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肩書きに頼るのはもうやめよう。相手の心を掴むのは、過去ではなく未来から語る『自己紹介2.0』

はじめて出会った相手の心を掴めるか否かは「どう自分を語れるか」にかかっている。組織の時代から個の時代へと変化しているいま、肩書きではなく、自分の存在理由や描いている未来を語ることが、人生を切り拓く出発点になるという。

誰にでも、語れる未来がある━━BNL編集部の選定理由

たとえ組織に属していても、一人ひとりが信念や目的意識を持つことが求められる時代。人と人との関わり合いも、いままで以上に重要になるだろう。

だからこそ時代の流れに合わせて自己紹介をアップデートする必要がある、というのが、著者の横石崇の考え方だ。肩書きではなく、存在理由や未来を語る。そうして相手に期待感を抱かせ、信頼してもらう。これからの時代を生き抜くための、 新しい自己紹介だ。

しかしここで疑問が浮かぶ。相手に期待をしてもらえるような未来を、誰もが語れるのか、と。

2019年3月に開催されたカンファレンス「Sansan Innovation Project 2019」で、横石が登壇したセッション「自己紹介のイノベーション」のイベントレポートに、以下のような内容がある。

そもそも人はなぜ自己紹介をするのか。古今東西さまざまな自己紹介の実例と文献に当たったという横石が出した結論は「自分が平凡だから」。非凡な人はわざわざ自分を紹介しなくてもすでに十分に知られている。だから自己紹介をする必要があるのは凡人だけ。だがここに一つのジレンマが生じる。平凡な自分を紹介したところで何にもならないという矛盾だ。

BNL「問われているのは役職ではなく存在理由。パーパスの時代における究極の自己紹介とは?」より抜粋

このジレンマを解消するのが「自己紹介2.0」だ。相手に期待してもらえるような未来は、自分の内側と向き合って「存在意義や目的は何か」を明確にすることができれば、どんな人でも語れるようになるという。

つまり「自己紹介2.0」は、すべてのビジネスパーソンが対象なのだ。そして本書には、「自分とは何者か」を探る方法が詰まっている。

自己紹介は、人生やキャリアをより豊かにするための自作のツールと言える。積極的に外に出て、知らない文化に触れ、初めて出会う人に自分の存在意義や目的を語ってみよう。その出会いから、思いもよらなかった新しい価値が生まれるかもしれない。

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要約者のレビュー

「自己紹介」のハウツー本かと思って手に取ると、良い意味で予想を裏切られるのが本書だ。いまの時代に必要とされる「自己紹介」とは何かを問い、自分の生き方について考えるよう、読者を駆り立てていくのだ。

会社組織が疲弊しているいま、もはや「1つの企業、1つの人生」という時代は終わった。社会の変化のスピードは年々速くなっており、企業や職業の寿命が人の寿命よりも短くなっている。働く個人一人ひとりが自分のキャリアを考えなければならない。こうした社会では、コミュニティや業種、分野などを「越境」することが、新しい価値を創造するカギとなる。越境において重要なのは、人と人をつなぐツール、「自己紹介」だというのが著者の考えだ。

著者は、自己紹介のあり方そのものを問い直し、時代に合わせたアップデートが必要だと呼びかける。バージョンアップした「自己紹介2.0」では、肩書きや経歴はさほど重要ではない。なぜなら肩書きや経歴は「過去」のものだからだ。それよりも、自分が提供できる価値である「未来」を語るほうが、相手からの信頼を得ることにつながる。

自分がどんな目的意識のもとに、社会への貢献をめざしているのか? 「自己紹介2.0」では、こうした点まで自問し、自己の内面を深く掘り下げていくことが重要となる。その際、本書のワークシートが大いに役立つだろう。自己紹介をアップデートし、より豊かなつながりを育てたい方にうってつけの一冊だ。


本書の要点

── 要点1 ──
時代は「組織」から「個」の時代へと変わりつつある。「人と人とのつながり」の価値が重視されるいま、「個」と「個」をつなぐツールである自己紹介もアップデートしなければならない。

── 要点2 ──
自己紹介は自分を覚えてもらう場ではない。相手との信頼関係を築く場である。信頼を得るためには「期待」のマネジメントが重要だ。

── 要点3 ──
「自己紹介2.0」では、肩書きや経歴など「過去」をベースにした一方的な自分語りはしない。かわりに、自分が提供できる価値を提示して相手との「未来」を語る、対話型の自己紹介をめざしていく。


要約

【必読ポイント!】 なぜいま「自己紹介」なのか?

