来客には急須で日本茶

日本茶ソムリエが薦める、会社でのおもてなしに最適なシングルオリジン茶葉5選

「表参道 茶茶の間」では、13年前からシングルオリジンの茶葉を開拓してきた。お店で販売している30種類以上の品揃えの中から、会社の来客にお薦めの茶葉を、店主の和多田喜に厳選してもらった。まるでワインの表現のような「味わいの解説文」とともに紹介しよう。

おいしいお茶はどうして決まるのか。

日本茶ソムリエ・和多田喜によると、それは気候条件、土地条件、そして生産者の技術であり、なかでも最も差が出るのは「誰がつくったのか」だという。

優秀な生産家は、気候条件から土地の形状まで計算に入れて、土地を開墾して茶樹を育てていきます。だから、そんな生産家が住む土地には、その場所にしかないおいしいお茶が存在しているのです。

『日本茶ソムリエ和多田喜の今日からお茶をおいしく楽しむ本』(二見書房)

オフィスの来客のために淹れる「おもてなしのお茶」は、茶葉にもこだわり、味わいの違いを活かして、相手や状況に応じて選ぶと喜ばれるだろう。

そこで、13年前から自ら日本全国の生産家を一軒ずつ訪ねて、現在、最高品質の茶葉37種類をお店に揃えている和多田に、今回のBNLの企画のために、5つの茶葉を厳選してもらった。それぞれの味の特徴を表す解説文を添えて紹介しよう。

夏の暑い日には、爽やかな香りが引き立つ「青い鳥」

品種:蒼風
産地:静岡市葵区
採取:手摘み

2002年に品種登録された「蒼風」という新しい品種のお茶です。

香りのよい日本茶を目指して改良された品種ですが、茎が硬く、お茶として上手に仕上げるのが難しいものでした。その味と難しさゆえに茶匠の築地さんが職人心をくすぐられ、苗木から栽培を始めて4年。ようやく製品として届けることができました。幼木であるがゆえの甘さ、若さを感じるお茶です。

今年の青い鳥の特徴は、繊細な茶葉のやわらかな甘みです。冬の厳しい寒さによって茶葉の中に蓄えられた砂糖を思わせるような品のあるうまみと、夏のはじまりを思わせるようなしっとりとした艷のある香りがします。奥にのびるような甘みのあとからチリチリとした渋み、身体の奥から鼻に抜けるような若草を思わせる甘く柔らかな風味が楽しめます。茶葉からは甘くこんもりとした甘い香りの中からすっと抜ける爽やかな香りがします。

煎を重ねると甘味は落ち着いて、青い鳥らしいすっきりとした味わいに冴えのある香りが引き立ってきます。渋みは感じないのですがやさしい収斂味が口の中を包み込みます。

飲み終わった後には息をするたびに喉の奥から甘い香りが湧き上がります。飲んでいて心地が良いお茶です。青い鳥の品種、蒼風の爽やかな香りを味わえます。

「青い鳥」はオンラインショップでも販売しています。(記事公開時は在庫あり)

午後の来客には洋菓子やフルーツとの相性がいい「菫菜色」

品種:蒼風
産地:静岡市葵区
採取:ハサミ

青い鳥と同じ品種で、静岡の中でも古いお茶の産地、足久保のお茶です。生産家が異なるだけで、風味は変わってきます。

足久保川沿いの急峻な斜面に広がる茶畑で、経験豊かな生産者さんが育てたお茶を香り高く仕上げました。ちょうど茶摘みの季節に茶畑の横で咲く菫のような爽やかな印象があるのでこの名前にしました。

蒼風の品種特徴である爽やかな香りと、お茶らしい味わいが楽しめるお茶です。同じ品種の「青い鳥」と比べると少しメンソール感がある穏やかな香り、摘み取り方法の違いによる味わいの違いが感じられます。蒼風の抜けるような香りは茶葉が開いてきてからひろがり、すこしワイルドでしっかりとした渋みが感じられる味わいです。

お茶の味わいの奥からすっと爽やかな香りが出てきて、余韻とともに抜けていくような感覚です。「青い鳥」よりも少し濃厚なお茶らしい味わい、すっきりめの香りを楽しむことができます。

