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「年長者ほど能力も見識も高い」は大間違い━━要約『劣化するオッサン社会の処方箋』

いくつになっても新しい学びを続け、知識を身につけないと、年長者は価値を失うという。この本は、年長者が劣化しないため、そして若手や中堅が価値あるビジネスパーソンとして生きるための指南書だ。

「旬の長い知識」を身につけよう━━BNL編集部の選定理由

社会の変化が激しく、誰もが簡単に情報にアクセスできるいま、「年配者は知見がある」という前提は通用しなくなりつつある。頭の柔らかい若者の方がイノベーションを起こしやすく、知的パフォーマンスのピークは若年化しているという。

では年を重ねても知的パフォーマンスを保つためにはどうするべきか。本書はその解決作として「旬の長い知識を身につけること」を提案している。

血気盛んな若手に対してコーチング、メンタリングを行おうとすれば、実務的な知識よりも、より深い思考を促すような本質的な問いかけを行うための「教養」が必要ということになります。
つまり10年も経てば劣化してしまうような「旬の短い知識」ではなく、何十年という間にわたって効果を発揮するような知識を入力すべきだということです。

第6章 サーバントリーダーシップ━━「支配型リーダーシップ」からの脱却

知識の旬の長短をどう見極めるのかについては、その知識がこれまでに活用されていた期間の長短で判断するといい。人間は年を重ねるごとに余命が短くなるが、情報はその逆で、1日経つごとに余命が長くなる。そして、この長いこと活用されてきた知識や情報こそが「教養」なのだという。

ここに50年前から読まれ続けている本と、5年前から読まれている本があるとき、前者の本の方が、より長い期間、これからも読まれ続けると考えていい。

第6章 サーバントリーダーシップ━━「支配型リーダーシップ」からの脱却

目の前に膨大なデータや最新の情報を並べられると、つい飛びつきたくなる。もちろんそれらの情報も役には立つが、誰でもアクセスができ、すぐに変化してしまう。

大事なのは、その奥にある普遍的な文脈や情報をしっかりと身につけておくことだ。いつの時代でもどんな場所でも通用する知識やスキルがあれば、年齢を重ねても劣化は避けられるだろう。

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要約者レビュー

ここ最近の不祥事のほとんどは、いわゆる「いい年をしたオッサン」が引き起こしたものだ。電車や病院などの公共の場で暴れたり騒いだりするオッサンも、残念ながら増えている。本来は成熟した大人であるはずのオッサンが、なぜ劣化して社会問題になっているのか?――本書はこうした問題提起から始まる。

劣化して社会の害悪となってしまった「オッサン」が量産される構造的な問題について、数々のベストセラーを生み出してきた山口周氏は、人文科学的な知見をもとにその原因を分析し、解決策としての処方箋を提示する。なおここでいう「オッサン」とは、いわゆる「オジサン」と呼ばれる世代の人たち全員を指しているわけではない。古い価値観に凝り固まって、過去の成功体験に拘泥し、謙虚さや学ぶ姿勢を失ってしまった人たちこそが「オッサン」なのだという。

本書では「劣化したオッサン」に対して辛辣な言葉が述べ立てられているが、いつまでも古びない知恵、すなわち「教養」を身につけることで、どんな世代の人でもオッサン化は回避できるという著者の結論には希望がもてる。あなたが50代以上であれば「自分がオッサン化していないか?」を、50代未満であれば「オッサンのような思考回路に陥っていないか?」を確認するための"リトマス試験紙"として、本書を活用してはいかがだろうか。


本書の要点

── 要点1 ──
バブル崩壊の影響を受け、オッサンたちは社会や会社に対して恨みを抱えている。

── 要点2 ──
組織は大きく古くなればなるほど、三流の人材が増えて劣化していくという宿命を負っている。

── 要点3 ──
「劣化したオッサン」に立ち向かうには、「オピニオン」と「エグジット」を行使しなければならない。そのためには汎用性のある知識を身につけて、「モビリティ」を高めることが必要である。

── 要点4 ──
これからの年長者が社会貢献するためには、「教養」を身につけた支援型リーダーシップの発揮が必須だ。

── 要点5 ──
オッサン化を防ぐもっともシンプルな処方箋は、謙虚に新しいものを学び続けることである。


要約

組織が劣化する理由

Photo: "thinking it over" by Tobi Gaulke(CC BY-NC-ND 2.0)

