横石崇の「自己紹介2.1」

若者の「肩書き離れ」、中高年の「肩書き頼み」━━横石崇の「自己紹介2.1」Vol.1

アジア最大級の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」のオーガナイザーで、注目の本「自己紹介2.0」の著者でもある横石崇の新連載がスタート。本書では語りきれなかった「出会い」と「自己紹介」のこぼれ話から、自分らしく自由に生きるヒントを見つけよう。

「肩書き離れ」の時代がやってきた

いわゆる高度経済成長期以降、個人の「信用」は会社名や役職という「肩書き」で成り立っていました。サラリーマンの多くは、「肩書き」という称号をつかむために、いい大学に入って、いい会社に入社し、出世レースで必死に闘う。いい会社で高い給料をもらえば、社会から「信用」されて有利にローンも組め、立派な自邸を所有できる。それが、一族の誉れにもなった時代です。

しかし、いまや日本が誇った家族型経営の柱である「終身雇用制度」は終わりを告げられました。社会を支えていた「会社」という基盤は劣化が著しく(詳しくはこの連載で述べていきますが)、もはや会社名や役職などを追い求めない「肩書き離れ」した若者たちが新しい社会を築こうとしています。

そんな新世代が台頭する一方で、肩書きで苦しむ中高年が多くいます。つい先日も、とあるイベントで酸っぱい体験をしました。

「こんにちは。私は元◯◯(誰もが知る大手通信会社)の部長をやっていました山田と申します」と言って50代に見える男性は名刺を差し出します。その名刺をよく見てみると、本物そっくりの名刺ではあるのですが、肩書きの部分が「元部長」という役職がついたパロディ名刺でした。

「な、なな、なんですか! これは!?」 

初めてこんなパロディ名刺を見たので、尋ねてみました。当然ながらオフィシャルではないようです。55歳で役職定年をされたそうで、いま次なる道を探しているとのことでした。周囲にも似たようなパロディ名刺を持たれている方は結構いるようです。

長く勤めていた会社を辞め、いままでの立派な肩書を捨てて、新たに自分の未来を切り拓こうとする姿勢に共感しつつも、どうしても「元◯◯名刺」には哀愁が漂い、酸っぱさすら感じます。他人から「元◯◯」と呼ばれるのならまだしも、自分で「元◯◯」と語りきってしまうことに背徳感さえ感じてしまいました。

過去は信用を築き、未来は信頼を築く

もちろん、決して過去の実績や栄光を否定するわけではありません。過去は、「信用」を築いていく上では重要な評価軸です。しかし、自分を説明するときに「過去」だけに囚われてしてまっている人に、成長はあるのでしょうか。出会った相手は、その人と信頼関係をどう築いていけばいいのでしょうか。

「肩書き」を背負っていた「信用」の時代から、「未来」を背負っていく「信頼」の時代の幕が開こうとしています。過去に生きるのではなく、いまを生き、未来を語るにはどうすればいいのか。

次回から、新しい時代に世代を問わずもっとも必要とされる無形資産の「信頼」づくりにフォーカスをあてていきます。

いまから約120年前に菌類学者・民俗学者の南方熊楠氏が残した金言です。

この連載は、熊楠が語ったように、肩書きがなくても「自分が何者なのか」を知ることで、新時代で自分らしく自由に生きていくための指南の書を目指します。

今日もあなたの自己紹介にトキメキがありますように☆ 

ヴィヴィデヴァヴィディヴゥ!