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要約:『お茶の科学』━━ お茶博士が最新研究で解明する「おいしさ」の秘密

お茶研究50年の著者が語る、奥深きお茶の世界。「色・香り・味」、そして「うま味」の正体を科学的な観点からひも解く。

茶殻もいただく「お茶のフルコース」でおもてなし──BNL編集部の選定理由

ごく普通の煎茶が、淹れ方次第でまるで玉露のような味わいになる。二煎目、三煎目でお湯の温度と淹れ方を変えれば、渋みやうま味が加わり、また違った味わいが楽しめる。

その詳しい方法が本書のプロローグで紹介されている。もしまだ、急須でお茶を淹れることに馴染みが薄ければ、ぜひ試してみて欲しい。きっと「お茶はこんな味だったのか!」と驚くはずだ。

しかしBNLお茶特集も、もう終盤。今回は応用編として、三煎目まで飲んだ後の楽しみ方に注目しよう。

まず、醤油を少し(好みの量)入れて食べてください。これは「茶殻のお浸し」です。次に、茶殻におかかやジャコ、ごまを入れて、さらに醤油を少し加えて混ぜると、「茶殻のごま和え」となります。これはお酒のつまみでもいけるおいしさです。

さらに残った茶殻に、今度は豆乳200mLとりんごジュース200mLを加えてミキサーにかけます。すると、「茶殻スムージー」の完成です。騙されたと思って飲んでみてください。クセのない、とても飲みやすい健康ドリンクに生まれ変わります。

本書「はじめに〜お茶の本当のおいしさを知っていますか?〜」より抜粋

お茶は、抽出して飲むだけでなく、残った茶葉まですべて食べることができるのだ。まさに「お茶のフルコース」である。

さらにその魅力は、味だけではない。抽出したお茶には栄養が3割程度しか含まれておらず、食物繊維やビタミンEなど残りの7割は残った茶葉に含まれているという。つまり、茶殻まで全て食べることで、お茶の栄養を余すことなく摂り入れることができる。

来客時にせっかくお茶を淹れるなら、最後は茶殻の「お浸し」や「ごま和え」も加え、「お茶のフルコース」でおもてなしをしてみてはいかがだろう。「体に良いそうですよ」などと雑談も挟めば、そこでまた新しいコミュニケーションが生まれるかもしれない。

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要約者レビュー

日本で、お茶は、日常の中に当たり前のように溶け込んでいる。しかし、緑茶・紅茶・ウーロン茶がどれも同じ茶樹の葉からできていることや、その歴史が5000年以上もあることなどを、知らない方も多いのではないだろうか。

本書には、お茶に関するありとあらゆることが書かれてある。なぜ同じ茶葉から異なる色・香り・味のお茶になるのか。製造過程にはどんな秘密が隠されているのか。お茶はどうやったらおいしく淹れられるのか。次々に、知っているとお茶をもっと楽しめる話題が登場する。そして、どれについても、なぜそうなるのか、という科学的バックグラウンドが詳しく解説されているのが本書の特長である。

たとえば、お茶を毎日飲むと健康に良いと、昔から言い伝えられているが、本書を読むと次のようなことが整理されている。実際に、茶葉にはビタミンやミネラル類を初め、様々な成分が含まれていることがわかっており、緑茶は「栄養の宝庫」といわれている。代表的なお茶の成分であるカテキンは、摂取後3~4時間で体から出ていってしまうため、カテキン由来の効果を持続的に得るには、こまめにお茶を飲むことが大切なのだ。

お茶を50年以上にわたって研究している著者は、本書の冒頭で、とっておきの緑茶の楽しみ方である、「お茶のフルコース」を紹介している。普通の煎茶が玉露のような味わいとなり、しかも茶葉を最後まで味わえるという驚きの楽しみ方だ。この方法を知るためだけでも、本書は読むべき価値があるといえるだろう。


要点

── 要点1 ──
お茶には緑茶・紅茶・ウーロン茶と様々な種類があるが、どれも同じ茶樹の葉からできたものだ。製造過程の違いで、茶葉がそれぞれに変化し、異なるお茶となる。

