変化するビジネスネットワークの形

【緊急レポート】データで実証。新型コロナの影響で、ビジネスの「出会い」はどのくらい減ったのか

直接対面できなくても、オンラインでビジネスの出会いはつくれる。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が提言した「新しい生活様式」でも、その実践例としてオンラインでの会議や名刺交換が挙げられた。これからのビジネスネットワーク形成について、改めて考える緊急特集。

Sansan株式会社のデータ統括部門、DSOC(Data Strategy & Operation Center)の分析で、新型コロナウイルスの影響により、Eightユーザーの名刺取り込み枚数が大きく変動していることが明らかになった。

Eightで見られるこの変動は、コロナ禍のビジネスにおいて、対面で会う機会が減っているということを意味している(ここでは便宜上、直接会うことを「対面」とする)。しかし、対面で会えないからといって、出会いをあきらめる必要はない。Zoom、Google Hangoutsなどの会議ツールや、Eightの名刺交換機能など、さまざまなコミュニケーションツールが存在するいま、それらをうまく活用すれば、出会いを見つけ、広げていくことは、対面でなくても可能だ。

実際、5月4日に新型コロナウィルス感染症対策専門家会議が提言した、感染拡大を防ぐための「新しい生活様式」でも、働き方の新しいスタイルの実践例として、オンラインでの会議や名刺交換が挙げられている。

そこで今回BNL編集部では、改めて「ビジネスネットワークの価値」と、変化する状況下におけるネットワーク形成について特集をはじめることにした。ひとりでも多くのビジネスパーソンが、直接会うことができない状況でも「出会い」をあきらめず、新たなビジネスへとつなげていけるように。

これから数週間にわたり、社会ネットワーク理論の基礎を学びながら、オンラインファーストの世界で出会いをつくり、継続させるために必要なことを紐解いていく。

初回はまず、DSOCの分析レポートから、実際にいまビジネス上で対面の出会いがどのくらい減っているのかを見ていきたい。今回の分析では、新型コロナウイルス関連ニュースの影響や、業種別・都道府県別の名刺取り込み枚数の推移データを活用した。

前年比45%まで落ち込む

まず、2020年1月から現在までにどんな出来事があったかを想起しやすくするため、以下に、新型コロナウイルス関連の出来事をまとめた。グラフ中、カラーの縦ラインと合わせて見ていきたい。

2020年1月1日〜4月25日までの実際の名刺取り込み枚数と、昨年と同じ経済状況が続いた場合の同時期の名刺取り込み枚数をシミュレートした値との比較データを活用した。便宜上、その比較を「前年比」と表記する。

最新データである、4月19日〜25日週の名刺取り込み枚数は、前年比44.71%まで落ち込んだ。政府が人々の間の接触を8割減らすことを求める中で、ビジネスにおいては「出会い」が5割以上減少したことになる。

1月16日に日本国内初の新型コロナウイルスの感染者が発表されたが、そこから1ヶ月後の2月中旬までの名刺取り込み枚数は、例年と比べて約3%の減少にとどまっている。

変化が起きるのはここからだ。主に二つの大きな波がある。グラフ中の濃いグレーで色づけしている部分で、一つ目が2月23日〜29日の週。この週は、2月26日に安倍首相により発令された「文化イベントやスポーツの自粛要請」を含んでおり、前年の79%に減少している。

二つ目の波は、3月29日〜4月4日の週。ここで急降下し、例年の69%ほどに落ち込んでいる。過去のデータを参照すると、例年この週は4月1日を中心に、入社式や入学式の影響で名刺取り込み枚数が増加するタイミングだが、今年はほとんど伸びなかった。この二つ目の急降下は、最新のデータである4月25日週まで続いている。

各社のプレスリリースによる影響か? 名刺取り込み枚数が変動

減少トレンドの兆候を掴むため、新型コロナウイルスにまつわるニュース(法人向け名刺管理サービスSansanで配信対象としているニュースから取得)との関連性も分析した。ニュースには、世界経済、感染、学校に関するトピックなどが含まれる。なかでもテレワークに関するトピックの中の「当社」という語の比率が、先に示した名刺取り込み枚数が急降下した2月23日〜29日の週、3月29日〜4月4日にピークに達していた。

テレワーク関連で「当社」という言葉が見られるニュースは、企業の新型コロナウイルスへの対応に関するプレスリリースである可能性が高い。各企業が、新型コロナウイルスの対策に関する公式的な見解を発表したと同時に、従業員が訪問を伴う営業活動を停止させたため、名刺交換の機会も減ったと予想される。

業種は保険業が32%、地域では山形が35%まで減少

続いて業種別の影響について。Eightに取り込まれた名刺を業種別に見ていくと、4月19日〜25日週の集計値は、保険業が前年比32.09%まで低下。その他、投資業32.26%、郵便業・電気通信業32.6%、広告業33.03%と減少している。

一方で、減少してはいるものの、比較的変化が小さい業種もある。職別工事業や総合工事業などの建設業、小売業などの一般の消費者との接点が多い業種だ。例えば職別工事業は68.65%、総合工事業業では63.51%。大手ゼネコンでは事業所閉鎖の発表もあったが、現時点で名刺取り込み枚数の減少幅は大きくない。こうした業種は、目的の場所に行かなければならない仕事で、テレワークがしづらい状況であることが予想される。

さらに、都道府県別でも見てみよう。取り込まれた名刺の枚数が大幅に減少している県は、山形県で前年比34.56%、東京都 36.54%、沖縄県 39.01%、富山県42.53%まで減少。

山形、富山は新幹線で東京とつながっているため、東京での行動変容の影響を受けており、また沖縄は、企業研修の中止や、ゴールデンウィークのイベントの中止により、沖縄へ出向くビジネス パーソンが減っていることなどが要因と考えられる。

対面できなくても、出会いはあきらめなくて良い

コロナ禍のビジネスにおいて、出会いが減少していることは明らかだ。しかし、冒頭でも述べたように、Eightは「出会いをあきらめる必要はない」ことを主張する。むしろ「会いに行く・来られる」ための準備に時間や手間をかけずに済むという点では、これまで会ってみたかったけれどアポを取ることができなかった相手や、仕事の相談をしてみたかった相手とコンタクトを取れるチャンスとも捉えられる。

例えばEightで会いたい人を探して、名刺交換リクエストを送ってみる。それが新しいビジネスが始まるきっかけになるかもしれない。この先、オンラインで初めて会う人や、まだ対面では会ったことがない人と名刺交換をするのも良い。お互いに新しい発見があるかもしれない。名刺には、氏名、部署、役職、企業ロゴなど、確かな情報が記載されている。また名刺を差し出すという行為は企業を背負っていることを暗に示すものでもあるため、信頼につながりやすい。だからこそオンライン名刺交換は、対面で会えない状況下における、ネットワーク形成の新たな方法のひとつと言える。

これから数週間にわたり、社会ネットワーク研究の世界をのぞきながら、いま行うべきネットワーキング戦略について考える。当然そこでは、「対面すること」の意味も見直すことになるだろう。この特集を通して読者の方々が「出会い」についての議論に興味を持ち、また「出会い」の価値を再認識してくれることを期待したい。