いまの時代に求められる豊かさとは? 「R100 TOKYO」は100㎡超のリノベーションで、業界の常識を覆した

「高級」というスタンダードな価値に頼らない人が増えている。一人ひとりが自分なりの価値基準を持ち始めたからだ。自分にとっていいものとはなにか。「R100 TOKYO」は、マンションという空間を、場所にとらわれず自分の意思で選べる環境を提供する。

日本は世界でも指折りの成熟社会と言われる。モノに不自由することもあまりなくなった。にもかかわらず、国連が発表する「世界幸福度ランキング」では50位を下回る位置をウロウロしている。これは一体どういうことなのか。成熟とは何か。豊かさとは何か。幸せを感じられていないとするのなら、それはなぜなのか。

2005年創業のリビタは、当時まだ日本では一般的でなかったリノベーションという手法を軸に、マンション分譲や建物活用のコンサルティングなどを行ってきた。リノベーションはいまでは新築、中古と並ぶ、住まい選びの第三の選択肢としてすっかり定着した。同社はそのことに大きく貢献した存在と言える。

そのリビタが2013年に立ち上げ、いまもっとも力を入れているのが「R100 TOKYO」というブランドだ。都心でありながら緑豊かな邸宅地にあるマンションで、100㎡超の物件のみを厳選し、「東京を豊かに暮らす」をコンセプトにリノベーションをする。

この話を聞いて二つの疑問が頭に浮かんだ。「東京を豊かに暮らす」とわざわざ掲げるからには、東京では豊かに暮らすことが困難であるという課題意識があるのだろう。一つ目の疑問は、なぜ東京では豊かに暮らすことができないのか、だ。そしてもう一つ、そもそも「東京を豊かに暮らす」と言った時の「豊かさ」とは何か。

「R100 TOKYO」では、その名の通り100㎡という広さにこだわっている。広さ=豊かさとはどういうことなのか。最近の若い世代は「いい家に住んで、いい車に乗って」という、かつては当たり前だった価値観を信じていない人も多いという。「持たざる暮らし」を志向する人が増えていると言われる中、広さ=豊かさとは、時代に逆行していないだろうか。

このような疑問を携えて、代々木公園の邸宅地に立つ300㎡超の住戸のあるマンションに、同事業の責任者・斎藤渉を訪ねた。

1億円払っても広い家に住めない東京の"貧しさ"

東京で豊かに暮らすことが困難である、とはどういうことなのか。「R100 TOKYO」を発案するきっかけとなった出来事に、その答えがあった。

「リビタは14年前からリノベーション事業をやってきました。主に手がけていたのはファミリータイプの分譲住宅でしたが、ある時たまたま広尾ガーデンヒルズで100㎡のリノベーションをする機会を得たのです。築30年で物件価格は1.5億円。当時は自分たちとしても未知の領域で、内心不安もありました。ところが、いざ蓋を開けてみると、行列ができるほどの人が空き物件を求めていました。なぜ行列ができたのかといろいろ調べていくと、都心部では、金額にかかわらず、広い家には住めない現実があることがわかったのです」

斎藤によれば、東京に建つ新築マンションのうち、100㎡以上の広さがあるものは全体の1%にすぎなかった。そもそも物件がないのでは住むことはできない。だが、現実に「買いたい」という人がいるのに、デベロッパーはなぜ広い住戸を作らないのか。

「都心の新築マンションは高層のタワーマンションが中心です。タワーマンションは同じ形の部屋を積み上げて作られます。低層階は眺望や日当たりの問題もあって、100㎡の高額な部屋を作っても売れ残ってしまい、グロスの価格が張ってしまいます。だから新築のデベロッパーは、比較的手頃な価格の70㎡の部屋を積み重ねていって、上階にだけ100㎡の住戸を作る。その結果、100㎡の住戸は一握りの高額なものしかできないのです」

「R100 TOKYO」が扱うマンションは、都内の主に邸宅地と呼ばれる場所にあるという。今回は、代々木公園から歩いてすぐの場所にあるマンションを訪ねた。この家のリビングは窓が多く、自然光の優しい光が差し込む、静かで落ち着く場所だった。

都心から離れれば広い家に住むことはしやすくなる。だが、こうした物件を求める人の多くは経営者や起業家などであり、それぞれに都心を離れられない理由がある。ゆえに、仕方なく我慢して暮らすということが起きている。これはあまり豊かとは言えないのではないか、と斎藤は言う。

リビタはそこに価値提供の可能性を見いだした。新築物件には前述のような広い部屋を作れない事情があるかもしれないが、自分たちには培ってきたリノベーションのノウハウがある。都心から遠くない緑豊かな邸宅地に建つ100㎡以上の物件を買い、リノベーションを施すことで、もっと豊かな生活を提案できるのではないか。このように考えたところから「R100 TOKYO」は誕生した。

