企業のいま

コンサルティングとBPOが密結合した「インテリジェント・オペレーション」。その鍵は“テクノロジー”と“やりきる力”

「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」は、企業活動における業務プロセスの一部を専門業者に外部委託することを指すが、アクセンチュアの考え方はそれとは異なる。BPOはあくまで「BPRやDXを実現する手段」なのだという。同社においてBPOを担う、オペレーションズ コンサルティング部門の仕事から、その意味することを紐解いていく。

コアとなる業務以外を外部に委託し、自社のリソースを戦略的に活用しようというBPOが、日本で本格化したのは1990年代のことだ。そのBPOで、アクセンチュアはグローバルにおいても、日本においてもトップのシェアを誇る。その最前線では従来のBPOの概念を打ち破り、AIやRPAなどを駆使してクライアントのデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するなど、日々進化している。オペレーションズ コンサルティング本部所属のコンサルタント、池永高志と梅原里美の両名に、この仕事の醍醐味を聞いた。

BPOはあくまで手段のひとつ

――アクセンチュアがBPOを手掛けるクライアントは、どのような課題を抱えていますか?

池永高志(以下、池永):日本の歴史ある企業の多くは、ホールディングス体制下のシェアードサービス子会社がグループの総務業務や人事業務などを担っています。労働人口が減少する中、いかに人員を確保し、いかにDXを進めて効率的な仕事の仕方に変えていくのかといったことが、最近の課題です。

我々は、そういった企業に入り込んで運営をサポートさせていただいたり、一般的なBPOのイメージとは異なるかもしれませんが、場合によってはジョイントベンチャー化したりしながら、クライアントと一緒に走ることで業務改善をし、DX化していくということを推進しています。

池永高志
2003年アクセンチュア入社。製造・流通業系のコンサルティングやシステム導入を経験した後、アウトソーシング事業へ。業界を問わず、IT、経理、人事等多岐にわたるアウトソーシングプロジェクトに従事。現在、業務改革コンサルティングおよびオートメーション推進の専門チームを率いている。

――それは、アクセンチュアならではなのでしょうか?

池永:そうですね。一般的にアウトソーサーは委託された業務を確実に履行することに重きを置き、業務そのものを変えることには消極的です。変えたことによる責任が降りかかってきますから。しかし我々は、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)やDXを実現する手段のひとつとしてアウトソーシングを提案させていただいており、BPOプレイヤーとして張り合おうとはしていないんです。

例えば、ホールディングス側で戦略的に特化したことにリソースを集中できるように、それ以外の業務をどんどん引き剥がしてシェアドサービスセンターに集約する。一方でシェアドサービスセンターは、業務の標準化やデジタル化のスペシャリストとして業務範囲を拡げていく。そういった形でDXを実現していきましょう、というお話をさせていただくことが、最近は増えています。

梅原里美(以下、梅原):BPOに対して、「明確な結果責任を負わない」というイメージを持っていらっしゃる方も多いと思います。でも私たちは、どこまでやりきるのかということをサービス・レベル・アグリーメントという形で具体的な数字で握るんです。人であれば百何十人相当の余力を創出しますとか、作業時間で言えば3分の1になります、といったことを合意した上で3年から5年、長い場合は7年くらいかけて実行していきます。

――その際、おふたりは具体的にどのような役割を担うのですか。

池永:自動化やAIを活用して業務を高付加価値化していくことを、業界や業務に関わらず横断的に行うチームの運営をしています。私自身もフォーカスするクライアント企業様と一体になって改革を推進していきますが、それ以外にも他のメンバーが従事する案件のサポートをしたり、セールスフェーズでの効率化のプランニングに関わったりしているので、多くのクライアントを見ているという立場です。

梅原:私は以前、製造・流通業界のサプライチェーンマネジメントの分野で、マネジメントコンサルティングの仕事をしていました。昨年、オペレーションズ コンサルティング本部に異動してからもサプライチェーンや調達の領域で、コンサルティングを行ったり、BPRにつながるBPOを担う部門が中国の大連やフィリピンのマニラにありますので、クライアントの業務を理解した上でそちらのメンバーに移管していくこともしています。

池永同様、自分がメインで担当するところは、クライアント先に常駐もするなど、深く関わっていきます。

梅原里美
2007年アクセンチュア入社。メディア・ハイテク業界や製造・流通業界でのSAPの基本設計~インプリ、調達改革、営業改革、企業総合支援などのプロジェクトを経験、改革案の策定や定着化サポート・効果創出までを支援。現在は、某製造業で調達改革のコストReductionのDeliveryおよび、某大手Global素材メーカーJV推進の購買(調達)領域を担当している。

ブラックボックス化させず、クライアントが自走できる状態をつくる

――アクセンチュアが標榜する「インテリジェント・オペレーション」とは、どのようなものですか?