── 要点2 ──
お茶の歴史は古く、中国ではおよそ5400年前には飲まれていたという。西暦1600年頃にはヨーロッパで紅茶文化が花開き、やがて紅茶が世界中に普及していく。

── 要点3 ──
お茶の味の決め手となっているのが、カテキン、アミノ酸、カフェインだ。これらは、健康にも良い作用をもたらす。

── 要点4 ──
お茶には、それぞれ正しい淹れ方がある。それを守ることで、お茶を格段に美味しく飲むことができる。


【必読ポイント!】 お茶の種類と歴史

Photo: "3rd day -BoSeong Green tea farm." by Byoung Wook - Toughkid Kim 김병욱(CC BY-NC-ND 2.0)

お茶とはなにか

お茶は、世界中でもっとも多く飲まれている嗜好飲料のひとつだ。お茶には、緑茶、紅茶、ウーロン茶などがあるが、もとは同じ茶の葉からできている。茶の樹はツバキに似た植物で、植物としての表記は「チャ」、学名は「カメリア・シネンシス」という。原料は同じだが、作り方の違いで、色も味も香りもまったく異なるお茶ができあがるのだ。

日本でお茶といえば緑茶だが、世界においては紅茶を意味している。世界での茶の生産量の7割を紅茶が占めており、日常的に緑茶を飲む国は、主に日本・中国・ベトナム・ミャンマーに限られている。ウーロン茶は中国本土ではなく、台湾で主に飲まれている。

お茶を製造法により分類すると、「非発酵茶」の緑茶、「半発酵茶」のウーロン茶、「発酵茶」の紅茶、「後発酵茶」の黒茶など、というふうに4つに分けることができる。ここでの「発酵」とは、一般的な微生物による発酵とは異なり、茶葉に水や酸素が加わることで化学反応が起こることである。

非発酵茶である緑茶には、玉露・煎茶・番茶・ほうじ茶・抹茶・釜炒り茶と様々な種類があるが、これらは製法の違いによるものだ。たとえば玉露は、最初に収穫される一番茶を、栽培するときに一定期間太陽光を遮って育てる。そうすることで、茶葉の中で、うま味成分のアミノ酸が増え、渋味のもととなるカテキンが少なくなるのだ。

半発酵茶であるウーロン茶にも、品種や発酵度の違いで様々な種類がある。ウーロン茶のシェアの半分を占めるのが「水仙」、台湾茶の代表が「凍頂烏龍」、中国の福建省で作られる「鉄観音」などだ。

発酵茶である紅茶は、その香りに魅力がある。発酵時間を長くすると濃い色になるが香りが弱まり、発酵時間が短いと香り高くなるが薄い色になる関係にある。インドのダージリンとアッサム、中国のキームン、スリランカのウバで生産されるものが、世界四大紅茶といわれている。

お茶の歴史

お茶は中国の史書によると、およそ5400年前から存在していたようだ。当初は薬として重用されていたが、三国時代には飲料として飲むようになった。その後、隋の時代には広く庶民にも浸透し、栽培技術や製造法も発展していく。

1600年代になって、お茶はヨーロッパに渡り、紅茶が注目されるようになる。清の時代にお茶がヨーロッパへ大量に輸出されるようになると、イギリスを中心に紅茶文化が花開く。支払いに用いていた銀が底をついたイギリスは、アヘンを輸出して銀を取り戻すが、このことが発端となりアヘン戦争が勃発した。その後、戦勝国のイギリスとドイツは中国茶貿易の実権を握り、紅茶以外の中国茶は次第に衰退していった。19世紀初頭には、イギリスの支配下にあったインドのアッサム地方でも茶樹が発見され、紅茶は大量に生産されるようになった。

中国茶の生産は、中華人民共和国の設立以降、再び活況を呈し、台湾ではウーロン茶の生産が盛んになっていった。

茶樹の植物学的なルーツをたどると、チャの原木ではないかという樹が今でも中国に生息している。現在のところ世界最古といわれている茶樹は、なんと樹齢3200年だという。

