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会社員は、小さく素早くたくさん試せば人生が拓ける。新年は『スモール・スタート』ではじめよう

何か始めたいのに勇気がない。そう足踏みしているのなら、まずは小さく始めてみよう。社外に知り合いをつくる、視点を変えて仕事に取り組み、嫌いな人を褒める、見る側よりやる側になる。小さなスタートを繰り返せば、人生100年時代を豊かに生きる土台ができるはずだ。

小さなスタートには、気合も準備もいらない━━BNL編集部の選定理由

新しいことを始める。そう考えると、会社を辞めたり、独立したりと大層なことをするように思えるが、なにもそれだけが「スタート」ではない。もっと気楽に考えて、いまの会社に属したまま、ほんの少し意識を変えて働く。それだけで人生の新たなスタートになるのなら、今年一年が楽しみになる。

例えば、面倒くさくてつまらない仕事があったとする。しかし見方を変えれば、重宝される人材になる絶好のチャンスでもある。

他の人があまりやりたがらず、だから限られた人しかスキルを持っていない仕事を難なくこなせる「縁の下の力持ちとしての実力者」ほど、会社の外でも重宝されます。

第5章 会社員のうちに「ライフシフトする」考え方 より抜粋

いままで面倒くさくて避けていた仕事も、やればやるほどチャンスが増えると考えれば、積極的に始めたくなる。それに、これは会社員でいるからこそできることでもあるのだ。

会社の外に居心地の良いコミュニティをつくれるのも、会社員ならではの特権だ。人生100年時代のいま、同じ場所で一生働き続けることは難しいから、ワクワクする人と出会い、いつでも本拠地になる場所を会社以外にもつくっておくべきだと著者は言う。

人間関係を築くのが億劫と感じるかもしれないが、コミュ二ティは仕事ではないから、行きたければ行けばいいし、行きなくなければやめればいいだけだ。

好きなものについて好きな人同士で話していると、思いも寄らない盛り上がり方をして、一人でいるときや会社の仲間と話しているときにはとうていひらめかないアイデアが湧いてくることもあります。 僕はそこに、スモール・スタートの大きな種があると思っています。

第1章 これからは「小さく素早く動ける人」の時代 より抜粋

無理に気合いを入れなくても良いし、独立に向けて慌てて準備をする必要もない。2019年、最初のBNL Booksは、すべてのビジネスパーソンが気軽に実践できるスモール・スタートをおすすめしたい。

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要約者レビュー

「起業」や「独立」といった言葉を聞くと尻込みしてしまう人も多いだろう。しかし、「知り合いの店を週に1回借りてバーを営業する」だったら、「もしかしたらできるかも」と思えるのではないだろうか。本書ではこうした「小さく始める」方法が紹介される。

人生100年時代に突入し、大企業も経営難に陥ることが珍しくなくなったいま、ひとつの会社に依存し続けるのは危険だと著者は言う。よしんば無事に定年を迎えられたとしても、その後の人生はまだ40年ほども残っている計算だ。そのとき、会社と家にしか居場所がなかったら、どんな生活が待っているだろう。別のコミュニティを持っておくことの重要性は無視できない。スモール・スタートは、そうした「新天地」としての役割の他、経済的・精神的なセーフティネットとしての役割、さらには、起業や独立に向けてのリハーサルとしての役割も果たす。

新しいことを始めるときは誰しも不安になるものだ。しかし、本書で繰り返し述べられているのは「とにかく始めてみること」。何もせずにいることのほうが、よほどリスクが高いのだと著者は主張する。

「小さく始めること」はよく考えるとそれほど難しいことではない。地域のお祭りで出店をやってみる、なじみのカレー屋で週末だけ働いてみる、デスクの消耗品の消費を減らす仕組みを考えてみるなど、チャンスは社内外のあちこちに転がっている。大切なのは、それを実際に実行に移すかどうかだ。本書を読んで、まずはとにかく「小さく始めて」みてほしい。


本書の要点

── 要点1 ──
一生同じ企業で働くことが難しくなったいま、家と会社以外の居場所を持つことは、精神的にも経済的にも重要である。

── 要点2 ──
リスクはゼロにはならないが、最初の一歩を踏み出すときのコストは自分一人の人件費くらいだ。失敗しても経験や実績になる。とにかく始めてみよう。

── 要点3 ──
小さく始めるからこそできることもある。大企業とタッグを組んだり、新しいアイデアを試したりできるのは、スモール・スタートならではだ。


【必読ポイント!】「スモール・スタート」の時代

Photo: "number 52" by Celina Vogel(CC BY-NC-ND 2.0)

家と会社以外の居場所を持つ

大企業の経営悪化やリストラはもはや珍しくなくなった。定年まで勤められると思っていても、思わぬ形で会社と縁が切れてしまうということだ。一生勤められる会社に就職できるかどうかは本人の能力とは関係なく、運次第である。大企業でも中小企業でもそれは同じだ。今後は「会社がなくなったから」という理由で転職を余儀なくされる人も増えるだろう。