梅原:AIやRPAといった、ITツールを用いて業務を自動化したり、高付加価値化したりすることを指して「インテリジェント」と言っているのですが、それを実現するには我々のようなコンサルタントが現場に入り、現状をしっかり把握した上で業務をマシンに置き換えていくということが必要です。

我々のクライアントは、標準化が容易な部分はすでにBPOや自動化が終わり、残っているのは「ここは外には出せないかも......」というようなこだわりが強い部分だけであったり、何年かプロジェクトをご一緒した上で、さらに二巡目のBPRをしようというフェーズであったりします。つまり、非常に難易度の高い部分に踏み込んでいかなければいけません。その際に「人間」と「マシン」の業務を融合させながら、これまでのBPOよりも高度なことを実現していくのがインテリジェント・オペレーションだと考えています。

超自動化とインテリジェント化が組み合わさることで実現する「インテリジェント・オペレーション」。あらゆる業務ステップにデジタル技術が組み込まれ、担当者(つまり人間)の主な役割は、そのデータを活用した計画策定や分析・評価へと変化する。

――「人間とマシンを融合させる」ということですが、融合した先にはどのようなことができるようになるのでしょう?

池永:実は、AIを使った業務オペレーションは、やっと形になり始めたところなんですよ。例えば、紙に書かれた内容をAIエンジンが読んで文字情報をデータ化するという「AI-OCR」という技術があります。これがあればパンチ入力の業務は一切必要なくなると思われるかもしれませんが、まだ読み取り精度は100%ではありません。「文脈的に、これはこの字だ」とか「人の名前でこの漢字は使わない」とか、人間が見れば分かることも、AI-OCRが判断できるようになるのはまだ先です。ですから、そういった間違いがあるということをAIにフィードバックする必要があります。現状ではAIで出した結果を人が補正、あるいは補正するロボットを設計しています。

一方、マシンは飛躍的に進歩し続けます。我々が常に最適な「人間+マシンの協業」のプロセスを具現化し、それをクライアントに提供するのです。

――AIを教育しながら使うということも含めて、新しい業務のあり方を提供するわけですね。

池永:BPRの契約が終わったら、オペレーション業務をクライアントにお返しするのも一つのオプションだと考えています。その場合、AIなどのテクノロジーを使って業務をブラックボックス化してしまうと意味がありません。テクノロジーを使いこなす方法も共有し、数年後にはクライアント自身がDXのチームとして自走していけるよう、"人"も変えていくことができるのが、アクセンチュアならではの価値ではないかと思います。

梅原:アクセンチュアのアプローチの良いところは、人間からマシンに業務を移すときのプロセスをすべて開示し、過去の経緯も追えるような形でお渡しできるところだと思います。「現状はここまでやっています」ということを隠し事なくお伝えし、もっとアップデートできるのか、やるべきなのか、ということもクライアントと共に考えて改善をしていくというスタンスなんです。

――「業務の高付加価値化」というキーワードもよく出てきますが、具体的にはどのようなことでしょうか?

池永:例えば経費清算処理の際に、「これは本当に正しい経費の使い方?」といったチェックをして不正利用の可能性を示唆することができます。AIが蓄積された過去のデータを分析し、これまでの傾向と比較して、例外的な申請にフラグを立てるようにします。そうすると、オペレーターの負荷を高めることなく、伝票処理業務にプラスアルファの価値が付けられるわけです。

ロジカルシンキングだけでは通じない、必要なのは粘り強く語りかけること

――クライアント企業の"人"を変えていくというお話もありましたが、その点で苦労されることも多いのでは?

梅原:そうですね。ことBPOに関しては、クライアントの経営層と話を握るのはそれほど大変なことではないんです。アクセンチュアとしてBPOの成果に事前にコミットすればいい話ですから。ただ、現場に入っていって、今やっている業務を引き剥がすとか、変えるというのは、とても大変です。

最初は首切りのために来たかのように思われて、常駐先の席に居づらいことがあるくらいで(笑)。ですが、親会社は子会社の社員の首を切りたいわけではなく、もっと付加価値の高い仕事をしてほしいというケースが多いわけです。そういうことをきちんとお伝えし、今の業務をそのままやり続けるよりも、より高度化された仕事や需要のある仕事をできるようにした方が5年後、10年後に未来がある、それくらい世の中は変わっていくんだ、ということを理解してもらえるまで粘り強くお話していく必要があります。

大変なことではありますが、その結果心を開いてもらい、みんなが同じ方向を向くことができたときのパワーはものすごいものがあって、非常にやりがいがあります。

「オペレーションズ コンサルティング部門の仕事に向いている人は?」という問いに、「みんなが喜んでいる状況を喜べる人」という答えが返ってきた。長いスパンでクライアントの課題に向き合い、諦めずに実現させようとする仲間の存在にも触発されるそうだ。

池永:そこで必要なのは、ロジカルシンキングじゃないんですよね。

梅原:そう思います。人間の心情の問題ですから。

池永:経営者と目的やゴールを握り合ったり、プロジェクトを進める段取りを考えたりするのにロジカルシンキングは必要ですが、それだけだと現場はついてきません。現場で一体になって同じ方向を向くとか、人の心を変えるということができるかどうかは、コンサルタントの人間力にかかっています。その点がアクセンチュアの中でも特殊なところかと思います。

梅原:コンサルタントって、キレイな図式やプロセスを描けることが武器になったりしますが、私たちはプランを描くだけでは終わらないんです。5年や7年の契約をして、最初に言ったことを実現できなければ自分たちに責任がのしかかってくるので、忍耐強くやり切る力が求められます。

――実際、現場の方たちはどのように変化するのでしょうか?

