職場再考

もう職員室って呼ぶのはやめよう──島根の高校がスイスの家具メーカーと作った「センセイオフィス」

島根の公立高校がスイスの家具メーカー「Vitra(ヴィトラ)」と組んで、新学期にあわせて職員室を改装した。教員が快適に働けて、生徒と対話する時間も増えるその空間は、「センセイオフィス」と名づけられた。

昨秋、島根県立津和野高等学校から東京の「Vitra(ヴィトラ)」日本法人へ、一本の問い合わせがあった。

以前BNLでも紹介した、Yahoo! JAPAN「LODGE」とVitraがコラボして作った「ジッケン オフィス」を見て、職員室の改装について一度相談したいという内容だった。

ずっと変わっていない「職員室」

もう何十年ものあいだ、職員室の形はほとんど変わっていない、とVitra日本法人社長の片居木亮は語る。

「今回のプロジェクトも、別に改装前の写真を見せなくても新しさは伝わるんです。誰に聞いたって、職員室のイメージはほぼ一緒ですから」

紙の資料が積み上げられた鼠色の机に、ギシギシと音の鳴る椅子。そこで教員は日々あらゆることを行っていた。答案の採点も、教員同士の打ち合わせも、生徒との面談も、食事まで。

Vitraは、そんな旧来の職員室をアップデートするべく、世界中のオフィスでいま採用されている最先端の設計思想を盛り込んだレイアウトを提案した。

業務によって場所を選べる空間へ

プロジェクトが本格的にスタートしたのは昨年12月。まず教員と全校生徒を対象にアンケートを集めたところ、「収納が少なくて書類整理がしづらい」、「生徒との面談や教員同士で打ち合わせをする場所がない」という意見があった。そこで、職員室にあった膨大な量の書類を整理して、棚の数を削減し、それによって空いたスペースを活用したレイアウトを描いたという。

入り口前方には、仕切りの役割も果たすシステム家具を配置し、奥の空間を「先生エリア」、前方を「生徒エリア」に緩やかに区切った。教員は、職員室で行う活動の内容に応じて、それぞれ最適な環境を選ぶことができる。

このレイアウトをもとに、最適なVitraの家具を配置し、新学期に合わせてこの春に完成した「センセイオフィス」の全貌がこれだ。

生徒のためのエリアを新設

今回、教員のためだけに改装したわけではない。「生徒との関わりの質の向上(向き合いやすい、話しやすい)」も目指したい姿として掲げられている。生徒からのアンケートにも、「職員室の中に先生と話せるスペースがない」、「個人面談の際に周りの環境が気になる」といった意見があったという。その解決策として廊下側の壁に沿って設けられたのが、この「生徒エリア」である。

今後は、頻繁に回収が必要な書類や連絡用のホワイトボードなど、生徒がもっと気軽にセンセイオフィスに入って来られる仕掛けを用意する予定だという。

「集中」と「協働」がテーマのスペース

生徒も頻繁に入ってくるようになると、中はもっと騒がしくなるはずだ。そんな時に活躍するのが集中スペースである。教員は邪魔されず作業に集中したい時はもちろん、生徒と落ち着いて話したい時や、一人でリラックスして食事や休憩を取りたい時にも人気の場所となるだろう。

これまで教員同士の打ち合わせも、個人デスクに座ったまま行われていたが、これからは協働スペースのテーブルを自由に使えるようになる。短時間のミーティングの場合は、ハイカウンターを利用して、サクッと立ち話で済ませることだってできる。

集中スペース:この半個室のような集中ブースの壁には、圧縮されたフェルトのパネルが使われていて、周りの喧騒を吸収してくれる。
協働スペース1:雑談から思いがけないアイデアが生まれたり、忙しい業務のあいだのちょっとした隙間時間にも活躍しそうだ。
協働スペース2:テーブルにはモニターが設置され、パソコンで書類を映しながらペーパーレスで会議を進⾏できるようにする予定だという。

より快適なデスクで働ける執務エリア

集中と協働のスペースで打ち合わせや面談などができるようになると、個人デスクでは、より集中して執務に取り組めるようになるだろう。

書類を整理したことで空間全体に余裕が生まれ、以前よりも大きな机上面のデスクを導入できたという。教員は、ノートパソコンを開いて、その横で紙の書類を広げるスペースも十分にある。

用途に応じて自由にセンセイオフィスの中を動き回る機会が増えれば、きっと教員同士のコミュニケーションも増えることだろう。
もともと多くのスペースを占めていた紙の資料を整理したことにより、必要な個別デスクの数は確保しつつ、よりゆったりとした配置が可能になった。
教室で授業を持つ教員にとっては、長時間座るわけではないので、チェアは必要最小限の機能に絞って、軽くて動きやすいコンパクトなものが採用されている。

ただ今回のレイアウトはスタート地点に過ぎない。今後、実際に利用される様子を観察しながら、教員と生徒からのフィードバックも参考にして、改善を積み重ねていきたいという。