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アートの世界への入り口へ──「3331 ART FAIR 2019」3月6日(水)から開幕

3月6日(水)から10日(日)まで、閉校になった公立中学校を改装したアートセンター「3331 Arts Chiyoda」(東京・神田)にて、今年も年に1回の大規模なアートフェアが開催される。平日仕事の合間に、週末家族と一緒に、お気に入りの1点を発掘しに行こう。

2019年3月6日(水)、「3331 ART FAIR 2019」が開幕する。今回で8回目となる、オルタナティブなアートフェアだ。

今年は、100組を超えるアーティストと、30を超えるギャラリーおよび教育機関が参加する。

会場の3331 Arts Chiyoda(東京・神田)は、閉校になった公立中学校を丸ごと改装し、再生したアートセンター。2010年のオープン以来、地元の人たちがふらりと立ち寄る憩いの場として、お目当てのアーティストの作品が見られるギャラリーとして、海外のアーティストが日本で制作するアーティストインレジデンスの発表の場として、多様な人たちを受け入れている。

3331 ART FAIRの特徴は、そのロケーションを生かした多彩な展示空間だ。本格的なホワイトキューブを備えた「メインギャラリーエリア」には、気鋭のアーティストの作品が展示され、グループ展のようにも楽しめる。

「体育館エリア」には、20を超えるギャラリーブースが並ぶ。芸大・美大などの教育機関によるブースの多くもここに集まる。「体育館エリア」の今年の特徴は、国際化へと舵を切ったことだ。韓国から4つのギャラリーが参加するほか、アメリカの現代アートギャラリー・Blum & Poeが出展する。1994年にカリフォルニアで開廊したBlum & Poeは、多くのすぐれた日本人アーティストを海外へ紹介し、日本の現代美術界に貢献してきた。

「メインギャラリーエリア」に戻れば、10人の作家推薦者がどんなアーティストをどのような視点で選んでいるかを見るのも楽しい。

昨年開催の様子。

例えば、社会学者で東京芸大教授の毛利嘉孝は「今回選んだ作家は、すべて何らかの〈境界〉を扱っているアーティストである」と表明している。選んだ作家は、写実的な絵画作品を制作する李晶玉、建築的な規模のインスタレーションをつくる持田敦子、自らの身体を使って表現する遠藤麻衣ら、計5組。ジャンルにこだわらない顔ぶれだ。

ブリヂストン美術館副館長で、『ジェンダー写真論』などの評論で知られる笠原美智子は、写真で表現する作家を5人選んだ。そのひとり、森栄喜は2013年に写真集『intimacy』で第39回木村伊兵衛写真賞を受賞した、よく知られている写真家だ。彼の作品にアートフェアという場で出会うのは、雑誌や写真集などで目にするのとはまた違う体験になるに違いない。

2016年以来、2度目となる作家推薦者を務めるキュレーターの遠藤水城は、3331 ART FAIRについて「作品を商品として売買するだけではなく、アーティスト、推薦人、コレクター、企画者、観客、などの顔がお互いに見え、それぞれが密接に関係しながら力を出し合うことで、血の通った独自の『エコシステム』のようなものを構成していく、そういった志向がある」と書いている。

3331 ART FAIRには、観客を「エコシステム」に積極的に巻き込んでいく仕掛けがあちこちに施されている。その最たるものが「コレクター・プライズ」である。「コレクター・プライズ」とは、100人以上の「プライズセレクター」が自分が購入した作品に「コレクター・プライズ」を授与する独自の仕組み。つまり、100人のアート好きが「私はこの作品を買います!」「この人を推します!」と表明するのだ。誰がどの作品を選んだかは会場内に掲示されるので、「どの作品が人気があるのかな」と眺めるのもまた一興。

