BNL Books

要約『ファンベース』: 企業の運命は、たった8%のコアファンが握っている

もし新規顧客の獲得がうまくいっていないなら、ファンに目を向けてみる。売上のほとんどは、顧客の中でも極少数しかいない彼らのおかげなのだ。ファンをベースに売上を作ろう。そうすれば、ファン自ら、新規顧客を連れてきてくれるはずだから。

すべてのビジネスパーソンの参考になる──BNL編集部の選定理由

ファンというと、どうしてもBtoCのビジネスと考えがちだが、この本の内容はBtoBのビジネスにおいても参考になる。著者はこの本の中でこう語る。

実はファンからのオーガニックなおすすめは、BtoBでも同じように効く 。

BtoBの場合、決裁者や担当者がキーパーソンになるわけだが、彼らはそれを導入している企業からその評判を聞いて大きく影響を受けている。

一般的には、「同業者はライバル同士なんだから、どこの製品を導入していて、それがどういう結果をもたらしているかなど他社に漏らさないだろう」と思われがちだが、全然そんなことはない。

担当者同士、普通に横で繋がっていることの方が多いし、一緒に勉強会すら開いている。逆にBtoB業界の方が情報交換に熱心なくらいである。

本書第二章「ファンベースが必要な3つの理由」より抜粋

BtoBのビジネスは、ファンベースの考え方のもとともなる、全体の20%の優良顧客が売上の80%を占める、というパレードの法則が当てはまりやすい。

新規顧客の獲得に勤しむよりも既存顧客の満足度に目を向け、まずは売上の土台をファンで固めるべきだ。売上の鍵を握るのは、そのファンの生の言葉による「おすすめ」なのだから。BtoCのビジネスに関わる人だけでなく、BtoBのビジネスに関わるすべての人におすすめの一冊である。

それにしてもこの本は、全体を通してものすごく「気持ちの熱量」を感じる内容だった。もっとも学びになったのは「とにもかくにも、熱い想いを寄せるべきである」こと。自社サービスを本気で愛していないと、ファンにはすぐバレてしまう。サービスに共感してくれるファンには、へり下るのではなく、相手を想い情熱を伝える。

マーケティングのデジタル化が急速に進み、あらゆる手法が説かれているが、成功のヒントは、意外と人間くさいところにも隠れているのかもしれない。

⇒書籍の購入はこちら。(Amazon)


要約者レビュー

ファンベース。それは企業や商品の支持者であるファンを大切にし、中長期を視野に売上や価値の上昇を狙うという考え方である。

これからの時代、ファンベースなしで安定して売上を持続させるのは難しくなる。売上の大半は実のところ、ファンが支えているからだ。いまのところ新規顧客の獲得だけに力を入れている企業が多い。しかし単発施策や短期キャンペーンが仮にうまくいき、運良く話題になったとしても、その効果は一時的ですぐに忘れ去られてしまう。それでは貴重な予算や労力がもったいないではないか。

もちろんそうした施策のすべてがムダというわけではない。だがここで重要なのは「ファンを育てる」という観点だ。私たちが追求するべきなのは、ファンベース・マーケティングともいうべきものである。

本書ではファンベースが求められている理由に始まり、具体的な施策の取り入れ方について、さまざまな事例とともに解説される。これまでの成功例や失敗例に触れることで、自社で実施している取り組みが効果的かどうか、そしてファンベースをどのように自社に取り入れればよいかが、より鮮明にイメージできるようになるはずだ。

メーカーや事業会社に留まらず、小売、メディア、行政など、あらゆる業界でファンベースは必要だと著者は語る。この未来を見据えたマーケティング手法、いち早く脳内にインストールしてみてはどうか。


本書の要点

── 要点1 ──
短期キャンペーンや単発施策などの「話題化」だけではもう通用しなくなってきている。重要なのは興味や関心をもってくれた人々の「好意(価値への支持)」を積み重ね、資産化するための明確な設計である。

