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要約『組織にいながら、自由に働く。』:著者・仲山進也が楽天で実践してきた「加減乗除の法則」とは

この本で得られるのは「組織にいてもいなくても」自由に働ける人になるための方法論である。ただし人によって取るべきアクションは異なるため、著者が独自に編み出した「加減乗除」という4つのステージに分けられている。あなたはいまどのステージにいるだろうか?

これからの働き方のバイブル──BNL編集部の選定理由

昨年6月にBNLでインタビューしたときに着目したのは「際者(キワモノ)」としての仲山進也の特殊な働き方だった。

これまで多くの人が大切にしていた社内での評価やマネージャーの肩書きといったものを捨てた仲山は、何よりも楽天市場のお客さんと接することを大事にしてきた。あえて会社の中心ではなく〈際〉に居続けた。それによって、社内では次第に「浮いた存在」になっていったという。

でもそれだからこそ、社外で多くの貴重な出会いに恵まれ、「仲山にしか成し遂げられなかった」と言われるような仕事をいくつも成功させてきた背景がある。

「組織にいながら、自由に働く」というメッセージは、ひと昔前なら、ほとんどの人にとって縁の遠いものにしか映らなかっただろう。しかし、ここ数年のうちに「人生100年時代」と謳われるようになり、もはや転職は当たり前、「複業」という働き方まで広まりつつあるなかで、仲山のワークスタイルにいま多くの注目が集まっている。

「加減乗除の法則」としてその考え方をまとめた本書は、キャリアに迷ったとき、いつでも参照できるように手元に置いておきたい、これからの働き方のバイブルである。

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要約者レビュー

本書の著者の肩書きは、きわめて珍しいものだ。楽天の正社員でありながら、兼業自由、勤怠自由の立場にある。そのうえ、自分の会社を経営しているだけでなく、横浜F・マリノスとプロ契約までしていたという。「ふつうの働き方」をしている人にとっては、どこの世界の話なのかと面食らうこと必至だ。

いったいどんな働き方をしているのか──そう思って本書を読むと、やはり常識外れとも思えるような働き方をしている。しかし読み進めるうちに、著者のような働き方など夢物語にすぎないのではないかという思い込みは、見事に崩れることとなった。そして本書はきっと「自由な働き方」を求める読者にとってのすばらしいガイドになるだろうと確信した。なぜなら、著者のような自由な働き方を実現するための道のりやノウハウが明瞭に語られていたからだ。

著者は、自由に働くための方法論を「加減乗除の法則」と名付けている。その方法とは、働き方を4つのステージに分類し、「加」のステージからはじまって「除」のステージをめざすというものだ。本書では、それぞれのステージにおいてやるべきことは何か、そしてどうすれば次のステージへとステップアップできるのかが、著者の実体験を交えて詳細に説明されている。

おそらく「除」のステージにたどり着くには相当の時間がかかるだろう。しかし、心配無用だ。本書が「自由な働き方」を求めるすべての読者にとって、「除」のステージにたどり着くための灯台のような存在となってくれるに違いない。


本書の要点

── 要点1 ── 働き方には、「加減乗除」の4つのステージがある。最終形態である「除」こそが自由な働き方の理想形だ。

── 要点2 ── 「加」のステージでは、仕事の難易度をチューニングしながらできることを増やしていく。

── 要点3 ── 「減」のステージでは、「やりたくて、得意で、喜んでもらえる仕事」だけを選び、強みを磨く。

── 要点4 ── 「乗」のステージでは、メインの強みで突き抜けるとともに、自分の強みと他者の強みを掛け合わせる。

── 要点5 ── 「除」のステージでは、メインの強みを軸として複数のプロジェクトを同時進行させる。


働き方の4つのステージ

理想型は「除」

働き方には、「加減乗除」の4つの形態がある。「加」からはじまり、「減」「乗」とすすんでいく。最終形態である「除」は自由な働き方の理想形だ。

4つのステージの概要は、次のとおりだ。

「加」:ニガテなこともやりつつ、量をこなしてできることを増やすステージ。仕事の報酬は「仕事」。

「減」:好みでない作業を減らして、強みに集中するステージ。仕事の報酬は「強み」。

「乗」:磨き上げた強みに、別の強みを掛け合わせるステージ。仕事の報酬は「仲間」。

「除」:ひとつの作業をしていると複数の仕事が同時に進むようにするステージ。仕事の報酬は「自由」。

要約では、それぞれのステージにおける働き方について紹介していく。

「夢中」になれるようにチューニングする

仕事のモヤモヤには、「不安」と「退屈」の2種類がある。能力を超えた挑戦をしているときは「不安」になり、能力が高いのに挑戦しないと「退屈」になってしまう。一方、挑戦と能力のバランスが取れていると、人は「夢中」になる。

