インタビュー

欲しい情報を欲しいときに。アドビが新たに提案する、顧客に最適なパーソナライズとは?

一人一人に「私のためだけにある特別な体験」を届けるために。クリエイティブだけでなく、デジタルマーケティングをも牽引するアドビはいま、ユーザーにとってベストなタイミングでより深いインサイトを刺激する、新たな顧客体験の世界を目指している。

パーソナライズがもたらす顧客体験とは

「単にKPIを見るだけなら、私たちの製品群は必要ないんです。その次の段階へ移ろうと思ったとき、私たちのデジタルマーケティングに関する思想と技術が、力強くサポートできるはずです」

アドビシステムズのシニアソーリュションコンサルタント、安西敬介はそう語る。

クリエイターを支援してきたアドビが、デジタルマーケティングの世界に大きく踏み出したのは2009年。ウェブ解析でトップを走っていたテクノロジー企業、オムニチュアを買収したことに始まる。安西は当時、オムニチュアでコンサルタントとして働いていた。

「その前は航空会社のウェブ担当をしていたんですが、その会社で採用していたオムニチュアの製品が好きすぎて、転職したんです」

翌年の買収でそのままアドビへ。

「オムニチュアが提供していたツールが、いまのAdobe Analytics(アクセス解析ツール)やAdobe Target(パーソナライズツール)の前身になっています」

安西は「アドビによる買収は意外だった」と当時の心境を明かすが、10年後のいま、アドビは、クリエイティブだけでなく、デジタルマーケティングをも牽引する存在となっている。Adobe AnalyticsやAdobe Targetを含む8つの製品からなる「Adobe Experience Cloud」で、企業のマーケティング担当者のための統合的なソリューションを提供する。目指すのは、冒頭の安西の言葉にある「その次の段階」だ。

アクセス解析をしてKPIの数値を見ることまでは多くの企業がすでに実施しているだろう。安西は、大事なことはその先にあると言う。

では、「その次の段階」とはどんなものか。安西はこう説明する。

「データを収集・分析するだけでなく、活用するということです。それも、直接的に。例えばEコマースサイトであれば、『Aさんがメンズのシューズを見た』という情報を使って、Aさんが見ているトップページに表示される内容をリアルタイムに変えていく。あるいはデジタルサイネージであれば、画像認識によって見ている人の年齢や性別を判別し、その人に見てほしいサイネージを表示する」

安西が挙げた2つの例は、ともに「パーソナライズ」に深くかかわっている。

顧客データの分析からインサイトを得て、それをマーケティング施策に反映することは、すでに多くの企業が取り組んでいる。ただしその場合の顧客はある程度の「かたまり」だ。いまデジタルマーケティングの世界で起きているのは、そこからさらに進んで、「一人一人」についてのインサイトを深めること。そして、働きかけまでのタイムラグを減らすことだ。

安西はこんな問いを投げる。

「例えば、あなたがあるEコマースサイトのユーザーで、メールで新商品のお知らせがきたとします。それを見てウェブサイトに行ってみたら、全然違うプロモーションが表示されていたとしたら、どうですか?」

数クリックすればたどりつける場所に同じ情報が置いてあったとしても、「誘われたから行ったのに」と、軽い失望感を抱く人が多いのではないだろうか。一貫したメッセージが一発で届くほうが、体験としての"特別感"は増す。

「いま私たちは、あらゆる行動をオンラインですることが当たり前になっています。デジタルの履歴をかき集めれば、それは『もう一人の自分』と言っていいぐらい、その人を反映したものになっているでしょう。そういう環境のなかで多くの人たちは、デジタルのコミュニケーションにも一貫性を求めるようになっています。顧客は暗黙のうちに、『私』に向けたメッセージを期待しているのです」

自分のためだけに送られる一貫したメッセージから"特別感"のある体験が生まれる、と安西は語る。

こんなことも考えられる。そのECサイトがポイントを確認できるアプリを提供していて、ある人がスマートスピーカーに「いま何ポイントたまってる?」と聞いたとする。ポイント数がわかれば質問の答えとしては十分だ。しかし安西はその先に顧客体験が演出できると言う。