オッサンの定義

本書における「オッサン」とは、年代や性別にかかわらず、次のような行動様式・思考様式をもった「特定の人物像」を指す。

(1)古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する

(2)過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない

(3)階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る

(4)よそ者や異質なものに不寛容で、排他的

したがって中高年の男性でもオッサンに該当しない人がいる一方で、傍若無人な振る舞いで自らを省みることのない人はオッサン化しているといえる。

「知的真空の時代」を生きたオッサンたち

20代の頃どんな時代を過ごしたかによって、その後の人格形成は大きく変わるものだ。2018年時点で50代・60代のオッサンたちは、「大きなモノガタリ」のなかで20代を過ごした最後の世代である。「大きなモノガタリ」とは、「いい学校を卒業して大企業に就職すれば一生豊かで幸福に暮らせる」という、バブル崩壊前に蔓延していた幻想のことだ。オッサンたちはこの「知的真空の時代」に若手時代を過ごしており、「大きなモノガタリ」に順応することが、自己の便益を最大化するもっとも合理的な手段だと考えていた。

だがその後、「大きなモノガタリ」は喪失。代わりに「新しいモノガタリ」として、「グローバル資本主義下における弱肉強食の世界」が支配的になった。ゆえにオッサンたちが「大きなモノガタリ」の喪失後、社会や会社に対して「裏切られた」と恨みを抱えることになったのも、頷けるところではある。

組織は劣化する宿命である

人材に一流、二流、三流があるとするならば、もっとも出現率が高いのは三流だ。組織を起業して発展させることは、一流の人材にしかできない。しかし組織が成長していくと、人材が増えていくと同時に、三流の人材が幅を利かせるようになる。なぜなら三流は一流が見抜けないので二流におもねり、二流は一流を見抜けるものの疎んじるためだ。

だから一度でも二流がトップに立つと、それ以降はよほどのことがない限り、その組織に一流の人材が入ってくることはない。そして人材のクオリティは世代交代するにつれて、三流に収斂していくことになる。組織が大きく古くなればなるほど、この劣化はより顕著にあらわれる。

先の世代論・年代論で挙げた構造的問題に加えて、このようなリーダーのクオリティの経時劣化が重なり、日本の多くの組織で問題が起きているのだ。


モビリティを高めよ!

Photo: "Fighting bulls" by Gigi Ibrahim(CC BY-NC-ND 2.0)

武器は「オピニオン」と「エグジット」

「劣化したオッサン」に立ち向かうには、「オピニオン」と「エグジット」を武器として使いながら、社会で権力を握るオッサンに圧力をかけていかなければならない。「オピニオン」とは、おかしいと思うことにおかしいと意見することであり、「エグジット」とは、権力者の影響下から離脱することである。オピニオンもエグジットもしないということは、オッサンが自分の人格や人望を勘違いする土壌を育んでいるという意味で、不祥事に加担しているのと同じである。

とはいえオピニオンやエグジットの行使は、ややもすると自分のキャリアを危険にさらすことにもなりかねない。ゆえに汎用性の高いスキルや知識などの「人的資本」と、信用や評判などの「社会資本」を厚くして、「モビリティ」を高めていくことが、リスク管理上は不可欠になる。

「モビリティ」はこれから先のキャリア形成における最重要キーワードだ。これまでスキルや知識の獲得は、会社という枠組みのなかでおこなわれるケースがほとんどだった。だが今後は、どんな場所でも生きていけるように学び続ける意識が欠かせなくなってくる。

オピニオンやエグジットを行使できない理由

日本ではこれまでオピニオンやエグジットが積極的にされてこなかった。理由としては次の2つが考えられる。

(1)美意識の欠如
自分なりの美意識(審美眼、道徳観、世界観、歴史観)がある人は、許容できることとできないことの線引きがはっきりしている。逆にこれが欠如していると、仮に上司が一線を越える振る舞いをしても、声をあげて指摘することができない。

(2)モビリティの低さ
ここでいうモビリティとは、エグジットを行使して組織を出たとしても、いまの生活水準を維持できるだけの能力のことである。モビリティが低いということは、スキルや知識がいまの組織においてのみ有効なもので、汎用性がないということだ。副業を好ましく思わないような典型的な日本企業に長いあいだ勤めていると、モビリティはいっこうに高まらない。だから彼らはオピニオンやエグジットを行使できないのである。


【必読ポイント!】 年長者は敬うべきか

Photo: "cloud of snow" by peaceful-jp-scenery (busy)(CC BY-NC-ND 2.0)

年長者とイノベーション

日本には「年長者は尊敬すべきである」という暗黙のルールがある。しかし年長者ほどスキルや判断能力が高いというデータはじつのところ存在しない。したがって「年長者は尊敬すべきである」というのは、わたしたちの儒教文化に根差した「信仰」だといえる。