日本の茶樹のルーツについては、もともと自生していたという説と、中国から持ち込まれたという渡来説がある。DNA解析によると、現存する日本のチャの在来種は、どれも遺伝的にはよく似ていることがわかっており、渡来説を裏付けるように思われるが、まだ両説の決着はついていない。

茶葉がお茶になるまで

Photo: "Sencha Tealeaves" by Christian Kaden(CC BY-NC-ND 2.0)

緑茶の作り方は、次のような工程になっている。新芽を刈り取った後、摘んだ茶葉を、できるだけ早く熱い蒸気の中で蒸す。この過程は、殺青(さっせい)と呼ばれ、酵素の働きを止め、緑色を保持するためにある。そして、攪拌しながら揉んで水分を飛ばす。熱風を当てて回転させながら、葉を細く丸めて形を整えたのが荒茶となる。この荒茶をさらに乾燥させ、品質を一定になるようにブレンドさせて製品化されたのが緑茶だ。

紅茶は、一般的に手摘みで新芽を摘み取る。茶葉は、一晩放置して萎れさせ、水分を蒸発させる。この、萎凋(いちょう)という過程によって、茶葉が化学変化を起こし香りが高まる。この茶葉に圧をかけ、繊維をこわしながら揉むことで発酵が進む。かたまりになった茶葉をほぐし、ふるい分ける。発酵室で茶葉を広げて数時間放置した後、高温熱風で乾燥させたものが、荒茶となる。その後放熱させ、ブレンドすると紅茶となる。

半発酵のウーロン茶の生産工程の特徴は、摘んだ茶葉を天日干しすることと、発酵を途中で止める工程だ。この天日干しが、香気成分を高めていると考えられている。


お茶の科学

Photo: "Cold weather, warming tase" by Dmitry Fablov(CC BY-NC-ND 2.0)

色のひみつ

同じ茶樹から作られるお茶でも、緑茶は爽やかな緑色で紅茶は鮮やかな赤色である。なぜこのような違いがあるのだろうか。

緑茶の緑色の色素のもとは、葉緑素(クロロフィル)だ。収穫した茶葉は、酸化して変色するため、すぐに蒸すことで酸化酵素の働きを止めている。光を遮って育てる玉露の茶葉は、光合成の量を保とうとして葉のクロロフィルが増える。そのため、できあがったお茶は、玉露特有の色鮮やかな緑色となる。

紅茶の色のもとになっているのは、ポリフェノールの一種であるカテキンだ。カテキン自体は無色無臭だが、酸化反応によりカテキンの酸化重合物が生成されて、赤い色がつく。半発酵茶であるウーロン茶の発酵は、茶葉の組織の破壊が少ないため、酸素が少ない状態で進行する。そのため、できあがる着色物質は紅茶と異なるので、紅茶と同じ色にはならない。ウーロン茶の色は、淡い黄色から褐色に近いものまで様々ある。

香りの紅茶、味の緑茶

お茶の香りは、無数の香気成分が複雑に絡み合って形成される。特に紅茶の香気成分は、判明しているだけでも300種類あるが、すべて混ぜ合わせても同じ香りは生成できない。つまり、実際には、紅茶の香りにはこれ以上の多くの香気成分がかかわっているようだ。

一方、お茶の味を決めているのは、アミノ酸のうま味、カテキンの渋み、カフェインの苦みの3つである。これらは緑茶・紅茶・ウーロン茶のどのお茶にも含まれており、この3つの割合が異なることで、お茶による味の違いが生じてくる。

うま味成分であるアミノ酸が最も多いのが緑茶だ。上級茶ほどアミノ酸の含有量が多く、反対に渋みのカテキン量は少ない。紅茶の味を決めているのは、おもにカテキン類だ。これがパンチの効いた渋みや重厚な風味を形成している。

