ととのう職場、自然体のキャリア

バタ足をしない働き方──連載:ととのう職場、自然体のキャリア VOL.11

「短期間で成果を最大化できるか」より「長期間で成果を持続できるか」。水泳の練習から、人生100年時代に長く楽しく働くヒントを得た。羽渕彰博の連載、第十一回。

長くラクに泳ぐために、バタ足をしない

いままでジョギングをしていたのですが、暑いと汗でベトベトしますし、雨が降ってしまうとそもそも走ることができません。そこで屋内プールで泳ぐというアイデアを思いつきました。泳いだ後はサッパリするし、屋内であれば気候に左右されることもありません。これは我ながらいいアイデアです。

しかし一点、重要な問題がありました。私は泳げなかったのです。海が近くにある街に住んでおきながら泳げない。マリンスポーツも未だに手を出せずじまいです。patagoniaのショーツを履き、ジョギングで陽に焼けていて、見た目は陸(おか)サーファー感が醸し出されているのですが。

プールで泳げるようになれば、サッパリするし、気候に左右されないし、陸(おか)サーファーから脱却できて、一石三鳥ではないか。そこで水泳部だった友人に専属コーチをお願いし、室内温水プールに行きました。

プールに着くと、まず塩素の臭いがお出迎えしてくれて、体育の授業のイヤな思い出がフラッシュバックしました。シャワーが冷たくて不快だったし、蛇口で目を洗うのが怖かったのを思い出しました。既にプールに入る前からテンションはだだ下がりです。

それでも、水着に着替えて、シャワーも浴び、プールサイドに向かいます。

コーチから「まずは実力を知りたいので一度泳いでみてください」と指示されました。最初の壁キックでなるべく距離を稼ぎつつ泳ぎ始めます。必死にクロールでバタ足をするのですが、すぐに息苦しくなってきます。息継ぎをしようとすると体勢を崩し、さらに危機的な状態に。必死になって25mを泳いで水面から顔をあげると、コーチは苦笑いをしていました。

そこから「長くラクに泳ぐコツ」を伝授いただきました。そのうちの一つに、バタ足を極力せず手だけで泳けば息苦しさを減らせるというものがあります。バタ足をしないと進まないと思っていましたが、周りの方々を見渡しても、たしかにバタ足をせずにラクに泳いでいました。

「短期間で成果を最大化できるか」ではなく、「長期間で成果を持続できるか」

ここでふと、「長くラクに泳ぐこと」は、日々の仕事にも通ずるものがあるのではないかと気づきました。僕たちは学校教育や社会で「短期間で成果を最大化できるか」を求め続けられていたように思います。学校の成績も成果を最大化すること、水泳でいうなら速く泳げることだけに高い評価がついていました。だから子供のとき、息苦しくても我慢してバタ足をしていたように記憶しています。

後で図書館で水泳の本を借りようと思って児童書コーナーにいったのですが、著者がオリンピック選手が多く、タイトルも「もっともっと速くなれる」とか「目指せ!トップスイマー」という、短期間で成果を最大化することに重点を置いた本が並んでいました。

水泳は日本人がメダルが取れる花形種目のひとつで、メダルを取れる子どもたちを増やすために書かれた本だと思いますが、僕が子どもの頃にそれを読んでいたら、さらに水泳嫌いを助長していたかもしれないなとも思いました。

いま、多くの社会人が泳がなければならないのは、水泳100m自由形ではなく、人生100年時代という長い道のりです。「短期間で成果を最大化できるか」ではなく、「長期間で成果を持続できるか」が大切になってきているのではないでしょうか。

おかげさまで水泳はラクに500mを泳げるようになりました。仕事における「バタ足」は控えて、長くラクに働きつづけていきたいものです。