ととのう職場、自然体のキャリア

会議を効率化する前に、関係性をととのえよう──連載:ととのう職場、自然体のキャリア VOL.5

関係性が深い職場であるほど、回りくどいプロセスを踏んでしまう。羽渕彰博の連載、第五回。

会議を効率化しても前に進まない本質的な原因

働き方改革の波もあって、会議を効率化して生産性を上げる動きが職場でも始まっています。ある職場では、会議の時間を1時間から30分に短縮したり、椅子に座らず立ったりなどいろいろな試みが試されています。

一方でまだ意思決定に時間がかかるというご相談もお伺いすることが多いです。たとえ一回一回の会議の時間が短くなったとしても、決めることに時間がかかっていたら本当の効率化とは言えないですよね。なぜ会議を効率化しても、なかなか前に進まないのでしょうか。

その原因のひとつして「関係性が濃すぎる」という可能性が考えられます。関係性が濃すぎるとはどういう状態か、とあるムラの会議のストーリーを用いて説明します。

あるムラで、住民が参加する運動会が毎年開催されていました。しかし住民が高齢化し、リレー走や綱引きなどの競技は身体に負担がかかるようになってきました。そこで運動会をやめて、ゲートボール大会に変更したらどうかというアイデアが出ました。そのアイデアについて、3ヶ月に一度行われているムラの定例会議で話し合うことになりました。

定例会議では、そこにいるメンバーだけで決めるのではなく、その議題を検討するための委員会を設置するのはどうかという議論が行なわれました。結果、会議に参加していた複数人が委員会のメンバーになり、委員会主導で進めることになりました。

そして3ヶ月後。委員会から「住民のみんなで投票して決めるのはどうか」という案でした。その案について定例会議に参加したメンバーも賛成し、次回までに投票方法を考えることを話し合うことが告げられました。

また3ヶ月後。委員会がつくってきた投票用紙を、会議に参加しているメンバーで分担して配り、次の定例会議で開票することが決まりました。最初の定例会議から1年経った定例会議で、住民投票の結果、運動会がゲートボール大会に変更することが決まりました。

以上になります。このストーリーはフィクションですが、実際に起きた話をもとに作成しました。実在の自治体や地域とは関係ありません。

このストーリーを読んでどのように感じたでしょうか。私は初め、なぜ運動会かゲートボール大会か決めるのに1年もかかってしまうのか理解ができませんでした。またみんなで決めるのであれば、そもそも定例会議をする意味があるのかどうかも疑問に感じました。住民を代表して定例会議に参加しているのだから、定例会議にいるメンバーだけで意思決定すればいいのではないかと思いました。でもそこには深い理由がありました。

関係性が濃い職場では、コトよりもヒトを重視する

なぜこのような回りくどいプロセスを踏むかというと、「特定の個人が責任を負わないようにするため」に、あえて時間をかけてみんなで決めているそうです。いや、でもそこまで極端に責任を取ることを避けようとしなくてもいいと感じたのですが、そこにはムラの関係性の濃さが影響していました。

そのムラでは、何世代も前から住民たち同士で協力して生活を送ってきました。いわゆる運命共同体です。その共同生活の中でもし何か事件を起こしてしまったら、村八分にされて生きていけない可能性があります。そのムラで生きていくためには、ムラのルールに従って、ムラの人たちから嫌われないことが、生きていくためにもっとも重要な術でした。

一方で、会議で何かを意思決定をするという行為は、一方で選ばれた以外の選択肢を取らない行為でもあります。反対意見を持っていた人たちから、意思決定が原因で嫌われてしまう可能性があります。

先ほどの事例でいうと、もしムラで影響力のある人が運動会を存続したい派だったとしたら、自分はゲートボールにしたいと思っていても、簡単に意思決定はしにくいのではないでしょうか。そこであえて討議に時間もかけて、特定の個人に責任を負わない意思決定プロセスを採用することによって、反対派の感情を逆なですることなく決定できるのです。

今回の事例は、会議の結果によって変わりましたが、基本的には前例を踏襲することが一番波風が立たない方法です。挑戦して失敗することは、悪い評価がついてムラ八分にされてしまう可能性があります。挑戦したい方は外の環境を目指してそのムラを出ていきます。そのムラには関係性を重視して生活していく人たちが残っていきます。いくらインターネットで世界中の情報にアクセスできたとしても。

あなたの職場の関係性はいかがでしょうか。会議を効率化するまえに、関係性を再構築するべき職場もあるかもしれません。