効率や利益率を優先する大手新築デベロッパーからすると、物件1戸1戸が異なる顔をもつリノベーションは、手を出しにくい領域だ。一方、仲介会社はあくまで顧客と顧客を結ぶのが本分だから、住まいの提案まで踏み込むプレーヤーは少ない。インテリアや照明なども含めたトータルの空間を提案できるのは、不動産と建築の両方の視点を持ったリビタならではと言える。

世界的に見て100㎡はスタンダード。決して贅沢ではない

だが、そもそもなぜ「R100 TOKYO」では100㎡以上という広さにこだわるのか。広さ=豊かさとはどういうことなのか。

取材を行った部屋は300㎡超の物件だった。住戸の中に階段があり、下に降りると寝室やバスルームなどがある。

「R100 TOKYO」が考える豊かさは「五つの価値」という言葉で表現されている。「五つの価値」とは、「先見性」「普遍性」「継承」「時・間(ときとま)」「誇り」を指す。

例えば「先見性」とは、100年先も価値のある邸宅であり続けるということだ。マンションの資産価値は、基本的には新築時にもっとも高く、時間とともに下落していく。時を経ても価値が保たれる方が豊かであるとは言えるだろう。そのため、一般的なマンションだと通常30年のところ、「R100 TOKYO」では一棟丸ごとリノベーションをする場合、築後100年までの長期修繕計画をプランに組み込んで提案する。

「利便性を追求した駅前や湾岸のタワーマンションではなく、歴史ある邸宅地という立地にこだわるのも、この『先見性』の考え方に基づいたものです。マンションの資産価値は建物が建つ土地の価値がベースとしてあり、その上に建物の価値が足されることで決まります。100年続く邸宅地としての歴史ある土地であれば、この先100年も変わらない価値を保ち続けると考えられます」

100年にわたって住み続けるとなれば、デザインや調度品にも流行り廃りがあっては困る。そこで打ち出す二つ目の価値が「普遍性」ということになる。「R100 TOKYO」の物件に、一般的に高級マンションと聞いてイメージするような華美な印象がないのはそのためだ。

さて、広さが豊かさにつながるという考え方は、「時・間」という価値に見て取ることができる。

「間というのは、例えばソファと壁の間にある30センチほどの空間のことです。この空間があるとないとでは、部屋全体から受ける印象がまったく違います。そのスペースに細い棚を置くのか、それとも植栽を置くのか。家主が自分らしい暮らしをするために自ら使い方を考える余地もできます。そのことが住む人にゆとりをもたらすのではないかと私たちは考えています」

あるいは、コージーコーナーと呼ばれる憩いの空間を設けることで、ダイニングでもリビングでもない第三の過ごし方が生まれる。午前中はリビングのソファで語らい、午後に陽だまりができたらコージーコーナーに移るという過ごし方ができる。つまり、時間軸で考えても部屋の使い方に幅が出る。こうした時間的・空間的なゆとりが、住む人に精神的なゆとりももたらす。それが豊かな暮らしというものではないか、と斎藤は言う。

奥の自然光が差し込む空間がこの物件のコージーコーナー。ここに椅子やテーブルを置いてもいいし、何も置かずに日の光を眺める場所にしてもいい。時間に合わせて好きなように使える「間」だ。

しかし、それができるのは前提として100㎡以上という広さがあるからだ。70㎡の部屋には、リビングとダイニングはあっても、それ以外の場所でお茶を飲むという発想自体が生まれない。100㎡というのは決して贅沢ではなく、人が豊かな暮らしをする上で必要な広さなのではないか、と彼らは考えている。

「世界を見れば、100㎡の家は決して一部の成功者にのみ許された贅沢品ではありません。日本国内でも田舎へ行けば、100㎡の家はむしろスタンダードであるとさえ言えます。これだけ成熟した社会と言われる東京だけが、皮肉にも100㎡の家に住むことのハードルがものすごく高いのです。この問題を解消し、当たり前の豊かさを提案したいというのが、この事業に込めた私たちの想いなのです」

マンションの屋上はテラスになっている。代々木公園を眺めることもでき、都心でも緑を感じて暮らせる。(写真提供:ReBITA)

成熟とは、自分にとっての「いい」を追求できること

東京では広い家に住みたいと思っても住むことができない。「これは、顧客よりも住宅供給側の都合が優先される不動産業界の現状に起因している。その象徴が3LDK=70㎡という東京のスタンダード」と斎藤は言う。どういうことだろうか。

「3LDKという間取りを普通に作ろうと思ったら、本来100㎡は必要なのです。ところが東京では、3LDK=70㎡という広さが暗黙の水準になっている。この数字には実は何の根拠もありません。住宅供給側がなんとなく決めたところからスタンダードになっていったのです。なおかつこれは、景気が悪くなればより狭くもなります」

キッチンの奥のスペースは、家族だけで簡単に食事ができる場所。海外ではダイニングは来客時に使用するのだという。

豊かに暮らすには本来必要な広さというものがある。もちろん、必要な広さは人によって違うかもしれないが、その必要な広さを自分の意思で選ぶことができない、供給側の都合に従わざるを得ないところに、"貧しさ"の本質がある。