「その質問をした人は、潜在的に『ポイントを使って何か買おうかな』と考えているわけです。そうであれば、例えば、会員情報に登録されているメールアドレスやLINEアカウントにクーポンをお送りしたら、喜ばれるかもしれない。さらに、その人が実店舗へ足を運んだときに、アプリの位置情報を使って、リアルタイムで情報を届けることも考えられます。お客さまから見て『いいタイミングで欲しい情報が届く』ことが、『自分にとって特別な体験を提供された』という実感につながるのです」

デジタルマーケティングの最適解を

そのような一連の顧客体験(Customer Experience)を管理(Management)していこうというのがCXMの考え方だが、一方で疑問もわく。そもそもその人にとっての「いい」「欲しい」をどのように判断するのだろうか。価値観の異なる一人一人に対してどのように情報を出し分けるのか。安西は「いい質問ですね」と前置きして、こう答える。

「結果として、継続的にコミュニケーションをしてくれている人はよい体験をしたのだろうと判断する、ということだと思うんです。規模拡大とパーソナライズは一見、相反するようにも思えます。個別にコンテンツをつくるとしたら膨大な数になるのではないだろうか、と。でも、決してそんなことはないわけですね。お客さまの気持ちに寄り添うことはもちろん大切ですが、同時に、企業側から見れば一つのパラメーターでしかないという合理性もまた、マーケティング施策を行う上では大事なことです。そのバランスのなかで、常に最適解を探り続けていくということだと思います」

より精度の高いCXMを目指すAdobe Experience Cloudの説明動画。

生活の広範囲なデジタル化が顧客一人一人の行動にどのような変化をもたらすのか。変化は常に現在進行形だが、安西はこう言う。「デジタルの利点の一つは、テストができるということです」。

「『デジタルコミュニケーションはこうあるべき』という静的な議論ももちろん大事ですが、テストしてわかることってたくさんあるんです。デジタルで管理されているものはテストが容易ですから、試してみればいい。先ほどの例で言えば、メンズのシューズを見ていた人に、別のメンズシューズをレコメンドするとします。でもAさんは女性で、たまたまそのシューズが気になっただけで、それ以上のレコメンドは必要ないかもしれない。それだったらAさんの別の行動に合わせてレコメンドが変わっていけばいいんです」

Adobe Experience Cloudは、その精度とスピードの向上を、分厚い製品群と、マーケティングに特化したAIと、コンテンツ制作との連携によって可能にしている。なかには顧客管理をクラウドサービスに依存することに抵抗のあるマーケターもいるかもしれないが、他社との協働の流れは避けられないだろう。安西は「前提として、デジタルタッチポイントの拡大で顧客の行動を把握することが難しくなっていることがあります」と言う。

「PCやスマートフォンはもとより、スマートスピーカーやスマートウォッチ、デジタルサイネージなどハードウェアの多様化が進んでいます。メディアの細分化とあいまって、デジタルタッチポイントはますます増えている。それらを全て自社で管理できるかというと、もうそういう状況ではなくなっていると思うんですね。そこを私たちと一緒にやっていきましょう、と」

これまでに航空会社、小売り大手、自動車メーカー、金融会社、不動産会社、メディア、教育機関などがAdobe Experience Cloudを導入している。導入の仕方や規模は企業によってさまざまだ。

2019年10月、こうした導入企業をゲストに招いたAdobe Experience Cloudのセミナーが開催される。なぜ顧客体験やパーソナライズが重要だと感じたのか、実際の導入にあたって社内でどのような取り組みが行われたかを具体的に聞き、「Adobe Experience Cloudでできること」をデモを用いて紹介する。

アドビが実現するデジタルマーケティングの世界は、来場者のビジネスにとってもインスピレーションの源になるに違いない。

セミナーの情報は、詳細が決まり次第、BNLでお知らせする予定だ。