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BNL Books

あらゆる学びを、自分だけの武器にできる『独学の技法』

人生100年時代を生きる私たちは、一生学び続けなければいけないだろう。問題は、どう学ぶのか。無駄なく知識を使いこなす超実践的な独学システムを紹介する。

読みながら、いますぐ実践したいと思った──BNL編集部の選定理由

仕事人生80年といわれるいま、ビジネスパーソンの間では、学び続けることへの意識が高まっているようだ。

新しい時代の人生戦略を説いた『LIFE SHIFT』の著書で、英ロンドン・ビジネススクール リンダ・グラットン教授は、日経ビジネスONLINEのインタビューで次のように語っている。

これからは自分のキャリアを途中で何度も刷新させる必要があります。仕事を一旦中断し、学校に通うなどして学び直す。新しいスキルを身につけることで労働市場での価値を高める。

<中略>

私は63歳になりますが、毎日が学習です。常にメモとペンを持ち歩いています。誰もが生涯を通じて学ぶ時代です。これだけテクノロジーが大変革を迎えている時代、100年人生で長く働き続けるには、学び続ける他に選択肢はありません。さもなくば、時代に取り残されるだけです。

日経ビジネスONLINE  『ライフ・シフト』著者が語る100年安泰

しかしどんなに学んでも、インプットした情報は9割を忘れてしまうという。だからこそ実践したいのが、第3章で語られている、インプットした情報の「抽象化・構造化」だ。細かい要素を捨て「要するに○○ではないか」と、自分の視点で変換をして仮説を立てる作業である。

やってみると、最初は難しい。しかしこの作業によって、インプットした情報を無駄にせず、いろいろな状況に適用できるようになる。具体的な事例も本書に載っているので参考にしてほしい。

この本は、他の「学び」をテーマにした本とは一線を画した、超実践的な一冊だと思う。読みながら試してみたくなった。BNL Booksで紹介した本を読むとき、そして出会った人から新しい知識を得たときにも、この独学術を使えば意味のある学びに繋がるだろう。

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要約者レビュー

時代とともに劣化するスキルと、時代が変わっても有用なスキル。仕事に生きる人なら当然後者を選ぶだろう。では時代に左右されないスキルとはなにか。

それが「独学の技法」だ。世の中がいかなる変化を迎えようとも、独学の技法さえ身につけば、自分自身をアップデートし、仕事の波を乗りこなすためのしなやかな知性が手に入るはずである。

本書の最大の特徴は、独学を「戦略、インプット、抽象化・構造化、ストック」という4つのモジュールで構成される、動的なシステムとして扱っている点にある。知識を死蔵せず実生活で使うには、それぞれの相互作用が必要だと著者はいう。

たとえば要約で中心的に取り上げる「戦略」は、これから独学でなにを学ぶかと考える際に、重要な気づきを与えてくれるだろう。忙しいビジネスパーソンがうまく独学を進めるには、「テーマとジャンル」の設定が欠かせないという著者の主張には大いに納得だ。いつの時代もイノベーションは、「新たな組み合わせ」から生まれるからである。強みを基準にジャンルを定め、自分だけの組み合わせを見つけることができれば、誰もが欲しがる貴重な人材になれるのはまちがいない。

もし今後、仕事人生が80年続く世界が訪れたとしよう。そのときも常に志高く、情熱をもって働けるのであれば最高ではないか。本書にはそのためのヒントにあふれている。


本書の要点

── 要点1 ──
学んだ知識を活用できる期間はどんどん短くなっている。現代のビジネスパーソンは今後、大きなキャリア変更を経験する可能性が高い。その際スムーズに変えられるかどうかは、独学の技術の有無にかかっている。

── 要点2 ──
独学の技術は(1)「戦略」、(2)「インプット」、(3)「抽象化・構造化」、(4)「ストック」の4つで形成される。知的戦闘力を高めるには、これらを全体的なシステムとして捉える必要がある。