また、会社だけに生きがいや居場所を求めると、定年後に何をしていいかわからなくなってしまう。これまでこのような状況は男性のものとして語られてきたが、女性もフルタイムで働くいま、男女共通の問題となりそうだ。

そこで重要なのは、社外のコミュニティに参加することだ。同僚との飲み会や上司とのゴルフをやめ、浮いた時間を社外でのコミュニティ探しにあてよう。家庭でも会社でもない第三の場所、サードプレイスを持つのだ。行きつけのカフェやバー、書店や公園など、居心地さえよければどこでもいい。そこに「お客さん」としてではなく能動的に関わることで、その場所はコミュニティとなる。会社以外のコミュニティを持てば、リフレッシュできるといったメンタル面でのメリットだけでなく、経済的な面でのセーフティネットも得られる。

副業禁止でも始められる

副業を認める企業が増え始めたが、まだ少数派だ。しかし、だからといって立ち止まる必要はない。

会社員が会社以外で働いて報酬を得ると副業になるのだから、報酬をお金ではないものでもらえばよい。たとえば著者は、行きつけの海の家で土日だけ働かせてもらった。その際、労働の報酬として、平日にお客さんとして通うときの交通費と飲食費を無料にしてもらったという。このように、副業禁止であっても"副業的"な活動をすることは可能だ。

阿波踊りには"踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損"という言葉がある。まったくその通りで、どんなことでも見物するよりも当事者として参加するほうがずっと楽しい。まずは小さなことからで構わないので、とにかく当事者になってみたほうがいい。その経験が実績になる。

「自分には、そんなことはとてもできない」と思う人もいるかもしれない。しかし会社員を経験していれば、小さく始めるスキルはすでに身についている。ひとりで何か副業を始めようと思うと、時間の捻出、ギャラの交渉、進捗管理、経理処理など、すべてを自分で行わなければならない。こうした仕事は、会社員として経理や総務、営業などを満遍なく経験した人ならばきっとできるはずだ。縁の下の力持ち的な仕事をしてきた会社員こそ、実はスモール・スタートに向いている。

小さく始める4つのコツ

Photo: "The Office" by Flemming Rasmussen(CC BY-NC-ND 2.0)
スモール・スタートのコツは4つある。

1つ目は、借りより貸しをつくることだ。借りをつくってしまったらすぐ返すという心づもりでいよう。そして常に、借りよりも貸しのほうが多い状態にしておきたい。貸しはめぐりめぐって大きくなり、そのうち自分に返ってくる。慌てて回収しないようにしよう。

2つ目は、「その場で一番いいヤツ」になることだ。会議室やお店でも、電車の中でもどこででもだ。困っている人を助ける、放置されているタスクを片付けるなど、ちょっとしたことでも場の雰囲気は変わる。そうすると、心を開いてくれる人が増えていく。

3つ目は、「ムキムキに鍛え上げた無敵」にならないことだ。味方になってくれない人がいても、完膚なきまでに相手を打ち負かそうとせず、「味方候補」だと考えるようにしよう。強くなるためには、敵をゼロのままキープすることが重要だ。

最後は「青黒く」なることだ。青臭い夢を叶えるためには、腹黒い手も必要になる。スモール・スタートには、青と黒のバランスが重要である。

とにかく始めてみよう

Photo: "_DSC1192" by Loretto-Gemeinschaft(CC BY-NC-ND 2.0)

誰かのためにやってみる

何をすればいいかわからない人は、まず誰かを助けることから始めてみるといい。「手伝ってくれない?」はスモール・スタートのチャンスだ。その理由は2つある。まず、誰かからの頼まれごとをこなしているうちに、それが得意なことになるから。次に、自分のためよりも誰かのためのほうが頑張れるからだ。自分のための料理はつい手を抜いてしまうが、友達を招くとおいしい料理を作ろうとすることと同じだ。それを実行するうえで誰かに何かをお願いするときにも、自分のためでなければ抵抗がなくなるし、図々しくもなれる。

小さく始めるのにうってつけな頼まれごとが、「大事だけれど緊急性の低い仕事」だ。誰もが重要だと思いつつ手つかずになっているので、誰からも反対されないし、むしろ感謝される。

また、それが将来的に武器になる可能性も高い。大事だけれど緊急性の低い仕事はあちこちにある。だから「手伝ってくれない?」と声をかけられる確率が上がる。小さい仕事を積み重ねることで、経験と実績が積み上がっていくはずだ。小さく始めるならば、誰も手を出していないところに目をつけよう。

場所を決めるか、好きなことをやる

やることを選ぶとき、場所から決めるのもいいだろう。著者の本拠地は日本橋浜町にある。そこには昔ながらの住民もいるし、新しくやってきた子育て世代もいる。誰もが知る企業の本社もある。それぞれが交わることはないが、交流したらきっと面白くなるはずだ――そう考え、日本橋浜町に新しいコミュニティをつくることにしたという。

もちろん、自分の好きなことで始めるのもいい。著者が浜町で運営しているブックカフェは、著者がやりたいことを形にしたプロジェクトだ。好きなものだからこそうまくいくし、失敗したとしても後悔は少ない。これはマーケティングベースですすめるプロジェクトと大きく違うところだ。当たりそうだからとやってみてうまくいかなければ、後悔してもしきれない。

