ととのう職場、自然体のキャリア

みんながセルフブランディングする世の中はきっと辛い──連載:ととのう職場、自然体のキャリア VOL.3

必ずしも社会で目立つ必要はない。異能なリーダーを側で支える、優秀な参謀役を目指したっていい。羽渕彰博の連載、第三回が公開。

みなさん一度は、第一線で活躍されているリーダーの講演を聞きに行ったことがあるのではないでしょうか。

常識人ではありえないような大失敗で笑いをとって場をあたためておきつつ、最後は志の高いビジョンを語って惹きつける。私も砂鉄のように、リーダーの磁力に引っ張られて、講演終了後の名刺交換の行列に何度も並んできました。

でも一方で、社会を変えようとする志の高い話を聞きながら、なんて自分は志が低く、自分のことや目の前のことしか見えていないんだろうと、身勝手に凹んでしまうこともありました。名刺交換の列に並んで近づこうとしても、リーダーと自分の間には大きな溝があるように感じてしまうのです。

ちょっとでもリーダーに近づきたい。同じ土俵に立ちたい。そのためには行動せねばと、副業や起業などを通じて挑戦する人たちが増えていきます。正直に告白しますと、私もそうした一人でした。

ソーシャルメディアが普及している現在ですから、やろうと思えばいくらでも情報発信できるわけです。そうやって意気揚々と発信し始めると、次第に我が身の薄っぺらさに気づきます。意識と実態がともなっていなくて、自分をよく見せようとしただけの言葉は、誰の心にも届きません。

いくらこれからは個の時代と叫ばれたって、みんながセルフブランディングしないといけない世の中はきっと辛いのではないでしょうか。苦手なものは苦手で、手放せたほうがいい。逆に匿名で批判される世の中で、情報発信を続けられるリーダーは異能です。

私はそんな異能なリーダーの組織改革のお手伝いをさせていただきながら、うまくいく組織には共通点があることを実感しています。

目立たない参謀役が組織を動かしている

異能なリーダーがトップにいながらうまく回っている組織には、必ずと言っていいほど目立たないけど優秀な参謀役がいらっしゃいます。この記事では便宜上、異能なリーダーを「CEO型人材」、優秀な参謀役を「COO型人材」と定義させていただいだきます。CEO型人材とCOO型人材がいいバランスを保っている組織は安定します。

CEO型人材は風呂敷を拡げることは得意な方が多い反面、実務は苦手な方が多い傾向にあります。ときに急な方向転換をすることもあり、一緒にはたらく部下は方針に理解できずについていけない場合もあります。そんなときに活躍するのがCOO型人材です。曖昧なリーダーの指示をタスクに落とし込んで実行して、組織を円滑に回していきます。

情報発信が苦手な方は、情報発信が得意なCEO型人材に任せて、COO型人材のポジションで活躍されることをお勧めします。またCEO型人材も、COO型人材を求めています。CEO型人材は、自分のスケジュール管理でさえおぼつかず、周囲を困らせてしまうこともあったりします。

CEO型人材も、COO型人材も、自分の苦手なことは得意な人に任せて、自分の得意なことに注力する。そのほうが自分にとっても周囲に取っても自然体ではたらくことができます。

世の中の情報発信にまどわされる必要はない

異能なリーダーの講演はおもしろい。リーダーの中にはビジョンを形にするのではなく、ビジョンを語る仕事に就く方もいらっしゃいます。職業としては、講演家、著述家、啓蒙家、教育者というカテゴリーでしょうか。もちろんそれだけでも社会にあたえる十分な影響力はありますが、逆に言うと世の中の情報発信がCEO型人材の言論に偏っている可能性があります。

例えば、『これからは新しい働き方だ、スーツ着て満員電車に乗っているとかありえない』という言葉も聞こえたりしますが、まだまだ多数の社会人の方はスーツを着て満員電車に乗っているわけです。でもそういう言葉ばかり聞いていると、まるで満員電車に乗ってスーツを着ている自分ではいけない気持ちになっていきませんか。

もちろん自分の気持ちに背いているのであれば、いますぐ満員電車におりて私服に着替えてほしいと思います。ただスーツを着て満員電車に乗ることが、例えば私服を着て自宅で働くことよりも楽だという方だっていらっしゃいます。だからといって、その人はわざわざ「スーツ着て満員電車に乗って何が悪いの!?」と反論はしません。いわゆるサイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)だったりするわけです。

リーダーの講演も心を動かされますが、一方で声無き声にも耳を傾けて、最終的には自分自身で決断していくことが大事ではないでしょうか。自分自身で納得のいく決断をして行動を続けていれば、セルフブランディングなんてしなくても、見ている人は見ているでしょうから。

執筆者・羽渕彰博のプロフィール
羽渕彰博

株式会社オムスビ代表取締役CEO

1986年大阪府生まれ。2008年パソナキャリア入社。転職者のキャリア支援業務、自社の新卒採用業務、新規事業立ち上げに従事しつつ、アイデアを短時間で具現化する「アイデアソン・ハッカソン」のファシリテーターとしても活躍。2016年4月に独立し、リレーションシップデザインを軸とする株式会社オムスビを設立し、組織変革したい企業様向けの組織コンサルティングサービス「reborn」を提供している。

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