── 要点3 ──
独学する対象は、ジャンルではなく「テーマ」で決めるべきだ。重要なのは、1つのテーマに対し、複数のジャンルを組み合わせて学ぶことである。


なぜいま「独学」が必要なのか

Photo: "DSC_0043" by charles Ingoglia (CC BY-NC-ND 2.0)

知識の「旬」が短くなってきている

なぜいまの時代、それほどまでに「独学の技術」が重要なのか、その理由は4つ挙げられる。

1つ目の理由は「知識の不良資産化」だ。かつてマーケティング講座では、フィリップ・コトラーを代表とする古典的なフレームワークが「定番」として教えられていた。しかしそのようなフレームワークはもはや時代遅れになりかねない。

少し前であれば一度学んだ知識を、そのままずっと仕事で使うことができたかもしれない。しかし現在、その知識が「旬」である期間は、かなり短くなってきている。

これからは過去の知識にとらわれることなく、自ら仕入れた新たな知識でアップデートをくり返すことが求められるのだ。

イノベーションの実現による産業の蒸発

2つ目の理由は「産業蒸発の時代」がやってきたことである。いま多くの企業が「イノベーション」を目標として掲げている。ではイノベーションの行きつく先はなにか。それは産業の蒸発である。

アップルがiPhoneを世に送り出したのは2007年だ。これにより当時、末端価格換算で3~4兆円にもなる国内携帯電話市場のシェアは一変。アップルはその半分以上をごっそり奪いとり、パナソニックや東芝、NECなどは携帯市場から去らなければならなくなった。その分野で働いていた人たちも、方向転換を余儀なくされた。

イノベーションの実現により産業構造に大きな変化が生じると、自分の専門領域やキャリアを変更しなければならない人がどうしても出てくる。そこに選択の余地はない。その際スムーズにキャリアを変更できるかどうかは、独学の技術の有無に大きく左右されてしまう。

人生100年時代のビジネスパーソンとは

3つ目の理由が「人生三毛作」時代の到来である。『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』 を執筆したリンダ・グラットンは、著書のなかで人生100年時代の到来にともない、現役として働く期間も70歳~80歳に長期化すると指摘している。

その一方で、企業や事業が当初の活力を維持できる期間は短くなってきている。日経ビジネスが帝国データバンクとともに実施した調査によると、「旬の企業」のうち、10年後も旬を維持できる企業の数は10年後に半減、20年後には1割程度になるとされている。

つまり現代のビジネスパーソンは、いずれ大きなキャリア変更を経験する可能性が高い。そのとき旬の企業や事業へうまく乗り換えられるかどうか。それによって将来、仕事から得る「やりがい」「経済的報酬」「精神的な安定」に、大きな格差が生じるだろう。

求められているのは「クロスオーバー人材」

そして4つ目の理由が「クロスオーバー人材」の需要である。

いま世界中の組織で「領域横断型の人材が足りない」といわれている。領域横断型とは「スペシャリストとしての専門性」と「ジェネラリストとしての広範囲な知識」を兼ね備えた人材のことだ。

イノベーションという言葉を生んだ経済学者のジョセフ・シュンペーターによると、イノベーションは「新しい結合」から生まれるという。イノベーションが生まれるためには、これまで異質のものとされてきた2つの領域をかけ合わせられる人、つまりクロスオーバー人材が必要なのだ。

そしてすでに大学を卒業している人が、広範囲にわたる知識を獲得しようとするならば、その手段は独学だけなのである。


4つのモジュールで形成される「独学のメカニズム」

Photo: "brains!" by ChristinaMina (CC BY-NC-ND 2.0)

「なにをインプットしないのか」を決める

独学の技術は(1)「戦略」、(2)「インプット」、(3)「抽象化・構造化」、(4)「ストック」という4つのモジュールで形成される。

多くの人はこのうち、インプットだけに着目しがちだ。しかしそれでは世のなかを生き抜くための知的戦闘力向上は手に入らない。高い知的戦闘力を得るには、4つのモジュールを全体的なシステムとして捉える必要がある。