── 要点2 ── ファンベース施策が重要なのは、(1)ファンは売上の大半を支えて伸ばしてくれる、(2)時代や社会が変化している、(3)ファンは新たなファンを作ってくれるから、である。

── 要点3 ── 「共感・愛着・信頼」の3つをそれぞれ強化することが、ファンベース施策においては欠かせない。


要約

「話題化」はもう通用しない

Photo: "LOUD" by sharkhats (CC BY-NC-ND 2.0)

短期キャンペーンの瞬間風速的な効果

テレビCMや動画などは、一時的に大きな話題となる。しかしそれも束の間、一瞬にして世間から忘れられてしまう。たとえば以下のようなケースだ。

・実施したイベントは大盛況に終わり、スペシャルサイトへのアクセスも多く集めた。しかしその効果は一時的で、長くは続かなかった。

・テレビ番組で取り上げられ、大勢の客が店舗へ押し寄せた。だが売上はすぐ元に戻ってしまった。

・会員制ビジネスで打ち出した新規加入3カ月無料キャンペーンが成功したものの、有料会員への移行につながらない。

長い間、話題化は新規顧客の獲得において効果的だとされていた。しかしいまの時代、「一過性で瞬間的なリーチ」はもはや通用しなくなっている。重要なのは新規顧客へリーチした後にどうするか、そしてリーチする前に短期キャンペーンや単発施策をどのように組み立てるかなのである。

「好意」を積み重ねて資産化する

短期キャンペーンや単発施策を行なううえでは、興味や関心をもってくれた人々の「好意(価値への支持)」が積み重なり、資産化するような明確な設計が必要である。

短期キャンペーンを実施して人々の好意を集めても、その後放ったままにしている企業は意外と多い。たとえば「春のキャンペーン」など、CMも取り入れた統合型のキャンペーンを行なったあとはとくに何もせず、忘れた頃に「夏のキャンペーン」を仕掛けるといったケースである。このようなぶつ切りの単発施策では、人々の好意が積み重なるはずもない。

もちろん短期キャンペーンや単発施策などの取り組み自体は重要である。認知獲得をはじめ、一時的にでも売上を刺激する効果が見込めるからだ。またキャンペーンを行なうとなれば、社員の士気も高まるだろう。

しかしだからこそ、一過性で終わらせてしまうのはあまりにもったいない。短期キャンペーンや単発施策のみではなく、効果を資産化するためには、中長期のファンベース施策も加える「全体構築」が必要だ。


【必読ポイント!】ファンベースが必然な3つの理由

Photo: "Beach II" by Daniel Chodusov(CC BY-NC-ND 2.0)

理由1:ファンこそ売上を支える大黒柱

ファンベースは売上を中長期的に支える土台である。企業の価値を支えてくれる、支持母体をイメージするとわかりやすいだろう。しかしこれは現在の価値を変えずに守りに入ることを意味しない。改善をくりかえしてファンと一緒に成長することも、またファンベースなのである。

これからのマーケティングにおいて、ファンベースが必要な理由は以下の3つだ。

1つ目は、売上の大半を支え伸ばしてくれるのはファンだからである。某飲料メーカーの調査によると、企業が提供する価値を強く支持する「コアファン」と呼ばれる人々が、全体の46%もの消費量(≒売上)を支えていることがわかった。コアファンは顧客全体のわずか8%にすぎないにもかかわらず、である。これに37%の「ファン」の消費量を加えると、なんと売上全体の約90%にまで達する。まさにファンは企業の売上を支える大黒柱なのである。

したがって売上をより安定させるには、新規顧客の獲得に奮闘するよりも、いまいるファンを大切にして、彼らに多く買ってもらったほうがいい。まずは自分たちの扱う商品の何%が、ファンによって支えられているか調査することから始めるべきだ。

理由2:3つの変化

2つ目の理由は、時代や社会の変化に伴い、ファンのもつ重要性が増してきていることである。その変化とは「日本社会の変化・超成熟市場による変化・情報環境の変化」の3つだ。3つ目の理由に入る前に、まずはそれぞれの変化について説明したい。

