ととのう職場、自然体のキャリア

センスを疑え。型にハマれ──連載:ととのう職場、自然体のキャリア VOL.8

自分にはセンスがないと諦める前に、型を抽出してみよう。羽渕彰博の連載、第八回。

自分にはセンスがないからと諦めていた

私は多動な人間でして、好奇心旺盛でいろんなことに興味があります。この前はふと思い立って、初めて歌舞伎を鑑賞しました。ちなみに歌舞伎の休憩時間のことを「幕間(幕の内)」というのですが、「幕の内」に食べる弁当のことを、幕の内弁当と呼ぶようになって現在に至っているそうです。このようにいろんなことに興味が向いてしまいます。逆にいうと一つのことをコツコツと続けることが苦手です。

特に文章を書き続けることに関しては全くセンスがありません。ブログサイトを立ち上げては3日坊主で放置してしまったこともたびたび。そのような人間がコラムをBNLに(しかも毎週!)寄稿する機会をいただいたとき、自分にその役が務まるのか不安でした。いや、いまでもまだ少し不安ではありますが、皆さまのお力添えもあって、いまのところコラムを寄稿できています。

文章を書き続けるセンスのない人間が、なぜこのように続けられるのでしょうか。

型にハマる

答えは「型」を真似ているからです。型とは、何かをカタチづくるときの構造のことです。例えばCGを用いたアニメーション制作で有名なピクサーの作品は、必ず主人公が大切にしている何かを失う型から始まります。『トイストーリー』では、主人公のウッディがバズ・ライトイヤーの登場により、おもちゃの持ち主であるアンディとの関係を失います。『ファインディング・ニモ』の主人公であるマーリンは、人間の手によって息子のニモを失ってしまいます。このように全然違うストーリーに見えて、実は型に当てはめながら制作されているのです。

私も自分が好きな作家の文章を読み漁って、共通している「型」を抽出し、それに当てはめながら文章を作成しています。ひとつご紹介すると、まず自分が知っている「情報」をひとつに絞り、その情報を知らない読者を想像しながら書いています。

当たり前に聞こえるかもしれませんが、私はこれができていませんでした。書くことは、世の中にとって「新しい情報」でなければならないと思い込んでいました。結果、書き始めながら、自分でもまだ言語化できていない情報を整理しようとしていたのです。

しかし曖昧なまま書き始めるので、何度も書き直したり、書き直しているうちにさらに構成がおかしくなったり、書くことに時間がかかっていました。もちろん書きながら整理するというやり方もあるとは思いますが、私の場合は毎週安定的に書き続けるには不向きでした。いまではまるでパズルを組み合わせるかのように、型に当てはめながら文章を作成しています。

センスに自信がない人は、自分が、いかに情報を集めていないか、自分が持っている客観情報がいかに少ないかを、まず自覚しましょう。いくら瞬時に物事を最適化できる人がいたとしても、その人のセンスは感覚ではなく、膨大な知識の集積なのです。センスとはつまり、研鑽によって誰にでも手にできる能力と言えます。決して生まれつきの才能ではないのです。

センスは知識からはじまる』 水野 学 (著)

自分にはセンスがないからと初めから諦めていませんか。どこまでが型で、どこからがセンスなのか。一度、疑ってみるとキャリアの幅が広がる可能性があるかもしれません。

執筆者・羽渕彰博のプロフィール
羽渕彰博

株式会社オムスビ代表取締役CEO

1986年大阪府生まれ。2008年パソナキャリア入社。転職者のキャリア支援業務、自社の新卒採用業務、新規事業立ち上げに従事しつつ、アイデアを短時間で具現化する「アイデアソン・ハッカソン」のファシリテーターとしても活躍。2016年4月に独立し、リレーションシップデザインを軸とする株式会社オムスビを設立し、組織変革したい企業様向けの組織コンサルティングサービス「reborn」を提供している。

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