第一に、独学には明確な「戦略」が不可欠である。たとえば著者は、「人文科学と経営科学の交差点で仕事をする」ことを戦略として掲げている。哲学や美学、歴史などの人文科学の知識と経営学の知識をかけ合わせ、そこから得られた独自の示唆や洞察を仕事に生かしているのだ。

このとき重要なのはインプットの「量」ではなく「密度」である。自分の戦略に適合する情報のインプットに集中し、それ以外は遮断していく。たとえば著者の場合、戦略と関係ない政治的ゴシップは完全に無視している。多くの人が知っている情報は、差別化の要因にならない。したがって知的戦闘力という観点からすると、なんの価値もないといえる。

私たちの時間には限りがある。だからこそなにをインプットするかだけでなく、「なにをインプットしないのか」を決めるのが重要になる。

知的戦闘力につながるインプットとは

第二は「インプット」である。インプットの素材は書籍に限らなくていい。テレビや新聞、雑誌、ネット上の情報も活用するべきだ。同様に映画や音楽の歌詞、アート作品も貴重な情報源となりうる。

加えて常に意識すべきなのが、自分自身を「アンテナ」に見立てながら日常をインプットしていくことである。街中にある看板、行き交う人々のファッションなどからも、多くの学びが得られるはずだ。

インプットが広範囲になればなるほど、「学びの稼働率」は上昇する。独学システムの生産性を高めるためにも、独学する時間の絶対量を増やすことは必要不可欠だ。

ただし書籍やネット上の情報は他人が思考して生産したもの、つまり「劣化コピー」のインプットということも忘れてはならない。あくまで重要なのは、情報を組み合わせることで生まれる、独自の示唆や洞察である。

だからこそ自分の五感を通じて得たインプットは、それだけで独自の価値がある。そうしたインプットをもとに知的生産を行なえば、他者との差別化も簡単にできるだろう。

知識を「武器」に変える抽象化・構造化

知識をいくらインプットしてもそのままでは活用できない。そこで必要となるのが、第三の「抽象化・構造化」である。インプットした知識から、ビジネスや実生活で使える示唆や洞察を抽出する工程だ。

歴史の本には「中世から近世にかけての欧州では、ローマ教皇と各国の君主からなる二重の権力構造があった」と記されている。同様に中国では宦官と科挙、日本でも幕府の将軍と天皇という、二重の権力構造が存在していた。

こうした知識があっても、ビジネスでは役に立たないと思うかもしれない。だが抽象化を通して知識は「知恵」になる。たとえばここで「権力を分散するためのシステムが働いていたのではないか?」という仮説をもったとしよう。仮説とは「問い」である。そしてこの「問い」こそ、独学の生産性を高めてくれるのだ。

さらに抽象化された仮説を、別の知識や情報と関連づけることも重要である。先の仮説は権力や組織に関連するため、経営学の「組織設計論」、あるいは「権力とリーダーシップ」というテーマと関連づけてみる。するとどういう知見が得られるか。

抽象化によって得られた仮説を、すでにあるテーマと紐づける。そうすることによって、新たな情報の組み合わせが生まれる。これが構造化だ。

知識をストックせよ

第四は「ストック」である。抽象化・構造化した知識は、いつでも引き出せるように保存して管理しなければならない。インプットした情報は、なにもしないと忘れてしまう。

著者の場合、執筆に必要な内容は移動中に作成することが多い。そのためEvernoteを活用しているという。サービスは自分に合ったものを選べばよいだろう。

独学で得られた知識には、すぐに役立つものもあれば、おもしろいがいつ役に立つのかわからないものもある。しかし個性的なアウトプットというのは多くの場合、「いつなんの役に立つかわからない知識」から生まれるものだ。検索やタグを活用することで、抽象化・構造化した知識をいつでも引き出せるようにしておくことが重要である。


