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WeWorkのメンバーになって、実際何が変わった? スタートアップ2社に聞いてみた

社員の好奇心が刺激され、帰宅時間は早まり、生産性が1.5倍になったWHITE。他の入居企業とのつながりを活かし、広告宣伝にコストをかけずとも案件が急増、売上が6倍になったBIZVALを取材した。

2018年2月にニューヨーク発のコミュニティ型ワークスペース「WeWork」が、日本初の拠点を六本木にオープンして話題になった。その後も都内に拠点を次々と増やし、横浜、大阪、福岡など地方都市への展開も始めている。

実際のところ、働き心地はどうなのだろうか。入居している2社のスタートアップ企業を訪ねた。

広告事業からイノベーションデザイン事業へ

アークヒルズサウスの拠点に2018年4月から入居している「WHITE」は、博報堂グループのデジタル総合広告会社スパイスボックスの子会社で、大企業の新規事業立ち上げ支援や、デジタルトランスフォーメーションのコンサルティングを主な事業内容としている。

2015年に博報堂グループの3人で会社を設立した当初、まだ事業内容は不明確だったが、「もはや広告事業だけでは世の中に大きな影響は与えられない」という問題意識だけは共有していたという。広告は既存の価値を世に広め伝えるものだが、それでイノベーションを起こすのは限界が来ている。その前段階、つまり事業をつくる過程から携わり、既存の仕組みから変えていく必要があると考えた。それをWHITEでは「イノベーションデザイン事業」と名付け、自ら挑戦することにしたのだ。

とはいえ、創業メンバーは既存の広告事業しか経験がなかった。その得意分野からまずは仕事を得て、1,2年の間に徐々にイノベーションデザイン事業へと転換を図っていった。CEOの神谷憲司は、そのプロセスについてこう説明する。

「まずは各クライアントの案件を体系化して、イノベーションデザイン事業の商品化を目指すプロジェクトを立ち上げました。そのメソッドに必要な要素が、各職種のスキルセットとなります。それぞれのメンバーには『じゃあ君の場合はこういう形に進化していこう』というふうに伝えながら、事業変革を進めてきたのです」

こうして生まれた商品が、大企業向けに提供する「WHITE サービスデザイン ナビゲーター」という90日間の新規事業立ち上げ支援プログラムだ。プロジェクトマネージャーがプロジェクト全体を管理しながら、サービスデザイナー、UXデザイナー、ビジネスデザイナー等が加わり、わずか3ヶ月で大企業の新規事業を一気に組み立てていく。

好奇心が満たされる場に移りたい

WeWorkへ移転した理由も、事業変革と深く関係している。六本木の拠点がオープンしたのは2018年2月で、WHITEが入居したのは4月。他の候補と比較することもなく決断したというのだが、決め手は何だったのか。

当時、事業変革を本格的に進めていたタイミングだったこともあり、神谷がオフィス移転を検討するにあたって最も重視した価値は「好奇心が満たされる場」だった。社内のメンバーだけの閉鎖的な空間から脱して、もっと刺激のある場所を求めていたところ、WeWorkは最適な場に感じられたという。「いままでのオフィスは、いろんなものへの回路が用意されていなくて、好奇心を満たしてくれるようなものが全くなかったんです」。

WHITEの執務室。奥には社内の打ち合わせに使える専用の会議室も設けてあるが、ひとつしかない。そのため、社員同士デスクで簡単な打ち合わせをする機会が増えて、社内のコミュニケーションの量も増えた。その分ひとりで集中したい時には、個室に籠もって作業する社員も多いという。

一人あたりの生産性は1.5倍に!