オランダの心理学者ヘールト・ホフステードがおこなった調査結果によると、日本は「年長者に対して反論するときに感じる心理的な抵抗の度合い」が相対的に高い国として分類されている。一方でイノベーションランキングの上位にくるのは、年長者に対して反論しやすい国ばかりだ。

画期的なアイデアを生み出すのは、「若い人」や「新参者」であることが多い。だが権力を年長者が握ってしまうと、「若い人」や「新参者」に直接の発言権や資源動員の権力がなくなってしまう。その結果、なかなかイノベーションが起きなくなるのである。

年長者の価値がなくなっている

それでも「年長者は敬うべきだ」という規範は、合理性を超えたところでそれなりに支持されてきた。これは長いあいだ、年長者が組織やコミュニティにとって一種のデータベースの役割を担ってきたからだと考えられる。しかし20世紀後半以降、年長者のもつ価値が失われる3つの変化が発生している。

(1)社会変化スピードの高速化
20世紀後半以降、ライフスタイルの変化スピードがどんどん速くなり、それまで年長者が長い時間をかけて培ってきた知識や経験が、すぐに陳腐化するようになった。わたしたちがいま向き合っている問題は、年長者にとっても若者にとっても新しい問題だ。そして新しい問題に対する問題解決能力は、むしろ若者の方がすぐれている。

(2)情報の普遍化
現在はあらゆる情報に対して、いつでもどこでも誰でもアクセスできる社会に近づきつつある。その影響を受けて、データベースとしての役割を担ってきた年長者の価値は相対的に下がっている。

(3)寿命の増進
平均寿命が短かった時代では、貴重な経験値を有している年長者が重宝された。しかし平均寿命が飛躍的に伸長し、年長者の人数が増えてくると、年長者が有していた知識や経験の希少価値は目減りしてしまう。

以上の理由から、「年長者ほど能力も見識も高い」という前提は、これからの時代では成立しないといえる。

オッサンはサーバントリーダーシップを発揮せよ

このような状況下で、年長者が組織に対して貢献できることはあるだろうか。

その疑問に対するもっともシンプルな答えは、「サーバントリーダーシップの発揮」だ。サーバントリーダーシップとは、米国のロバート・グリーンリーフによって提唱された概念で、権力に頼らない「支援的なリーダーシップ」を意味する。サーバントリーダーシップは、これまでの支配型リーダーシップとは異なり、「支援する」ことでリーダーシップを発揮する。オッサンならではの懐の深さを発揮し、人脈・金脈・ポジションパワーを使って若手・中堅を支援していくというのが、サーバントリーダーシップの一番わかりやすいカタチだ。

ただしこのリーダーシップは、主導権を握って動こうとする若手・中堅の存在を前提としている。ゆえにオッサンとそれ以外の人たち双方が、リーダーシップのパラダイムシフトを起こさなければならない。

武器としての「教養」を身につけよ!

Photo: "British Museum" by Pablo Fernández(CC BY-NC-ND 2.0)

年長者の知的パフォーマンスの劣化を防止するアプローチがひとつだけある。それは「劣化しない知能を身につける」ことだ。

これからオッサンがサーバントリーダーシップを発揮して社会に貢献するためには、若手に対して深い思考を促すような、本質的な問いかけができるようになる必要がある。そしてそのためには「教養」が不可欠だ。旬の短い知識ではなく、長いあいだ有用な知識や情報を身につける努力をするべきである。

わたしたちの成長は「経験の質」、すなわち「新しい経験の密度」によって大きく変わってくる。多種多様な人たちとともに、さまざまな仕事をバラエティに富んだやり方で取り組むという「経験の多様性」が、良質な体験をもたらし、深い学習へと導くだろう。

年をとっただけで「老いる」ことはない。いくつになっても創造的で知的パフォーマンスが落ちない人々は、常に目標をもってチャレンジをし続けている。劣化したオッサン社会に対するもっともシンプルな処方箋は、わたしたち一人ひとりが謙虚に新しいものを学び続けることなのである。


一読のすすめ

ここのところ大きな組織による不祥事が相次いでおり、「いいオトナが何をやっているのか」と思っている人も少なくないはず。本書では「なぜ不祥事が相次ぐのか?」という問いに対して、「劣化するオッサン」が量産される構造的な問題が丁寧に解き明かされ、それに対する適切な処方箋が示されている。

社会の変化のスピードがますます速くなるなかで、わたしたちは何をするべきなのか。オッサン化はけっして他人事ではない。本書を読み、これからの社会を生き抜くための心得をインストールしていただければと思う。

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