戦う武器を集める「独学の戦略」

Photo: "Fight" by Henri Bergius (CC BY-NC-ND 2.0)

独学の方針は「テーマ」で決める

ここからは独学システムの第一のモジュール、「戦略」について具体的に見ていこう。

「戦略を立てる」とは、「なにについて学ぶか」そして「なにを学ばないか」を決めることである。世の中には大量の情報があふれている。それらすべてに手をつけていたら、いくら時間があっても足りない。

仮にひとつのテーマにある程度精通しようとするなら、入門書と専門書をそれぞれ最低5冊は読みこまなければならない。さらに本からインプットした知識を、構造化・抽象化およびストックする時間も必要だ。ビジネスパーソンが独学に使える時間を考えると、学ぶべきテーマやジャンルの絞りこみは必須である。

なお独学というと、歴史や哲学などの「ジャンル」から入る人が多いが、独学の方針を決める際はジャンルではなく「テーマ」で決めたほうがいい。ジャンルとは既存の枠組みにすぎない。あくまで重要なのは自分が追求するべきテーマである。

テーマとジャンルをかけ合わせる

ジャンルとは誰かが体系化した知識の枠組みだ。そこからは独自性のある示唆や洞察は生まれにくい。たとえば「権力構造」をテーマに学ぶとするとき、経営というジャンルの「組織論」から入るのは、もっともな選択肢のように見えるかもしれない。だがそこから得られるのは、必要最低限の知識のみだ。

一方でテーマに着目すると、もっと広い範囲から示唆を得ることができる。歴史、文学、政治哲学、映画など、権力構造を扱ったジャンルは数多い。組織なら組織論、権力ならリーダーシップ論と、テーマとジャンルを一対で考えてはならない。ひとつのテーマを考えるときは、さまざまなジャンルとの組み合わせを考える。そこから示唆と洞察が生まれるのだ。

自分の「強み」に沿ってジャンルを選ぶ

テーマは自分の興味や仕事に沿って決めればよい。一方でジャンル選びについては、ユニークな組み合わせになるよう心がけるべきである。

ユニークな組み合わせの代表例がアップルだ。彼らの「デザインとテクノロジー」の組み合わせには、唯一無二の個性がある。またアメリカ発祥のロックとイギリス風のモッズコスチュームを組み合わせたビートルズ、クラシックの作曲技術とポップスを組み合わせた坂本龍一など、華々しい業績をあげている人たちの背景には「独自性豊かな要素の組み合わせ」が存在している。

ジャンル選びをする際は、「自分がすでに持っているもの」を、いかに活用するか考えるといいだろう。自分の強みをないがしろにして、できないなにかを克服しようとする人は多い。しかしたとえ苦手なことにどれほど取り組んだとしても、得られるのはおそらく「人並み程度」の能力だけだ。そして人並み程度には、誰もお金を払ったりしない。

だからこそ自分が持っているものに集中すべきである。自分の強みというのは、自分にとって「できて当たり前」のことだ。そしてその強みにこそ、他者との差別化を図る貴重な要素が隠されているのである。


一読のすすめ

「単なる物知りに終わるのか、知識を武器に変えるのか」という重要な分岐点について、あらためて意識改革を促してくれる本である。要約では全体図を俯瞰しつつ、第一の要素である「戦略」を重点的に紹介した。残りの要素である「インプット」や「抽象化・構造化」、「ストック」について詳しく知りたい方は、ぜひ本書をお読みいただければと思う。

加えて本書では、歴史・経済学・哲学・経営学・心理学、音楽や文学といったリベラルアーツを、どうビジネスへ応用していくのかも解説されている。「人文科学と経営科学の交差点で仕事する」ことを戦略として掲げ、実践している著者だからこその叡智は必見だ。

生産性を高める独学の技法のみならず、教養の入門書としても重宝する。なんとも価値ある一冊ではないだろうか。

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