Photo: "Shadow" by Koisny(CC BY-NC-ND 2.0)

組織の時代から個の時代へ

世の中は「組織の時代」から「個の時代」へと変わりつつある。「個の時代」とは、フリーランスになることや起業することを必ずしも薦めるものではない。会社組織に属していても、一人ひとりが信念や目的意識を持って仕事をしなければならない社会になるということだ。

戦後の高度経済成長期を支えた終身雇用や年功序列といったシステムは、制度疲労を起こし始めている。生涯で1つの仕事、1つの会社という時代は終わりつつある。一方、テクノロジーの発展により、ソーシャルメディアやクラウドファンディングなど、個人と個人をつなぐ基盤ができている。そして、個人単位で活躍する場が広まり、会社組織中心から個人中心へと、社会は大きく変化しているのだ。

しかし、個人中心の社会でも、人は組織やコミュニティなしでは生きていけない。複数のコミュニティを行き来しながら、個と個がつながっていく。そのつながりから新しい価値が創出されていくだろう。そこで、個と個をつなげるツールとして、「自己紹介」を見直す必要がある。

「役職から役割へ」

組織構造には、ピラミッド型とプロジェクト型の2種類がある。ピラミッド型は社長をはじめとするトップが君臨し、細かくヒエラルキーを形成する組織だ。旧来型の組織ともいえるだろう。一方、プロジェクト型は、管理する人間を最小限に抑え、必要に応じてスタッフを外部から呼び込んで編成する組織だ。プロジェクトが完了すると、チームも解散となる。プロジェクトに応じて、それぞれの道のプロフェッショナルを招集するのだ。

昨今では、プロジェクト型組織が注目されており、「役職」よりも「役割」が重視されるようになっている。社長や部長といった役職ではなく、自分に何ができるかという役割を意識し、チームで仕事をするようになるからだ。自己紹介もそれに合わせて、「役職」ではなく「役割」を軸にしなければならない。

また、世界の最先端企業では経営戦略の主軸は、「プロフィット(利益)」から「パーパス(目的)」へと変化している。「パーパス」は、顧客、従業員、外部パートナーやその家族など、その企業に関わるすべての人が共有できる唯一の価値を指す。金銭的な報酬だけでなく、「会社は何のために存在するのか」「なぜこの会社で働くのか」が重要となる。それゆえ、あらゆる企業が、社会全体に貢献する目的意識を持ち、発信しなければならない。

個人にとっても、「自らの目的」がこれまで以上に問われるようになる。自己紹介を考えることは、自分だけのパーパスを見つける一歩となるだろう。

人と人とのつながりをつくる自己紹介

Photo: "conversation" by Daniel(CC BY-NC-ND 2.0)

今後は人生100年時代を迎える。人生を「教育」「仕事」「老後」の3つの段階で考えた場合、必然的に「仕事」の期間が長くなる。会社や職種自体が先に寿命を迎えるケースも増えるだろう。すると、個々人が様々な職業を経験し、複数のキャリアを持つ可能性が高くなる。

こうしたマルチキャリアの時代では、人の職業や職種といった肩書きが1つに固定されることは減っていく。自己紹介においても、世界の変化に応じて自分自身を流動的に変化させ、いくつもの肩書きや職業を使い分けることが求められるだろう。

さらに、これからは「越境する力」が求められる。それぞれの専門領域が固着化している現在、新しい価値を創造するには2つ以上の領域に精通し、領域を横断しなければならない。

人生100年時代では、「人的資本」、つまり「人と人とのつながり」が中心になる。そこで最も必要になるのは「信頼」である。個人の能力や人としてのあり方によってつながるネットワークが財産となる。そのネットワークを広げるためには、自己紹介のアップデートが欠かせない。


自己紹介の目的は「覚えてもらうこと」ではない

最大の目的は「信頼」を得ること

自己紹介で重要なのは「覚えてもらうこと」ではない。最大の目的は「良好な信頼関係を築くこと」である。すなわち、初めて会う相手から「信頼」を得ることなのだ。「信頼」は、相手の今後に期待できるという、未来へ向かうベクトルである。

自己紹介で信頼を築くために重要なのは、「期待のマネジメント」である。「期待」とは、良い結果や状態を、前向きに待つ感情のことだ。初めて何かを試すときには必ず「期待」がある。よって、新しく会った人と関係を築くには、「期待」というポジティブな感情の創出が必要なのだ。

通常の自己紹介では、自分の「過去」に基づいて自分を「記憶」してもらうことに注力してしまう。しかし、必要なのは自分と相手の「未来」を見据えて、自分に「期待」してもらうことだ。そのうえで、相手の気持ちを適正な状態にコントロールしなければならない。

期待をマネジメントするための秘策

Photo: "jungle Jim" by SeRVe Photography(CC BY-NC-ND 2.0)