器の中では甘い香りが立ち込めていますが、ひとたび口に含むと抜けるような爽やかな風味になり、最後にはさっぱりとした渋みが残ります。舌をなでるような渋みが心地よいお茶です。最後まで茶葉を開いていくと華やかな香りがパッと出てきます。

洋菓子との相性がとてもよく、フルーツともあわせてお楽しみください。

こちらは新商品のため現在店舗販売のみ対応しています。

女性の来客には、甘みがのった香り高い「咲耶」

品種:香駿
産地:浜松市天竜区
採取:手摘み
製法:蒸し

天竜で作られたお茶はしっかりとした後味と残香があります。

天竜川の支流、水窪川の川霧が立ち込める急斜面でつくられた香駿は、香りを引き立たせる製茶法で仕上げることで、甘みがのった香り高いお茶になりました。

無農薬で育てることで得られる澄んだ香り、香駿という品種に由来するフローラルな香り、そして天竜という土地によって与えられる奥行きのある太い香りが、茶葉の中で一つになり、とても心地よく響きます。

香りが特徴ですが、味のバランスも良く、さまざまな淹れ方で楽しむことができるお茶です。熱湯で淹れても、冷茶、すすり茶でもどの淹れ方でも楽しめます。煎を重ねることで変化する香りもお楽しみください。

「咲耶」はオンラインショップでも販売しています。(記事公開時は在庫あり)

年配の方には、奥深い香りと濃い味わいが特徴の「和」

品種:和
産地:静岡市葵区
採取:ハサミ
製法:蒸し

安倍川の上流にある、山の中に広がる土地で作られたお茶です。

このお茶は在来でありながら非常にバランスがよく、ほっこりとした味わいと複雑に変化する奥深い香りをお楽しみいただけます。在来とは、特定の品種をさす名前ではなく、昔ながらの種から茶畑をつくる農法で作られたお茶の総称です。最近は接ぎ木をして品種を統一して畑を作ることが一般的になり、希少なお茶になってしまいました。種を蒔いて作るため、一本一本が異なった特徴を持つチャの木になり、また接ぎ木とは異なり根が土の奥まで伸びるため、土地の味わいを感じさせてくれるお茶になります。このお茶は、在来でありながら非常にバランスがよく、ほっこりとした味わいと複雑に変化する奥深い香りをお楽しみいただけます。お茶の味わいがしっかりと出るので、濃いめのお茶がお好きな方にもおすすめです。

一般的な品種、やぶきたにはない味わいがあります。一本一本特性の異なる茶葉をまとめて仕上げるため味にばらつきがでやすいのですが、茶匠望月さんが絶妙の蒸し加減と製茶で在来とは思えない、まとまったお茶に作り上げられています。やぶきたと飲み比べると、その魅力がよりわかりやすいでしょう。

「和」はオンラインショップでも販売しています。(記事公開時は在庫あり)

特に大切なお客様には、オスカルも感動した味。最高級の「秋津島」

品種:やぶきた
産地:静岡市葵区
採取:手摘み
製法:蒸し

茶茶の間が自信をもってお勧めする一杯。迷ったときはこれ。

日本茶の生産量の70%を占める「やぶきた」。普段飲まれているお茶のほとんどがやぶきた種です。そのやぶきたを突き詰めたらどこまでおいしくなるのか、茶匠、築地さんが挑んだお茶が秋津島になります。

茶葉によい環境を求め静岡の山奥、標高800mの高地で栽培されました。

山の上にある秋津島の農地の風景を、上空から撮影した動画。

しっかりとしたお茶の渋み、またそれを優しく包み込むような深い甘み。そして最後に茶畑の香りが口のなかに広がるような清々しい残香。全て今までに知っているお茶の味や香りであるのに、洗練された上質な味わいを楽しめます。自然と人とが作りあげた奇跡のようなお茶です。

特に一煎めでは口に含んだ瞬間に渋みと甘みが体を駆け抜け、香りは喉の奥から立ち上がり、お茶に包まれるような幸せな時間が訪れます。

「秋津島」はオンラインショップでも販売しています。(記事公開時は在庫あり)