BUSINESS INSIGHTS

紙の情報は共有してこそ価値がある━━新型スキャナーが目指すのは、情報を生かす世界

いま手元にある紙媒体を、捨てるべきか残すべきか。それはデータ化してから決めればいい。紙のまま積み重なれば、その情報は埋もれてしまう。もしかしたらあなたのビジネスや暮らしを変える、価値あるものかもしれないのに。

もし、自分しか持っていない紙の資料を、いますぐ離れたところにいるチームメンバーに共有しなければならないとしたら、どんな方法があるか。

ドキュメントスキャナーがあれば便利だが、これまで電子化された情報は、いったんパソコンに保管して、メールを送ったりクラウドに上げたりする手間があった。これが億劫で、紙の情報共有はつい後回しにしがちだ。

ところが、最新のドキュメントスキャナー「ScanSnap iX1500」によって、その煩わしさは解消された。データは、EightやEvernote、Dropboxなどに直接保管される。タッチパネルが搭載されたので、パソコンを操作する必要はない。

これまで1台につき1つだったライセンスは4つに増え、チームで共用する場合でも、一人ひとりが普段共用しているアプリケーションに保管されるように設定できる。

スキャナー1台でできることの幅は格段に広がった。だからこそ、業務の効率化だけではなく、これからのワークスタイルのヒントがつまっているに違いない。

今回は、ScanSnapのエバンジェリスト 山口篤と、Sansan(Eightの運営会社)で、人脈データを解析しイノベーションの可能性を探る西田貴紀が、スキャンとデータ活用の新たな価値を探求する。

埋もれた紙の情報は無価値に等しく、活用しないと意味がない

山口 そもそもスキャナーというものは、やるべきことがほぼ決まっています。紙の情報をデータとして取り込むためのものですから。ただ「ScanSnap iX1500」がこれまでのスキャナーと違うのは、スキャンした後にデータを活用することまで考えられているところです。

西田 Eight以外にもさまざまなアプリケーションと連携しています。これまでは、スキャンしてイメージデータにするだけで終わってしまうケースが多かったのでしょうか?

山口 スキャンしてアーカイブして安心して終わり。それがいままでのスキャナーでした。しかしデータは活用しないと意味がありません。人が面倒くさいと思って後回しにしがちな、データ化から活用に至るまでの最初の一歩を、ドキュメントスキャナーが改善できるのではないかと考えています。

「せっかくスキャンをしても、そのデータを活用できるようにしなければ、紙が押入れで埋もれているのと同じこと」と山口は言う。

行動の導線上にスキャナーがあればチームが変わる?

西田 そもそも紙のデータをスキャンすること自体を面倒くさいと感じている人もいると思いますが、実際にオフィスでは、どのようにこのスキャナーを導入するといいのでしょうか。

山口 一人ひとりの導線上にスキャンポイントがあるような置き方をお薦めしています。オフィスでスキャンをするならMFP(プリンター複合機)でいいという意見もありますが、それではコピー機がある場所まで歩いて行く必要があります。一度で済ませたいから、スキャンするものをまとめ、時間をつくり、コピー機まで持っていく。忙しく働く中でそれは億劫です。それにMFPではフォルダの指定やクラウドへの移動など、スキャンをした後の作業が多くて手間がかかりますよね。しかし「ScanSnapiX1500」なら、こうした作業も含めてボタンひとつに設定できるので、ボタンをタップしてスキャンをするだけで済んでしまいます。

コピー機が離れたところにあると、行くだけでも時間を取られるし、場合によっては並ぶこともある。それがデータ化を後回しにしてしまう要因になるから、5〜6人のチームに一台置くなど、一人ひとりの動く導線上にスキャンポイントがあるようなレイアウトにすると良いという。

西田 その導線が保たれて、誰でもすぐにスキャンができる環境が実現したら、働き方やチームがどう変わりますか?

