2020年)3月に大きな組織変更をしました。従来は業界軸で部署が分かれていましたが、今はクライアントの業界の垣根を超えて連携してサービスを提供しようという考え方を反映した組織構造に変化しています。そういう意味では、自分の知見をより幅広く提供して他のチームにも貢献したいですね。そして、最終的には日本の産業に貢献したいです。