自己紹介をするとき、ただ役職や職業を伝えるだけでは、相手は興味をもたないだろう。ポイントは、相手に心地よいノイズ、すなわち興味をそそる違和感を与えることだ。

例えば、「キャリアコンサルタントをしています」というよりも、「ジャングルジム型のキャリアづくりを応援する仕事をしています」というほうが、話の広がりが生まれる。自分の価値を抽象化して別のものに見立てたり、たとえたりして意味付けをしてみよう。すると、相手の心に引っかかりをつくりやすくなる。こちらが一方的に話すよりも、相手が思わず質問したくなるように促し、対話型の自己紹介をめざすのが望ましい。

また、良い人間関係には「良い貸し借り」がある。人間関係とは恩の貸し借りで成り立つ面がある。自己紹介でも、ちょっとした貸し借りがあるほうが、関係を続けやすい。

例えば、SNSでつながる、自分の実績を見てもらう、企画のアドバイスをもらうなど、小さなことでいい。相手にしかできないことをお願いすると、信頼を少しずつ築けるだろう。


自己紹介の最強の型

Photo: "Jos Dielis" by Ball in green(CC BY-NC-ND 2.0)

過去ではなく未来から語る

自己紹介には最強の「型」がある。口下手でも、自分の個性を突き止めて「型」に当てはめていけば、オリジナルの自己紹介をつくることができる。

最強の型とは、「未来→過去→現在」の順に語ることだ。まずは、相手との「未来」の中で自分が「提供できる価値」を明らかにする。次に、いままでの実績や経験といった「過去」によって、提供できる価値の裏づけをする。そして結びでは、普段どんな貢献を自分がしているかという「現在」の内容で締めくくる。その先の展開へと続くような、相手との言葉のキャッチボールが生まれる表現を使うとよい。

もう1つのポイントは、名詞ではなく、動詞で語ることだ。一方的な自己紹介では、役職や肩書きなど、名詞が中心になりがちだ。これに対し、未来を語る自己紹介では、「何ができるか」という動詞が主役となる。「どんな未来をつくりたいのか」「それはなぜなのか」「めざす未来に向かうためには何をすればいいのか」。こうした問いについて考えを深めていく。そのうえで、自己紹介のなかで動詞を多く使うようにすれば、より相手の興味を引く自己紹介となるはずだ。


個の越境

個の越境がイノベーションを生む

今後は、一人ひとりが自分自身のキャリアパスを描き、生存戦略を立てることが必要になる。そこでキーワードとなるのが「個の越境」だ。

社会には多くの境界線が存在する。地位や階層、部門や部署、会社の内外、性別や人種、年齢や学歴、場所や文化などである。境界は分断された文化をつくり、世代間論争や縦割り構造、パワハラ、セクハラなどの社会問題を生み出してきた。

日本人は旧来、1つの狭い領域を深く突き詰めていくことを得意としてきた。その中で生み出された価値もたしかに存在する。しかし、現代では、他の領域と連携せずに自己完結すると孤立してしまう。新しい価値創造、イノベーションは、既存の知識や資源の新しい組み合わせ、人と人の結合から生まれる。よって、イノベーションの原点は、個人が越境し、組織に多様性をもたらすことだといえる。

何をやるかよりも誰とやるか

Photo: "Jump" by Hamad AL-Mohannna(CC BY-NC-ND 2.0)

考え方が似ている仲間同士で仕事をするのは心地よい。しかし、それは危機感を持つべき状況だ。多様性がない心地よい環境下では、新たな結合や新たな価値は生まれない。新たな価値は、異なった背景を持つ文化同士を越境するところから生まれるのだ。

越境は摩擦やストレスを伴う。しかし、それを恐れてはいけない。未知なる世界へ飛び込む勇気が必要だ。自己紹介はその勇気を支えてくれる。どんな環境であっても相手を信じて心を開き、未来を語る。相手の語る未来と交わるところに、必ず新しい機会や成果が生まれる。それは予定調和からは生まれることのないものだ。ワークショップに行ったり、異業種の人と話したり、新しい本や映画、食べ物に挑戦することも、小さな越境である。こうした経験を重ねることが「越境力」を上げてくれる。

また、「何を」やるのかよりも、「誰と」やるのかを意識することも重要だ。「誰と」「なぜ」やるかを主体にすることで、その人の独自性が生まれやすくなる。「何をやるか」よりも「誰とやるか」が問われる時代だからこそ、自己紹介で未来を語ることがますます重要となるのだ。


一読のすすめ

本書は、自己紹介のハウツー本とは一線を画している。現代社会における自己紹介とは何かを考え、丁寧に自己分析をすることで自分自身の価値や働く目的を突き詰めていくのが、本書ならではの魅力である。本書には自己分析のための書きこみ式のワークシートも収録されている。腰を据えて自分を見つめ直したい人は、ぜひこちらのワークに挑戦し、自己紹介のアップデートに役立てていただきたい。

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