実際に入居してみて、この8ヶ月間で当初期待していたような変化はあったのか。

一番の目的であった好奇心を助長することは定量的には評価しにくいところがあるものの、「一人ひとりが持つ興味に対して、どんどん前向きになっている印象はすごく感じている」と神谷は語る。

定量的な評価として顕著なのは生産性の向上だ。わかりやすいところでは、全体的に帰宅時間が早くなった。「ここは(執務室がガラス張りだから)他の会社が何時に帰っているかがすぐに見えてしまうので、早めに帰る人が増えたんです」。

会議に費やす時間も減った。以前は社内で打ち合わせを3時間くらいダラダラと続けてしまうこともあったが、WeWorkの会議室はポイントを消費するシステムになっているため、一人ひとりが会議室を取ること自体にコスト意識を持ち始めた。

これらを組織全体の生産性として換算すると、なんと移転前の約1.5倍も向上したというから驚きだ。

社員からのフィードバックでも、移転して働き方が変わったという声は多い。社員同士のコミュニケーションの量が増えたり、社外の出会いが増えたり。なかには、WeWorkによって「会社の文化が変わった」という人までいた。入居企業は、コミュニティエリアを借りて無料でイベントを実施できる。開催情報はWeWorkのアプリで全員に告知されるので、WHITEの社員によると「ちょっと興味あるから行ってみよう」くらいの感覚で気軽に参加でき、新しい出会いや刺激に恵まれているという。

名刺交換の幅はかなり広がったという。いままでだと絶対知り合わなかったような人とも出会える。そして好奇心がどんどん刺激されていく。

入居後、売上が6倍になったスタートアップ

WHITEは40人くらいの社員数でWeWorkに移転したわけだが、もっと少ない人数でオフィスを借りている会社もある。次に話を聞いたのは、日本で2番目の拠点としてオープンした丸の内北口で、3人から入居を開始したBIZVALという、M&Aアドバイザリー及び価値向上支援事業を行っているスタートアップ企業だ。

同社が運営する企業価値診断サービス「BIZVAL」は、ウェブサイトに企業情報を入力していくだけで、わずか1分で企業価値を診断してくれるというもので、2017年12月にローンチしたばかりのサービスである。WeWorkには今年の3月から入居していて、そこでの出会いをうまく活かしながら、順調に売上を伸ばしてきた。第1四半期と比べて、第4四半期の売上は6倍になったという。

いまでこそ「代表取締役 co-founder」の肩書きを持っているが、中田隆三はもともと社長になるつもりなどなかった。フリーランスとして働いていた頃に、コンサル会社の新規事業としてBIZVALは始まった。中田はそのサービス構想の策定から携わり、ウェブサイトの開発をディレクションして、12月にローンチするところまでを、社外のメンバーとして手伝っていた。

しかし、サービスをお披露目した後に契約先のコンサル会社の社長から、『中田さん、この会社自分でやってみたら?』と急に話を振られたという。つまり、新規事業として始めたものをスピンアウトして、中田に経営を任せたいという提案だったのだ。年末に検討を重ねた結果、中田はこの事業の可能性に一度かけてみようという思いに至り、経営を引き受けることにした。

見学後、その場で契約

しばらくは一人だったので、コンサル会社の机を間借りしていたのだが、やがて縁あって共に働いてくれるようになったインターン生と、5月から新メンバーとしてジョインすることになっていた取締役と、一緒に集まって働ける場所が必要になった。そこで今年の3月9日に、オープンしてまだ間もなかったWeWork丸の内北口のオフィス見学ツアーに参加した。

すでに別のコワーキングスペースも見学していたのだが、営業担当のスタンスとしては「あくまでも不動産屋」という印象だった。でもWeWorkはまるで違った。「コミュニティ形成こそ命」というスタンスが貫かれていて、見学ツアーで案内をしてくれたコミュニティチームの担当者の熱量も高かった。約30分間の見学ツアーを終えると、なんと中田はその場で入居を決めた。「テンションが超上がっちゃって(笑)。その場でサインして翌週から入居しました」。