第一の変化は日本社会の変化である。2060年には、日本の人口は現在より4000万人少ない8674万人になると予想されている。これは今後、顧客になりうる人が物理的に激減するということだ。

また近い将来訪れる、ウルトラ高齢社会の影響も見逃せない。2024年には3人に1人が65歳以上になると見られている。社会の先行きを案じる高齢者に加え、50代60代の人々が出費を抑えれば、新規顧客は減る一方だ。こうした情勢では、新規顧客獲得を狙い続けるよりも、いま支持してくれている顧客を離れないようにする方が重要だといえる。

新規顧客獲得がより困難に
第二の変化における「超成熟市場」とは、モノで溢れる「成熟市場」をはるかに超える社会のことである。あまりに多くの選択肢に晒されると、消費者は選べなくなるのではなく、選ぶこと自体をやめてしまう。選択肢が多くなればなるほど、消費者は自分の選択が正しいかどうか不安になり、自信をなくしてしまうのである。

そこで多くの企業は、商品を差別化することで打開を試みるのだが、そのような商品もすぐに後発組に真似をされてしまい、陳腐化するのがオチだ。

とはいえ新たな商品を出せば、瞬間的にでも新規顧客は増える。その貴重な機会をけっして逃さないよう、しっかりファンに育てなければならない。

情報が砂粒より多くなる
第三の変化は情報環境である。著者は現代の情報環境を「情報"砂の一粒"時代」と呼んでいる。いま世の中を流れている情報の数は、世界中の砂浜にある砂の数より多いといわれる。具体的な数字に置き換えると、世界中の砂浜にある砂の数(1ゼタバイト)に対し、2020年には45ゼタバイトの情報量が流れるとの見込みだ。

どれだけよいキャンペーン、イベント、記事を打ち出しても、今度は生活者に届きすらしない可能性が圧倒的に高くなる。もし仮に情報を確実に受け取ってもらえるとするなら、それはすでにその商品への興味や関心があるファンだけだ。

こうした変化により、新規顧客獲得に向けた短期・単発施策の効果は薄くなっている。だからこそファンベースが今後、ますます重要になるのである。

理由3:口コミの威力がもっとも高い時代

あらためてファンベースが必要な3つ目の理由を述べよう。それはファンが新たなファンを作ってくれることだ。

私たちが何かを選ぶ際、友人のオススメほど強力なものはない。価値観の近い友人が熱狂するコンテンツは、自分も同じように好きになる可能性が高いからである。

口コミの影響力は昔から信じられてきた。しかし現代ほどその力が発揮される時代はない。自分と価値観が近い人から「これはよい」と言われれば、それまでまったく興味のなかったモノにさえ、関心を抱くきっかけになるかもしれない。

「自分の言葉」で語られた本音を、ここでは「オーガニックな言葉」と表現する。またオーガニックな言葉が類友や友人に届くことを「オーガニック・リーチ」と呼ぶ。このオーガニック・リーチこそ、生活者に情報を届けるための最強の方法だ。通常なら気にも留められないキャンペーンや単発施策も、類友からのオーガニック・リーチであれば、受け取ってもらえる確率が飛躍的に上昇する。

人は何かに熱中すると、それを近くにいる類友に話したくなるものだ。自分が気に入った商品は、周りの類友にも勧めようとしてくれるだろう。つまりファンは周囲の類友もファンにしてくれるのである。

ゆえに提供する側としては、ファンが語りたくなるようなきっかけや状況、環境をいかに作り出すかがきわめて大切になる。


ファンの支持を高めるには

Photo: "Victoria & Pilar have a spe" by Nathan Clendenin (CC BY-NC-ND 2.0)

価値自体を高めて「共感」を強くする

ここからはファンベースを採用した施策について、具体的に説明する。ファンベースの目的は、全体の20%程であるファンの支持を高め、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値:1人の顧客がその取引期間を通じて企業にもたらすトータルの価値)を上げることだ。同時にこの施策は、新たなファンの獲得にもつながる。

