ととのう職場、自然体のキャリア

天職を探している限り、やりたい仕事は見つからない──連載:ととのう職場、自然体のキャリア VOL.7

天職は、具体的な職種や業種で探すより、抽象化した「Myミッション」を基準にしてみよう。羽渕彰博の連載、第七回。

なぜ天職を探しても見つからないのか

「Sansan Innovation Project 2019」で「集団におけるイノベーションは、一人ひとりが自身と向き合うセルフマネジメントから始まる」と題したセッションに登壇させていただきました。そのセッションを受講していた就職活動中の学生から、当社宛にメッセージをもらいました。

「新卒やインターンの募集をされていないかお聞きしたく、ご連絡させていただきました」

あいにくそのときは募集をしていなかったのですが、せっかくご連絡いただいたので、少しでも就活のヒントになれたらと思い、一度ランチミーティングをすることにしました。

就活の状況を聞いてみると、彼は組織づくりに強い関心があるということで、自己分析もしていて、やりたい仕事や、自分の強みや弱みも言語化できていました。イベントや本で情報収集するだけでなく、実際にメールで企業にアポを取る行動力もあります。話を聞いている途中から、私がアドバイスしようなんて、おこがましい気持ちになってきました。もはや就職活動の悩みなんて無いのではないかと言ったところ、彼が切り出しました。

「自分に合った会社が見つからないんです」

なぜだろう。詳しく聞いていくと、組織開発コンサルティング事業をしている会社しか受けていないみたいでした。新卒採用をしている企業が限られているとのことで、片っ端から応募したそうですが内定はもらえなかったそうです。

組織開発コンサルティングに絞らなくても、別の人材サービスや心理カウンセラーという選択肢もあるのではないかと聞いたところ、自分が目指している組織づくりとは異なるようでした。そのとき私は、天職を具体的な職種や業種で探そうとすると、見つからないのではないかと気づきを得ました。

仕事を抽象化して、Myミッションから考える

そこで私はなぜ組織開発コンサルティングをしたいのか、一旦、抽象化してみたらどうだろうと提案しました。それは物事をひとつ上の視点から考える行為です。例えば法人では、「事業」が具体で、「ミッション」が抽象です。事業変革や組織変革をする際は、一度ミッションに立ち戻って考えることによって、選択肢が広がります。同じように個人も仕事を選ぶ際には、初めから具体的な求人を選ぶのではなく、まずはミッションに立ち戻って考えることで選択肢が広がります。

彼の場合、抽象化していくと、「社員が自律して働き、管理のいらない組織を作りたい」というMyミッション(個人のミッション)が見えてきました。さらになぜ管理のいらない組織が必要なのか抽象化することができますが、あまりに抽象度が高すぎると「世界平和」とかになってしまうので、適度に具体的であることが望ましいです。

次はミッションが定まったら、具体的な仕事を考えていきます。ミッションが達成できるポジションはどこか、具体的にアイデアを出し合いました。例えば自分が管理職になって、自分の部署内で管理のいらない組織をつくることもできるでしょう。逆に組織に問題がありそうな会社に入って改善することもできるでしょう。ミッションに立ち上って考えることで、見えていなかった選択肢に気づくことができました。

初めから具体的な業種や職種をこだわらずに、まずは抽象度の高いMyミッションを設定し、そこから目の前の選択肢と重ね合わせていくと、不思議とどのような仕事も案外自分に合った仕事に見えてきます。選択した後は、自分の主観や思い込みは捨てて、目の前の仕事でどうすれば成果を上げられるかに注力するといいでしょう。

よく鈴木さんは、「自分のことばかり考えている人が、鬱になるんだよ」と言っていました。自分のモチベーションとか、成功とか、自己実現とか、そういうものにこだわりすぎる人は、どんどん心が狭くなる、というのです。

『自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』石井朋彦(著)

彼は業種や職種にこだわらずに、視野を広げながら就職活動を始めたそうです。内省することは大切だと思いますが、具体的に考えても視野が狭くなるし、抽象度が高すぎてもどこまでいっても答えがありません。ちょうどいい塩梅でMyミッションを定めたら、あとはその範囲の中で柔軟に仕事を選んでいくのがいいと考えています。

あなたのMyミッションはなんでしょうか? ちなみに私のミッションは「パートナーのできる喜びを増やす」でして、そのミッションが達成できる仕事であれば組織開発以外の仕事も楽しんでやれています。Myミッションの抽出方法については、また反響次第でコラム内でご紹介していきたいと考えています。来週もお楽しみに。

執筆者・羽渕彰博のプロフィール
羽渕彰博

株式会社オムスビ代表取締役CEO

1986年大阪府生まれ。2008年パソナキャリア入社。転職者のキャリア支援業務、自社の新卒採用業務、新規事業立ち上げに従事しつつ、アイデアを短時間で具現化する「アイデアソン・ハッカソン」のファシリテーターとしても活躍。2016年4月に独立し、リレーションシップデザインを軸とする株式会社オムスビを設立し、組織変革したい企業様向けの組織コンサルティングサービス「reborn」を提供している。

Eightプロフィールはこちら