不安であったり、退屈であったりする状態に慣れてしまってはいけない。「仕事なんてそんなものだ」と思うかもしれないが、そんな割り切り意識はいっそうモヤモヤを濃くする。どこかで燃え尽き症候群になってしまいかねない。

では、どうすれば夢中になることができるか。「挑戦」の重圧がネックになってパフォーマンスが下がってしまっているなら、一時的に目標を下げてみるのがいいかもしれない。ただ、挑戦を避けてしまうと、やっていることに飽きてしまい、やがて退屈してしまう。

だから、基本的には「能力」を高める方向性で考えてみよう。本を読んだり、繰り返しチャレンジしたりすれば、「能力」を高めて「夢中」に近づくことができるだろう。

また、高すぎる目標を下げるまではいかずとも、自分で小さな目標を設定し、それを達成するのもよいだろう。これを「難易度のチューニング」という。

このようにして、自分が常に「夢中」の状態でいられるように挑戦と能力をチューニングし続けよう。

Photo: "Tune it in 96/365" by Mike Hoff (CC BY-NC 2.0)

仕事を因数分解する

ひとつの仕事は、さまざまな作業が合わさってできている。好みの作業もあれば、好みでない作業もあるだろう。仕事を楽しくするためには、仕事のうちの「好みでない作業を減らすこと」と「好みの作業を増やすこと」がキモとなる。

たとえば著者の「好みでない作業」としては、人前で話すことや、知らない人と話すこと、電話することなどが挙げられる。あるとき、そんな著者が講座をつくり、参加者を募集し、開催することになった。人前で話す作業は好みでないが、人前に出ること自体は避けようがない。そこで著者は、「参加者が話しやすいお題をつくる」という選択をすることで、人前に出るものの、話すことを極力避けることに成功した。お題を考える作業は、むしろ好みの作業であるという。

このように、好みでない作業を減らし、好みの作業に置き換えていくようにチューニングしよう。そして、好みでない作業からは全力で逃げることだ。まずは自分の好みを把握するため、好みの作業を好みでない作業をそれぞれ書き出してみるとよい。

「ポジティブ動機3点セット」を揃える

働く動機として、(1)楽しさ、(2)社会的意義、(3)成長可能性の3つが揃うと、仕事が楽しくてしかたがなくなる。

たとえば著者は以前、あるお客さんからお礼のメールを受け取ったことがあった。そのメールがうれしくて、どんどん仕事にのめりこんでいったという。本書では、こうした「お客さんからのありがとう」を「魂のごちそう」、略して「たまごち」と呼ぶ。著者は「たまごち」ほしさにいくらでもがんばれる状態になっていったのだ。

この事例では、「たまごち」が(1)社会的意義に該当する。そして「たまごち」をもらえることが(2)楽しさになり、いつの間にか成長しているという(3)成長可能性の3つが自然と揃っていたといえる。

「夢中3条件」に該当しない仕事を捨てる

「減」のステージでは、「加」のステージで培ったものを強みとしてさらに磨いていくため、不要なものを捨てる。不要なものとは、いわゆる「仕事の常識」というものたちだ。

捨てる仕事は、次の3つを基準に選別する。

1つ目は、やりたいこと。その作業を楽しいと思うかどうかだ。

2つ目は、得意なこと。自分の強みを発揮しているかどうかである。

3つ目は、他人に喜ばれること。利他的価値のあることかどうかだ。

この3条件のうち、1つでも欠ける仕事は、やめたり手放したりしよう。「加」ステージで増やした仕事のうち、やりたくて、得意で、喜んでもらえる仕事に集中していく。減らすことで強みを磨き、自由を得よう。

「変人」はほめ言葉と心得る

「やりたくて、得意で、喜んでもらえる仕事」を選んだあとに起こるかもしれない問題がある。それは、お客さんには喜んでもらっているが、社内で評価されないという問題だ。

しかし、気にすることはない。なぜなら本当に評価されたいのは上司ではなく、お客さんだからだ。上司の評価とお客さんの評価が両立できないなら、上司の評価は捨ててしまおう。

すると多くの場合、「変人」というレッテルを貼られるようになる。こうなればしめたものだ。なぜなら、その評価を受け入れてしまえば、やりたいことをやりやすくなるからだ。「変人」をほめ言葉だと思えるかどうかが、自由な働き方をゲットするかどうかの分かれ道だといえよう。「あいつは管理しないほうが仕事する変なヤツだから、遊ばせておけ」と思ってもらうことをめざそう。

メインの強みで突き抜ける

「乗」のステージでは、突き抜けた人たちとチームを形成するとともに、自分の強みに磨きをかけることをめざす。複数の専門分野をもち、それぞれを強みとして掛け合わせることで希少性が高まり、独創的な存在になることができるだろう。