山口 シェアオフィスやフリーアドレス、在宅勤務や時短勤務など、いまは場所を決めずにどこでも仕事ができます。だからこそ世界で一枚しかない紙の情報を、紙の状態のままシェアするのは難しい。例えば私しか持っていない紙を、私が休んだことで誰も見れなければ、チームのビジネスはストップします。それでは時間を無駄にしてしまう。しかし、スキャナーがあれば瞬時に共有できるので、ビジネスは効率よく進むでしょうし、チーム間のコミュニケーションも活発になるでしょう。

西田 ところで、「ScanSnap iX1500」には資料や名刺などを自動で判別して振りわける機能がありますが、どのような意図からこの機能を開発されたのですか。

山口 仕分ける作業をしたり、スキャンする必要かあるかどうかを悩む時間がもったいないという思いがありました。捨てる、残すの選択は、データ化した後に考えればいいのです。紙をまとめて置いてボタンをタップするだけで自動で仕分けるので、億劫に感じることもないし、こまめにスキャンをしやすくなるので、書類や名刺を溜め込んでしまうことも改善できると思います。

新機能の一元管理をしているのが、ScanSnap専用の新しいソフト「ScanSnap Home」。4つのコンテンツ(写真、名刺、レシート、A4文書)のサイズを検出し、しかるべきフォルダに振り分け、原稿に記載されている文字からファイル名を自動で生成する。現在はフィンテック系クラウドの含めて16程度のアプリケーションと連携している。

スキャンした膨大な名刺データから生まれたアプリケーション

西田 データの活用という意味では、私たちの研究はスキャナーで取り込んだ名刺のデータが存在するからこそ成り立っています。そこで今回は、これまで名刺をデータ化してきたノウハウをもとに、ユーザへのサービス向上のために私が開発に携わった2つのアプリケーションをご紹介します。

まずひとつは「バーチャル組織図」というものです。名刺をスキャンすることで、その人の働き方が見えるのではないか、という考えから作られたものです。

例えば、営業部の人は広告会社に営業に行きます。一方で、マーケティング部の人は同じ広告会社にプロモーションの依頼をします。だから同じような名刺を持っているはずです。営業とマーケティングでは、仕事内容は違いますが、広告という同じナレッジが見えてくる。すなわち彼らは、部署をまたいで同じナレッジを持っている社員たちとしてくくることができるのです。

どういう場面で役に立つかというと、例えば、A社と関係性を発展させた営業部の人が、人事部に異動になったとしましょう。後任で営業部にジョインした人がA社にアプローチしたいときに、「バーチャル組織図」を見れば、「同じ営業部内の人よりも、実は人事部のあの人に聞いた方が早い」ということが一目でわかります。

西田はR&Dという部署の所属で、R&Dの人間として会社では認識されている。しかし実際の仕事は人事部など部署をまたいでチームを組むという。こうした実際に活動しているチームの情報を名刺を通して明らかにしていくのが「バーチャル組織図」だ。

山口 つながりを可視化することで、どういうタッチポイントでつながっているのかがわかると。ここに個人のスキルや残業時間が加わるとより良いですね。部署間の異動も効率的にできそうです。

西田 はい。同じようなつながりを持っている人は、同じような能力を持っていることが多いので、退職した人の後任を社内で探すときなどにも利用できるかもしれません。

もうひとつご紹介したいのが「ビジネスマンタイプ分析」です。取り込んだ名刺から、その人がどういう人かを分析するアプリケーションです。「バーチャル組織図」が名刺情報を利用しているのに対し、ビジネスマンタイプ分析は、スキャンをするタイミングに注目しました。

例えば、私が今日、山口さんからいただいた名刺をスキャンします。その後で、一緒に来ている他のスタッフもスキャンをします。すると似たタイミングで同じ名刺を取り込んだことになり、その情報から、おそらく同じ会議に参加していて、同じ仕事をしていることがわかる。こうしたデータから、社内のネットワークを描くことができる。すると、つながりの多い人や、チーム間のハブになっている人なども見え、組織のキーマンを探すことができるのです。