ファンの支持を強くするためには、(1)価値自体を高める「共感」、(2)価値を代替不可能にする「愛着」、(3)価値提供元の評価・評判を高める「信頼」という3つのアプローチがある。

1つ目のアプローチ「共感」とは、商品のもつ価値自体を上げて、ファンの共感を強くすることだ。そのためには自分の企業、商品、ブランドの価値がどこにあるのをはっきりさせなければならない。もしそれが明確でないのなら、ファンの声を聴くことから始めるべきである。ファンの言葉のなかには、企業さえ気づかない「共感ポイント」が多く隠されているものだ。

一方でファンも、自分たちが支持している価値が何なのか、よくわかっていない場合がある。そこで役に立つのが「ファン・ミーティング」だ。定期的なファン・ミーティングを開いてファンとの対話を増やし、一緒になって価値を変化・成長させていくのである。

ただし少数派であるファンを集める際には、ファンではない人が興味本位で来てしまわないよう、応募のハードルを上げたほうがいい。自腹で来てもらう、ファン・コミュニティで募集するなどの工夫も大切である。

価値を代替不可能にして「愛着」を高める

2つ目のアプローチは、ファンの「愛着」の強化だ。商品に対してファンの愛着が高まれば高まるほど、長く使ってもらえるようになり、その商品は唯一無二の存在となる。

愛着を強化する方法のひとつとして有効なのが、「商品のストーリーやドラマの開示」である。商品の背景にあるストーリーやドラマといった「コト」の部分に、人は愛着を感じるからだ。

友人からもらったプレゼントはなぜ嬉しいと感じるのか。それはモノ自体ではなく、プレゼントしてくれようとした想いや、プレゼントを探すために使ってくれた時間が嬉しいからである。そのストーリーがあるからこそ、受け取る側は感動を覚える。

自動車メーカーのマツダはWEBサイトで「開発ストーリー」を掲載している。開発ストーリーでは開発者の思いや苦労が語られるため、それを知った人は、マツダの車が単なる車から特別な車に見えるようになる。これが愛着だ。

企業や商品のもつストーリーは、全面的に打ち出すべきである。重要なのはモノの背景にいる「人」をどう感じさせるかなのだ。

評価・評判を高めて「信頼」を強くする

3つ目のアプローチは、価値を提供する側の評価・評判を高め、ファンの「信頼」を得ることである。たとえ商品にいくら価値があっても、評価や評判が低くては誰からも相手にされない。もちろん信頼はすぐに得られるものではないだろう。しかし長い時間をかけて地道に築いた信頼は、強固なものとなるはずだ。

信頼を強くするには、まずいまの取り組みが誠実か、あるいは信頼を裏切っていないか自分自身に問いかけるといい。たとえば一度検索しただけで何度も表示されるリターゲティング広告、迷惑メルマガ、動画広告などのネット広告手法などは、相手の信頼を裏切ってしまう危険性がある。よりファンの目を意識し、信頼されない要素や反感をもたれる要素はなくさなければならない。

また信頼を構築するためには、細部までしっかり紹介することも大切だ。商品の質を裏付けるような制作現場、開発工程、作っている人の顔をアピールし、「あそこの商品は間違いない」とファンに自信をもってもらえるようにするべきである。

最後になによりも社員の信頼を大切にしよう。自分の会社や商品のよさを社外に伝えるには、社員がまずそのファンであるべきだからである。社員全員が同じ方向を向けるよう、創業の志やミッションは深く共有し、社員の共感・愛着・信頼を築いていくことが肝要である。


一読のすすめ

要約ではファンベースの概要、そしてファンの支持を強化する3つのアプローチ手法について紹介した。本書ではファンの支持をさらに高めて「コアファン」に育てるための施策(「熱狂」・「無二」・「応援」)、ならびに短期キャンペーン施策や単発施策と中長期ファンベースを組み合わせ、相乗効果を狙う「全体構築」も解説されている。

ファンベースをマーケティングで確実に活かすためにも、本書に掲載されている多くの図解やデータ、そして参考資料はぜひ一度ご覧いただければと思う。

(1冊10分で読める本の要約サービス flier