「この事業を始めるにあたって、コペンハーゲンで普通の家庭の部屋を見せてもらう機会がありました。驚かされたのは家の広さだけでなく、彼らが例えば、椅子一つ買うのにも3年かけるという話を聞いたこと。親子三代で使うことが前提だから、椅子一つに80万円払う。向こうは日照時間が短く冬も長いので、必然的に室内で過ごす時間が長くなります。そのぶんだけ、家という空間のことを真剣に考えているのです」

彼らには「自分たちにとってのいい暮らしとは何か」という問いがある。成熟社会とはこのように、誰かに押しつけられたスタンダードに従うのではなく、「自分にとってのいいもの」を追求できる社会のことではないか、と斎藤は続ける。

「高度経済成長期の日本では、誰もがワールドスタンダードのいいものを求めました。鞄はルイ・ヴィトン。車はベンツにジャガー。当時はいまほど情報のない時代でしたし、それはそれで楽しかったかもしれません。けれども、その後日本人もさまざまな国にわたっていろいろな価値観に触れ、いまでは自分なりの選球眼、自分なりの価値基準を持ち始めています。こういうハイクラスなマンションを求めるお客さまも、ものすごい高級車でいらっしゃるけれども、服装は機能性を求めてとてもラフな格好、ということが増えている。他者軸だった価値基準が、自分軸へと変わってきているのです」

見学できる物件には、部屋の雰囲気に合わせてさまざまなインテリアがセレクトされている。実際に物件を購入する際、セッティングされているインテリアも気に入って一緒に購入するケースも多いという。

いわゆる高級マンションがこれまで華美なデザインだったのは、それが富の象徴であり、他者に見せるために最適化されていたからだ、と斎藤は考える。価値基準が他者軸から自分軸へと移り、成熟した社会においては、住まいは他の誰でもない、そこに住む本人にとっての心地よさが優先されるのでなければならない。デザインにもインテリア選びにも、「R100 TOKYO」の物件にはこうした思想がくまなく張り巡らされている。

東京の最高峰の暮らしを世界に

これは一部の富裕層に限った話ではないし、「持たない暮らし」を志向する若い人の新しい価値観とも矛盾しない。自分らしい暮らしは人それぞれ違う。その、それぞれに違う価値観に対して、応えられるだけの選択肢を提示しようという話なのだ。

それをリノベーションという手法で実現する会社がリビタ、ということになる。「R100 TOKYO」というブランドを展開する一方で、にわかに盛り上がりを見せる「多拠点居住」を後押しするような商品の企画を進めているのも、「多様な価値観に応える」という同社の姿勢の表れと言えるだろう。

「どちらの価値観が正解ということではないのです。未来に向けてはいろいろなものを提案していく必要があると思っています。リビタのビジョンは『次の不動産の常識をつくり続ける』。だから私たちは、常に新しいものを生み出し続けなければならないのですよ。これは創業以来変わらない私たちの姿勢であり、『R100 TOKYO』もその正当な延長線上にあります」

斎藤は「リノベーションは、人々がより豊かに暮らす環境を提供するためのひとつの手段でしかなく、ゴールではない。だからこれからも、さまざまな新しい事業を提案していきたい」と語る。

これまでの「東京の"豊かな"暮らし」は、どちらかといえば、海外から輸入された価値観を一方的に受け入れるようなものだったかもしれない。だが、東京の暮らしにはもっとポテンシャルがあるはずだ。「R100 TOKYO」という事業を通じて「東京の豊かな暮らし」の新たなスタンダードを確立し、ゆくゆくは海外に輸出したい、と斎藤は言う。

その際に引き合いに出すのは、トヨタ自動車が世界を舞台に展開してきた高級車ブランド・レクサスだ。

「レクサス以前、高級車と言えばジャガーであり、ベンツであり、BMWでした。そこに日本のメーカーが新たに参入するのに、ただドイツ人のまねをするのでは意味がないですよね。そうではなく、日本人が考えるラグジュアリーとは何かと徹底して考え、生み出されたのがレクサス。その『何か』を言葉にすると、ホスピタリティとかj-factor(トヨタデザインの基本的考え方)といったものになるわけですが、それらは確かに、世界に受け入れられた。住まいに関しても同じことが言えるはずだと思うのです」

これだけ成熟した東京なのだから、海外にだって輸出できる独自の住宅文化が生み出せるはず、と斎藤は言う。彼らの言う住宅文化とは、住まいを提案する際の発想や文化、情緒的な価値を指す。すなわち、前述した「五つの価値」こそが、「R100 TOKYO」が信じる東京の住宅文化にほかならない。

日本人が考え、日本人が作る「豊かな暮らし」の最高峰。それはきっと世界にだって受け入れられるはずだと彼らは信じている。

【R100 TOKYO】