リスクは自分の人件費程度

Photo: "Phoenix Public Market Cafe" by Kevin Dooley(CC BY-NC-ND 2.0)

小さく始めるとき、「失敗したらどうしよう」と考えて尻込みしてしまうかもしれない。しかしよく考えれば、リスクは自分一人の人件費くらいのものだ。たとえ失敗したとしても、それは経験として残るし、新たなつながりも生まれる。得るもののほうが大きいはずだ。

小さく始めることは、大きく動く前のリハーサルにもなる。突然バーをオープンするのは無謀だが、知り合いの店の軒先を借りて営業するなら現実的だ。そうしてリハーサルをしておけば、大金をつぎ込んで始めたものがすぐに失敗してしまうことはないだろう。

なお、どんなことでもリスクをゼロにすることはできない。準備が100%整うまで待っていたら何も始められないのだから、まずは小さく始めてみよう。

小さい組織の戦い方

Photo: "Fight" by Thomas Bresson(CC BY-NC-ND 2.0)

大企業と組む

小さい組織には強みがある。まず、大企業とタッグを組みやすいことが挙げられる。小さい組織に対してはガードがゆるくなるし、大企業にとっては競合他社との差別化にもつながるからだ。

また、小さいというだけで好意的な人もいる。人は弱い存在を応援したがるものだ。かつてそうした応援は個人間でしか見えなかったが、いまはSNSで可視化されるようになった。小さく弱い立場であるということは、強さでもあるのだ。

大企業と組むべき理由のひとつに、その懐の深さがある。規模の小さい組織は目先のことを重視することが多く、「小さい組織と組んでも利益が出ない」と考えがちだ。一方、大企業は大局的に仕事をしているので、すぐに結果を求めない傾向にある。さらに、大企業は大儲けができなくても赤字にならなければよいと考えることが多い。だから小さな組織としては気楽に組むことができるし、一度組めばそれを広げることも難しくない。

どこなら広告を出してくれるか考える

仕事をひとつのメディアに置き換えて考えてみると、やるべきことがクリアになる場合がある。たとえばイベントをプロデュースすることになったとして、「一冊の雑誌」を作ることをイメージしてみよう。連載してくれる作家を探すことも重要だが、何より先に決めるべきは、「誰(どの企業)が一番大きい広告を出してくれるか?」だ。そのうえで特集を考える。クラフトビールの企画であればキリンビールが広告を出してくれるかもしれない。こう考えていくと、自分がやりたいことを曲げずにスポンサー集めができる。

出資は難しくても、モノなら提供してくれることもある。料理イベントで使う持ち帰り用の容器を容器メーカーに提供してもらうことはそれほど難しくない。モノや人で助けてもらうこともできると考えると、実際に必要なお金は意外と少ないかもしれない。

会社員のうちに動き始める

Photo: "Michelangelo and the squint." by Neil Moralee(CC BY-NC-ND 2.0)

ライフシフトは50歳で

会社員から他の仕事へシフトするなら、50歳ごろがいいだろう。45歳くらいになると、その後どれくらい昇進できそうかが見えてくる。役員にはなれそうもない、と45歳で気づき、5年間準備して50歳で実行するくらいのプランがいいだろう。

50代は会社員人生で最も給料が高くなる時期だからもったいないという考えもある。しかし、その時期は10年ほどしか続かない。それならば50歳の時点で、80歳まで働ける場所を見つけたほうがいい。定年を迎えてしまってからだと、それまでの人間関係もリセットされてしまっているし、気力や体力がもたない恐れがある。

30代で独立することもできるが、会社員という立場を早々に手放すのはもったいない。日本で仕事をするための技術は、どこへ行ってもそう変わらないものだ。仕事をする上での基本的なスキルを学べる「会社員」という立場を使いつくさない手はない。20代、30代は修業期間と考えて、少しずつ先の人生の準備をしておくのがいいだろう。

本拠地があるうちにコミュニティを探す

会社という本拠地があるうちにこそ、次の本拠地を探しておくべきだ。家と会社以外にいくつかコミュニティを持つと、それまでなかった新しい知り合いができる。それまでにない会話や経験もできる。その中から一緒に事業を始める仲間ができるかもしれない。まずはコミュニティを探し、参加してみよう。居心地が悪ければ別のコミュニティを探せばいい。

コミュニティを持つということは、いつでも行けていつでも帰れる場所を持つということだ。このとき、"常連さん特典"のような、金銭的なメリットが発生しないように注意したほうがいい。借りを作ることにつながり、やがて居心地が悪くなってしまう可能性があるからだ。


一読のすすめ

本書は起業や独立に限らず、「いまここ」以外の新天地を求める人のための指南書だ。要約では「小さく始める」ためのポイントをかいつまんでまとめた。本書ではさまざまな著者の体験談や具体例も紹介されているので、新しいことにはつい尻込みしてしまいがちな人も、楽しく読み進められるだろう。スモール・スタートをより具体的にイメージしたい人には通読を強く勧めたい。

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