梅原:業務を大連チームに移管し、そこからさらに5年くらい経つと大連のオフィスでも人はいなくてパソコンだけが自動で動いている、という状態になっていたりします。

そのようなBPOを進めながら、もともとその業務をやっていた人に対してはリスキルのためのトレーニングを実施し、現在ではより高付加価値の業務に移ってイキイキと働かれているという例があります。

池永:アクセンチュアのメンバーが入ってRPAやAIなどの導入をしたことで、クライアントの方から次の改善テーマを出してくれるようになることもありますよ。クライアント側で実際に作業をしていた派遣社員の方々と一緒にワークショップを開いたことがありますが、我々が入る以前には出てこなかったような新しいアイデアがどんどん出てきた、ということがありました。

「業務を自動化しましょう」といきなり言っても、どういう業務が自動化できるのか、自動化された後の世界がどういうものか、見たことがなければ想像がつかないわけです。我々はその実例を見せ、「こういう業務って自動化できるんだ」「私がやっている判断はAIでもできそう」と実感してもらうと、次から次へと改善案が出てくるんです。

「オペレーションする」という役割だった人が「オペレーションの高度化に寄与できた」という成功体験を得られると、考え方も変わるしモチベーションも上がっていくのだと思います。

梅原:クライアントと寄り添いながら、アジャイルで改善していくというのが我々の特徴ですよね。個人的な経験上、長期間やっていると、途中で絶対にもめるんです(笑)。それでも、最後は「この業務を大連に持っていこう」とか「ここはもっと改善できるのでは?」といったことを一緒に話せるようになる。それがとても嬉しいことです。

チームメンバーだけでなくクライアントも全員巻き込んで行く。ひとつの成功体験をつくることで、モチベーションや考え方も変わり、業務の高度化の第一歩となる。

コンサルティングとBPOはいっそう密結合していく

――おふたりのお仕事の醍醐味がよく分かりました。オペレーションズ コンサルティング本部という組織の強みやユニークさついては、改めてどのように考えられていますか?

池永:同じ社内にテクノロジー部隊があるというのは、我々の強みのひとつです。本部の中にもエンジニアがいますし、札幌にあるアクセンチュア・イノベーションセンター北海道のメンバーや、大連のテクノロジーのデリバリーメンバーと一緒に仕事をすることも多いです。コンサルティング面、業務面、テクノロジー面の全部を社内の仲間と進めていけるというのは、とてもやりやすいですね。

梅原:我々がクライアントと約束する5年から7年後のビジョンというのは、正直に言うとその時点では「無理じゃないかな......」と思うようなものも多いんです。でも、そのくらいの時間があるとアクセンチュアの専門部門が予見する通りに世の中もテクノロジーも発達・浸透するし、アクセンチュアというグローバルネットワーク内の最先端の知見を持った人たちと助け合ってやっていくことで、自分だけではできないことも実現できるのだと思えます。

池永:ものを作っておしまいとか、プランを作っておしまいではなく、やりきるところまでが仕事だというのは、アクセンチュアの中ではよく言われることですが、それを最も実感できるのがオペレーションコンサルティング本部だと思います。成果を出すためには粘り強くやらないといけないし、逆に成果を出すための手段には自由度があります。発想の柔軟さと粘り強さがある人に向いている仕事です。

クライアントとの中長期の関わりの中で、当初思い描いていたとおりにいかないことも当然ある。そのときに改革を止めるのではなく、新しいテクノロジーにアップデートし続け、柔軟性をキープしていく、そうしたプロセスの試行錯誤が重要だ。

――最後に、オペレーション コンサルティング本部の中で、今後おふたりが目指していく方向性について教えてください。

梅原:グローバル全体で"One Accenture"になろうとしていることを、最近すごく肌で感じています。これまでは、アクセンチュアといっても「日本はこうだよね」とか「北米はこうだよね」と言った感じで、国や地域ごとに戦っていたようなところがあると思っていたのですが、グローバルで一緒にやっていこうという気運があるし、そこに課題があるならそれはなんなのかということが問われていると思うので、そこを活かしてクライアントにより高い価値提供をしていきたいと思います。

池永:そのとおりですね。我々の本部がスタートした当初は、BPOはあくまでコスト削減を目的とした取り組みとしてクライアントに提供していた時代です。それがだんだんとDXの手段としてのBPOという考え方に変わってきて、我々もアウトソーサーとしてだけではなく、時によってストラテジーコンサルタントやテクノロジーコンサルタント、場合によってはチャットボットの専門家としての立場を求められる場面も出てきます。さまざまなコンサルティングスキルとBPOが掛け合わさって密結合し、今後、ますますダイナミックな変革を実現していくのが楽しみです。