アートに少しでも興味のある人なら、会期中に3331 Arts Chiyodaへふらっと立ち寄るだけでも刺激を楽しめるはずだ。

BNLが気になったアートワーク

展示予定作品の中からいくつか選定してみた。作家推薦者のコメントとともに紹介しよう。

"SERIES ABOUT LOVE" 安木/AINWOODS:推薦者(アーツ千代田 3331)のコメント:AINWOODSの写真群を見ると、生々しい熱量に不安感すら覚える。背景の情報を排し、ある角度から抉り撮るような構図は見ていて面白い。写真画像を構成する、AINWOODS独特の強烈なカラーリングとコントラスト、ライティングは、単に鮮やかさだけではなく艶かしく、被写体となる人物/風景のイメージは、時間が流れ、ほんの少し先の未来を感じさせてくれる。第一印象で見とれてしまう写真というのは、瞬間で強烈に殴り倒されるか、じわじわと恐怖を感じ、且つ美しさを覚えるかのどちらかである。AINWOODSの作品は、その両方を兼ね備えている。PHOTO:©AINWOODS
"Form No.4 Equinox" ユニス ルック 推薦者(原万希子)のコメント:セラミック彫刻、シルクスクリーン、インスタレーションからアーティスト・ブックの出版まで手がけるマルチタレントなユニス・ルックは、カナダのトロント出身で現在は東京を拠点に活躍するアーティストだ。ルックは2015年に信楽の「陶芸の森」に滞在して、信楽の土と手びねりの手法を使って今回出品する「完璧な卵などない」シリーズを制作した。でこぼこしていて不完全で柔らかい輪郭と淡色のグラディエーションで着色されたセラミック彫刻は、彼女が信楽の暮らしや自然の中で出会った田園風景や生物から発想を得ている。彼女の独特の手作り感あふれた作品は。見る者をほっくりとした穏やかで豊かな詩的な世界に引き込む魅力に満ちている。PHOTO:©Eunice Luk
"on the way home" 片山 真理 推薦者(笠原美智子)のコメント:片山真理が作品にするのは自らの日常である。日々を生きる中で考え、体験し、美しく感じ大事にした思い出の品々や記憶が視覚化される。自分の生命を確認するかのように、彼女の作品には彼女と関わった様々な人やオブジェが表現されている。彼女にとっては当たり前の光景、けれどもそこに「義肢」が登場するだけで、見る者にとっては当たり前でなくなる。しかし彼女の作品は、「健常者」と思っている人たちのそうした視線をもするりとやり過ごしてしまう。自分の「義肢」はわかりやすいだけで、あなたたちの特徴、コンプレックス、美点と思われることと、少しも変わらないのだと。PHOTO:©Mari Kataoka
"隠れた場所 (Side Bush)" 近藤 正勝 推薦者(アーツ千代田 3331)のコメント:近藤さんの絵画は、「人新世 / アントロポセン」_ Anthropocene人類と地球環境の危険なふるまいを優しく悟るように描ききだす。⾃然⇔アーティフィシャル,抽象⇔具象, ⻄洋⇔東洋, 永遠⇔瞬間, 過去⇔現在, など「相対的普遍」(Between the Parallel)の間にある=「沈黙の時」(Whenever I Am Silent)の存在を地層学的スケールで見出し絵画化する。ロンドン在住日本人アーティストの代表的存在であり、海賊放送FM局でレギュラーDJとして番組を担当、陸上の幅跳びではマスターズ45歳当時のヨーロッパチャンピオンというアスリートとしての顔も持つ。また、「ALLOTMENT」という若⼿の美術作家のTRAVELAWARD(制作旅⾏助成⾦)を2009年から主催する。PHOTO:©Masakatsu Kondo

その他、事前に公開されているアートワークは全てこちらから確認できる。ビジネスの観点からアートを世界に関心のあるBNL読者には、会場内で開催される以下の関連イベントもお薦めだ。

近年、「アート思考」というキーワードに代表されるように、経営者をはじめとするビジネスパーソンによる美術やアートへの関心が高まっています。彼らは一体アートに何を見い出し、そこから何を学び得ようとしているのでしょうか。3331 ART FAIR 総合ディレクターの中村政人が、これからの社会を生き抜き、新たな分野やビジネスを切り開くために求められる思考や能力、術を「アート×産業×コミュニティ」をテーマに活動するアーティストの観点から語ります。