ととのう職場、自然体のキャリア

身近にいる人でも、まだ知らないことはある──連載:ととのう職場、自然体のキャリア VOL.10

いつも一緒に働いている人と、あえて仕事以外の話をしてみよう。知らなかった一面が見えて、いまよりもっと良い関係が築けるかもしれない。羽渕彰博の連載、第十回。

10年間寄り添っている妻と、1on1ミーティングをして初めて気づいたこと

妻がディズニーランドが好きだということは知っていました。ディズニーランドに行っても、ミッキーと触れ合うことは至難です。2018年は32,588,000人が年間で来場していて、単純計算で89,282人が毎日パークを訪れています。ミッキーと全員が1分触れ合うとなると、89,282分かかります。時間でいうと1488時間、日数でいうとミッキーが不眠不休で対応して62日かかります。いかに難しいかがおわかりいただけたと思いますが、妻といくと確実に会うことができるのです。

しかもミッキーとは、ディズニーランドの外で会っています。ディズニーランドの外にあるディズニーアンバサダーホテルの中にシェフ・ミッキーというレストランがあり、そこに行けばあのミッキー様がわざわざテーブルまでご挨拶に来てくれます。ミッキーはディズニーランドのホストで忙しいから会えないと思っていたのですが、「外にいたのか!」というツッコミを思わずしてしまいました。

このレストランでミッキーに会えることは、ディズニー通にとっては周知の事実で、予約は競争です。一般枠の予約開始は利用する日の1ヶ月前の朝10時から始まるのですが、妻も、行く1ヶ月前の9時55分くらいからスマホを握りしめて待機して予約を入れているみたいです。「テーマパークの列に並ぶのが90分待ちとかありえない」と思っていましたが、隣にいる妻は1ヶ月前から並んでいました。

と、このような話が他にもいろいろあるのですが、そろそろ本題に入りましょう。

妻がディズニーランドが好きなことは知っていたのですが、今日は、その好きな理由を1on1ミーティングを通じて、10年一緒にいて初めて知ったという話をします。

「感情」を手掛かりに、相手の背景や価値観を知る

まずみなさんは1on1ミーティングをご存知でしょうか? 1on1ミーティングとは、定期的に上司と部下が行う1対1の面談のことですが、上手に機能すると組織の関係性が良くなっていきます。家族の関係性も良くしたい私は、クライアント向けに提供している1on1ミーティングのフレームワークを家族にも取り入れています。

1on1ミーティングをするポイントは、話し手の「感情」を手掛かりにしながら、話し手の価値観を知ることです。聞き手が上司である場合、どうしても「部下にもっと仕事をさせたい」とか「仕事の進捗を確認したい」など、部下の感情よりも、上司が聞きたいことを聞いてしまいがちです。その結果、1on1ミーティングをすることで、逆に心理的安全性が低くなってしまいます。

聞き手の意図が入らないように、当社ではフレームワークを用いています。感情をポジティブ4種類とネガティブ4種類の合計8種類に分けて、さらに感情強度(どのくらいその感情が芽生えたのか)を5段階に分けて、毎月1on1ミーティングを実施しています。

妻の事例でいうと、ディズニーランドに行く予定であることが、その月でもっと強いポジティブな感情でした。ディズニーランドに行って楽しかった(ポジティブな感情が芽生えた)なら理解できるのですが、行く前から楽しみにしているのは興味深いポイントでした。次にその感情が芽生えた理由を聞いてみました。

あまり詳細には書きませんが、妻は子どもの時に、両親の夫婦関係が良くなかったみたいで、言い合いやトラブルが絶えなかったそうです。ただ子どもの誕生日は、毎年ディズニーランドに連れていってくれて、ディズニーランドにいる間は家族みんなが仲良くいられたそうです。だから妻にとってディズニーランドは、家族が幸せでいられるという意味でも「夢の国」だったのです。

私はそれまでミッキーが好きだから、わざわざシェフ・ミッキーを1ヶ月前から予約していると思い込んでいました。妻の家族関係の話は聞いていましたが、それとディズニーランドが結びついているとは知りませんでした。

その話を聞くまで、正直、ディズニーランドには付き添いで行かされている感覚でしたが、聞いてからは私も積極的にディズニーランドを楽しみたいなと思うようになりました。書籍を10冊ほど読んで、自分でも楽しめる要素を整理して、ディズニーランドに臨みました。妻も私の姿勢が変わったことに喜んでくれて、さらに関係性がよくなりました。そう、「夢の国」は外にもあったのです。

読者のみなさんは、毎日顔を合わせてコミュニケーションをとる方はいらっしゃいますか。その方とあえて仕事とは関係のない会話をしてみてはいかがでしょう。知らない一面を知ることで、仕事も円滑に進む可能性がありますよ。