横石崇の「自己紹介2.1」

リモートワークは突然に ━━連載:横石崇の「自己紹介2.1」Vol.4

面白いアイデアは、誰かとの他愛のない話や脱線した雑談から生まれることが多い。リモートワークの環境でもその「偶然」は起こせるのか。 横石崇の連載、第四回。

新型コロナウイルスの影響もあって、世の中が突然とリモートワーク体制になったわけだが、結果として僕は、仕事がごんごん進むようになった。打ち合わせは効率化され、溜まりに溜まった原稿や、いつもなら間に合わない経費精算、デスクトップのフォルダ整理までやれてしまう始末だ。

でも、リモートワーク推奨の流れは、僕にとって死活問題でもある。よいアイデアが生まれる瞬間というのは、いつも誰かとの他愛のない雑談や脱線がきっかけになるものだが、いまのリモートワークではなかなかそれが得難い。作業は進んでも、新しい出会いからセレンディピティが舞い降りてこなければ、絶対いいものなんて生み出せない。

例えば、宇多田ヒカルがデビュー曲で中腰になって歌ったのは、"たまたま"安価で借りれたスタジオが狭かったからだそうだ。Twitterというサービスは、エンジニアたちが社内用の遊びで使っていたショートメッセージのツールから"たまたま"派生を遂げたものだ。ニュートンは落ちるリンゴをみて世界の真理に気付いたのは、"たまたま"学校が休みになってフラフラしていたからだ。

そう、偶然の出来事から新しい発見をする力「パワー・オブ・セレンディピティ」こそが、人類を一歩前に進めてきたといっても過言ではない。

このままではまずいと思い立ち、ある人にオススメされて始めてみたのが、ソーシャルラジオアプリだ。これがまたセレンディピティがすごい。DJとリスナーそれぞれがリアルタイムに音声とチャットでやりとりできる音声ライブ配信プラットフォームなのだが、もうこのネクスト・ラジオ・ワールドでは思いがけない出会いしか起きない。

チャンネルをいくつか紹介しておこう。深夜になかなか寝付けないときに聞くための「寝落ちチャンネル」とか、人前で一度も披露したことがないミュージシャンによる「弾き語りチャンネル」とか、ただただ一人で延々と自己紹介しているだけの「自己紹介チャンネル」とか。誰がこんなものを聞くんだと思うような雑談コミュニティにも、しっかりとリスナーたちがたむろっている。ここに来れば24時間365日いつだって「パワー・オブ・セレンディピティ」を味わうことができる。セレンディピティのセブンイレブンである。

だから、僕はここで2020年代の自己紹介力を鍛えている。ソーシャルメディア時代の自己紹介は、いままでのやり方ではうまくいかない。インターネットに常時接続された世界では、むしろ自己紹介が邪魔になることもある。自己紹介のような儀式性があり、緊張感が生まれるものよりも、もっと日常的でゆるくてぬるい、シームレスなコミュニケーションが好まれる。だからこそ、自己紹介もわざわざ持ち時間をつくるのではなく、雑談の端々で自分の物語をサッと差し込んで、少しずつ自分の輪郭をつくりあげていくような進め方が必要になる。

これから時代、どう働き、どんな出会い方をして、どんな自己紹介をしていけばよいのか。そう悩んでいるのは、決してあなた一人ではないはずだ。孤独化は僕らの敵だから、ぜひ、みなさんのオンライン・セレンディピティにまつわる悩みや鍛え方についても聞かせて欲しい。リモートワーク時代のセレンディピティを探す旅はまだ始まったばかりだ。

では、最後となりましたが、ここでセレンディピティを代表する一曲を聞いてください。 小田和正さんで「ラブ・ストーリーは突然に。」

今日も、あなたの自己紹介にトキメキがありますように!ヴィヴィデヴァヴィディヴゥ!