まず、ある分野でナンバーワンになるために、メインの強みを伸ばす。ここで気をつけたいのは、いろいろな強みではなく、メインの強みに注目することだ。「○○と言えばあの人」と言われるような、「旗が立った状態」になるまでメインの軸の強みを伸ばそう。突き抜けないままに手を広げようとすると、どれも中途半端になってしまう。

著者はこれを「タンポポの綿毛理論」と呼んでいる。想いという「種」からメインの強みという「軸」が伸びていて、そのメインの軸を突き抜けた先に、他のいろいろな強みである「綿毛」が広がっていくというイメージだ。

Photo: "untitled" by rosemary* (CC BY-NC-ND 2.0)

目的・動機・価値観をさらそう

自分の強みに磨きかけつつ、自分の強みを他者の強みを掛け算して「共創」をしていこう。その成否は「チームづくり」が握っている。

チームづくりの第一歩は「心理的安全性」を高めることである。要するに、安心して自分の意見を言える関係性を築くことだ。空気を読み、言いたいことがあっても遠慮してしまうような状態ではいけない。

心理的安全性を高めるには、相互理解を深めることが重要だ。とはいえ、相手がどんな動機で何を目的にしているのか、あるいはどんな価値観を持った人なのかがわからないうちは、本音で話すことははばかられるだろう。そこでまず自分から「目的・動機・価値観をさらす」ことが有効となる。

例として、著者の上司である楽天の三木谷さんがヴィッセル神戸の新しいオーナーになったときのエピソードを紹介しよう。著者は、ヴィッセル神戸のメンバーが不安を抱いているのではないかと考えた。何しろ、それまで神戸市役所からの出向者メインで経営されていた会社だったのに、バリバリのベンチャー社長である三木谷さんが社長に就任したのだ。価値観が異なるあまり、言われることの意味がわからない可能性もある。そこで、フロントスタッフ向けに「『三木谷浩史ってどんな人?』講座」を開いた。講座には、創業ストーリーから楽天の理念、行動規範、そして「三木谷さんあるある」を盛り込んだという。結果、心理的安全性を生み出すことに成功した。

一番の強みを軸として「統業」する

最後は「除」のステージだ。「乗」のステージでさまざまな人とチームを組んで仕事をするなかで、仕事が増え、気付けばどれも中途半端になってしまっていないだろうか。「加」で増やし「減」で減らした仕事が、「乗」でまた増えている。「除」は、再び仕事を減らすステージだ。

「除」のステージでは、作業をひとつやれば自分の関わるすべてのプロジェクトを同時進行させられる状態をつくる。たとえば、「5」の作業が一番の強みで「3」の作業も得意だとしよう。その場合、「5」の倍数の「50」や「100」のプロジェクトだけを選び、「3」の倍数の仕事は断るのだ。そうすれば、「50」の仕事をしていても、「5」の強みは自然と磨かれていく。また「100」の仕事も同時に進むだろう。これを「統業」という。

統業するにあたっては、複数の仕事を「メインの強み」でくくって片づけつつ、全体をシンプルにしていくための視点やプロセスが求められる。

複数の仕事をつなげる

複数の仕事を「シングルタスク風」に片づけよう。たとえば著者は、ウェブメディアでネットショップ系の記事を連載するというオファーをもらった。実は本の執筆は、緊急性の低いタスクとして後回しにし、手をつけられていなかった仕事だ。本1冊を一気に書くのは大変だが、ウェブ連載であれば締め切りごとにアウトプットできる。著者は、ウェブ連載の仕事を受け、それをまとめて本にすればよいと考えたのだ。

ウェブ連載を書くことによって、本の半分ほどのボリュームとはいえ、本の原稿を書き進めることができた。また、原稿を書くことによってふだんの講演の内容もブラッシュアップされた。楽天関係者以外に「楽天市場に魅力的なお店があること」を知ってもらうことができ、社外広報にもつながった。楽天の他部門の社員が記事を読むことで、社内広報にもなった。そして、新たな仕事を獲得することもできたのだ。

このように、仕事と仕事のつながりをうまく設計することで、シングルタスク風に複数の仕事を進めることができたという。ポイントは、「自分が提供している本質的な価値は何かを自覚すること」と「つながり方を俯瞰的かつ中長期的にデザインすること」だ。


一読のすすめ

要約では「加減乗除の法則」の各ステージから一部のトピックスのみを取り上げてまとめてある。本書にはそのほかにも、大好きなサッカーの仕事をゲットした経緯や、会社の中でどのように生きていくかなど、大いに参考になる話が満載だ。何度も読み返して実践すれば、著者のような「自由な働き方」に着実に近づけるだろう。

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