コミュニティ形成に力を入れるWeWorkと、入居者コミュニティの中から新規案件を生み出したいBIZVALは、まさにWin-Winな関係。最初に丸の内北口を担当していたコミュニティチームのメンバーは、現在は全員違う拠点に異動している。ただ中田はBIZVALの事業を丁寧に説明して「どこでも紹介しますよ」という関係性をつくっていたので、いまでは他の拠点に入居している企業でも紹介してくれるという。

入居企業との出会いで事業を加速

もちろんここに決めた理由はそれだけではない。組織の拡大に合わせて間取りを自由に選べるところや、出張が多いので丸の内という立地がよかったことなど、好条件が揃っていた。

コストに関しても、単にオフィスにかかる料金としてでなく、広告宣伝費として捉えていたので、全く気にならなかった。そのため入居後は、認知拡大のためにコミュニティをどう使うかに注力した。「最初からそういうつもりで入っているんで、僕の方からWeWorkのコミュニティチームに紹介してほしい会社の提案とかもしています」。

企業価値診断サイトを窓口に、BIZVALは企業のファイナンス計画の策定から資金調達の支援まで、幅広くサービスを展開している。特にベンチャー企業のファイナンスを一気通貫して支援できることが強みで、会社のステージに合わせてリピートしてくれる確率も高いという。「投資家はよりお金を入れやすく、ベンチャーはもっとお金をもらいやすくなる」。そのためのハブとして機能していきたいと中田は語る。

BIZVALの執務室の向かい側には、山口フィナンシャル・グループが入居していて、BIZVALがアドバイザリー契約をしている企業への投資の可能性について話し合うこともあるという。最近では、大手のコーポレートベンチャーキャピタルによる投資案件が増えているので、そうした担当者ともつながれる。例えば、SOMPOホールディングスや川崎重工、富士フイルムといった大手企業と打ち合わせをする機会も多いという。サムライインキュベートなどのVCも入居している。すぐに形にはならないにしても、何かしら将来的に仕事に結びつく可能性のある企業がこれだけ揃っている。「これがWeWorkの真の価値なんです」。

WeWorkのコミュニティチームに相談する以外にも、新しい人と出会う方法はいくらでもある。入居している企業なら、コミュニティエリアを使ってイベントを無料で開催できる。BIZVALはM&Aセミナーを頻繁に開催していて、中田はそこで参加者と名刺交換をして仲良くなることも多いという。もし会いたい人が明確にいたら、WeWorkの専用アプリから直接メッセージを送ることも可能だ。

メンバーがさらに増えて手狭になったので、入居して2ヶ月後の5月には、この階のひとつ下にある、ひと回り広い部屋へ移った。「『もう移るの?』ってコミュニティチームには驚かれましたが、WeWorkはこの移動の可変性がすごく魅力的ですね。人が増えたらすぐに部屋をチェンジできるので」

WeWorkにいると、意外な形で貴重な出会いに恵まれることもある。昔の知り合いから久しぶりに連絡が来たかと思うと、「WeWorkに興味があるから遊びに行ってもいいか?」という内容だった。会った時に、ついでに自分の会社のことも話したら、それにも興味を持ってもらえて、なんとBIZVALに投資までしてくれたのだという。「そういうこともあったので、ここで広告宣伝費は全然まかなえていますね」。

もともと付き合いのある企業の担当者からも、「WeWorkに行きたい」と言う人は後を絶えない。出会いからビジネスが加速していく場としての魅力は、実際にWeWorkに来てみて始めて伝わることでもあるので、中田自身も積極的に誘うようにしているという。

「M&Aのアドバイザリーをしている上場企業の役員とかでも、ここに呼ぶことがあります。お客様なんで普通ならこちらから伺うべきところなんですが、結局『ビールでも飲みながら話しましょう!』となって、打ち合わせが18時からになることも最近は多いですね(笑)」。

WeWorkの拠点は、都内を中心に地方都市でも続々と増えている。この記事を読んで少しでも気になったら、まずは見学ツアーに申し込んでみてはいかがだろうか。

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