タイプごとに、例えばその会社の中でその人しか持っていない名刺を持っている人は「開拓者」、いろんな業種の名刺を持っている人は「イノベーター」、役職の高い人の名刺を持っている人は「大御所」など、名前もあるんです。このアプリケーションができてから、私は、名刺が増えるたびに、自分はどのタイプに変わるのかと、スキャンをするのが楽しみになりました。社内にいる、自分と同じタイプや真逆のタイプも分析できますし、半年前の自分との比較や同僚のタイプも見ることができるようになっています。

名刺情報は社外の人脈の可視化だでなく、社内のネットワークも描くことができる。

山口 新しく戦略的な部署をつくるときのチームビルドって難しいじゃないですか。例えば、適任の人がいるけれどいまの仕事が忙しくて負荷がかかりすぎるとか。こうした課題も、名刺のデータを使って解決できるかもしれませんね。日本ではいま、終身雇用という形が崩れつつあります。人は働きがいを求め、自分の存在意義やポジションを明確にしようとする。だからこそデータの可視化が役立つと思います。

西田 私たちが目指している究極の形は、出会いのデータベースです。紙の名刺がない社会になったとき、僕らのサービスが発展する鍵は、face to faceの出会いの解析にあるのではないかと。例えば、御社と当社の持つナレッジが異なるように、ネットワークの場所が変わればそこに存在する情報も違う。その情報をどう掛け合わせたら、新しいイノベーションが起きるのか、どこに流したら広く世の中に広がるのかということを、「イノベーションをここから生み出す」というビジョン掲げて、研究しています。

山口 もはや、名刺という分野を超えた、ヒューマン的なアプローチですね。

目指すのは、ペーパーレス社会より情報が埋もれない世界

西田 デジタル化が進み、ScanSnapやEightのようなサービスがさらに進化していくと、紙が存在する必要性を問われるときがくると思います。御社は、ペーパーレスの社会を目指していらっしゃるのでしょうか?

山口 いいえ。今後われわれが叶えたい未来がペーパーレスの社会かというと、決してそうではありません。紙の良さもあると思っていますから。

西田 紙の良さって何だと思いますか?

ボーンデジタルの社会を目指しているわけではない、と語る山口。紙で存在する方が良いものもあるという。

山口 例えば、文書の文字校正をするとき、モニター上では見つけられなかった誤字を、紙に印刷して確認したら見つけられた、という経験はありませんか? それに会議や商談などで、相手によってはパソコンやスマホを使いづらい環境もまだまだあります。そんな時に、紙ならメモを手軽に書き込めるし、手元にあればパッと渡せる。紙の方がオペレーション上、都合が良いこともあるのだと思います。

紙だからこそ良いものもありますね。憧れの人の名刺は、データ化しても紙の状態で保管しておくと思うんです。 デジタルの名刺データでもらっても、それではtwitterのアカウントをフォローするのと変わらない。物理的な物を持つという所有感は別ものですよね。だって、アイドルのサインが入った写真集をスキャンしたから原本は捨てるかというと、それは違いますよね(笑)。自分にとって特別感があって、世界にひとつしかないものは、オフラインでしか表現できないものが多いような気がします。

私たちはペーパーレス社会の良し悪しよりも、情報が共有されないことが良くない、と思っています。紙の中にある情報、スキャンしたデータそのものの価値を共有し、上手に活用できる社会が、私たちの目指す未来ですね。ただ、情報をデータ化して活用するまでの間に、スキャンをするしないで悩むのは時間の無駄です。だからまずは気軽にスキャンをして、紙を残しておくかどうかはその後考える。その社会をつくる第一歩を「ScanSnap iX1500」が担えると思っています。

ScanSnap