カテキン類は、冷水には溶けにくく熱水にはよく溶ける。このため、低めの温度のお湯で淹れた玉露や高級煎茶はうま味が際立ち、熱湯で淹れる番茶や紅茶はパンチのある渋みが強調されるのだ。カフェインは、カテキンの渋み・苦みよりも軽い苦みがある。このカフェインは熱水によく溶けるため、熱湯で淹れたお茶の一煎目に、最も多くのカフェインが含まれることになる。


お茶のおいしい淹れ方

緑茶の淹れ方

Photo: "green and green tea" by きうこ(CC BY-NC-ND 2.0)

玉露は、湯温50~60度程度のお湯で淹れると、とろりとしたうま味が味わえる。お湯を入れて蓋をして2分蒸らす。容器から容器へ移し替えると、湯温は約10度下がることを想定してコントロールするとよい。急須や茶器は、お茶が冷めないように、予め熱湯を入れてあたためておく。

煎茶は、70度前後のお湯で2分蒸らすとうま味や甘みが味わえ、90度前後の熱めのお湯で1分蒸らすと渋みや苦みが利いた味になる。番茶は、茶葉も湯量もたっぷり使い、熱湯で淹れると、渋みや苦みが立った爽やかな味となる。


お茶と健康

Photo: "Matcha Making" by Akuppa John Wigham(CC BY-NC-ND 2.0)

お茶は栄養の宝庫

緑茶は「栄養の宝庫」と呼ばれるほど、さまざまな成分を含有している。含有量がたとえ微量でも、数多くの身体に良い成分を一杯のお茶から摂取でき、成分同士の相乗作用によって高い健康効果が期待できる。抗酸化力が高いビタミンが特に豊富で、ミネラルも多い。

さらに、お茶に共通して含まれ、味の決め手ともなっている、「カテキン」、アミノ酸の一種である「テアニン」、「カフェイン」の3成分は、それぞれ体によい作用をもたらす。

カテキンには、生体の活性酸素を消去する「抗酸化作用」があり、活性酸素が要因となる動脈硬化や細胞のガン化などの抑制効果が期待できる。また、カテキンの持つ「吸着性」は、インフルエンザウイルスの消去に効果的であることが証明されており、アレルギー症状を抑える効果も知られている。さらに糖尿病の予防効果もあるが、カテキンが体内に留まる時間は3~4時間程度のため、効果を得るためには毎日お茶をこまめに摂取することが望ましい。

アミノ酸の一種であるテアニンには、リラックス効果がある。さらにストレス軽減効果、血圧上昇の抑制の効果も認められている。

カフェインは、利尿作用や覚醒効果もある一方で、中性脂肪を分解してエネルギーを供給する機能もあるので、運動する前にお茶を飲むのもよい。

進化するお茶

1985年になって、缶入り緑茶が初めて実現された。実現に際しては、微量の酸素で酸化してしまうことと、加熱殺菌しようとすると香気成分が変質することが、課題となっていた。これらの課題を、10年の歳月をかけて解決して誕生したのだ。

1990年にはお茶のペットボトルが登場した。透明なペットボトルでは、すぐに光による劣化と酸化反応が生じてしまうが、製造方法の工夫と原材料の見直しで解決したのだ。

また、今では紅茶生産の80%を占めるティーバッグは、茶葉を細かくカットする製法により、短時間でも抽出できて色や味も大きく改善されたため、急速に普及した。袋もガーゼから紙、不織布、ナイロンメッシュなどに改良されていき、形状や、袋と糸の止め方の研究も進んでいる。

さらに、茶成分の抽出方法も多様化しており、「エスプレッソティー」が登場し、カフェインレスにしたお茶もある。

近年のライフスタイルの変化によって、様々なお茶の飲み方のスタイルが登場してきている。日本に「お茶の間」という言葉があるように、時代を超えてお茶はコミュニケーションの場に欠かせないものなのだ。


一読のすすめ

仕事に疲れて、ちょっと休憩したいときにお茶を飲む。人々はそんな習慣を古来より続けてきた。そんな伝統的ともいえる行為に、本書は科学的にアプローチし、お茶の効能と価値を知らしめてくれる。

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