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これからのキャリア論

「とりあえず飲み会」の人脈づくりに物申す──LinkedInの新代表・村上臣が説く、世界標準のネットワーキング

昨年末、国内不振のLinkedInへ移ったYahoo! JAPAN "モバイルシフト"の立役者は、いま何を企んでいるのか。「Facebookはビジネスに最適ではない。飲みニケーションの延長だ」と語り、Eightに共闘を呼びかける。

ヤフーの元執行役員で、CMO(Chief Mobile Officer)としてYahoo! JAPANの"モバイルシフト"を推進してきた村上臣が昨年11月、LinkedInの日本法人代表に就いた。このニュースは業界関係者らから驚きをもって受け止められた。

というのも、公表されているLinkedInの国内ユーザー数は100万人を超える程度。同時期に日本に上陸したFacebookの2800万人からは大きく水をあけられているのが現状だ。世界では5億3000万人が利用するサービスに成長しているが、日本上陸は完全に失敗したというのが定説だった。そんな"逆風"の中、なぜ村上がLinkedInに飛び込んだのかについては、村上自身がさまざまなメディアで語っている。

ところで、EightとLinkedInとは、同じ「ビジネス特化型のSNS」にカテゴライズされる競合関係にあるが、村上は大胆にも、そんなライバルに対して共闘を呼びかける。「働き方改革」の旗の下に大同団結を説く、村上の真意を聞いた。


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「スキルとロールのミスマッチ」を解消すれば、もっと働きやすい社会になるはず。

転職で、日本を覆う閉塞感を打破したい

──LinkedInとEightは非常に近いところで戦っている関係にあります。LinkedInを日本で広めていくために村上さんがいま、どんなことを考えているかを率直に伺いたいのですが。

それにはまず、なぜぼくがヤフーを飛び出してLinkedInへやってきたのか、という話からするのがいいんじゃないかと思うんですけど。

いま、日本ってなんだか暗いじゃないですか。閉塞感に満ちている。労働人口は減るし、政治を見ても、おじいちゃんおばあちゃんの方を向いた施策ばかり。若い子は一体どうすればいいんだっけ、みたいな感じで。そう考えた時に、もっといろいろな働き方が、普通にできたらいいんじゃないかと思ったんです。

人が会社を辞めるのって、自分が持っているスキルと会社から求められるロールとがズレた時だろうと思うんです。「こんなに頑張っているのに成果が出ない。マネジャーからも認められない」。そう思った結果としての行動ではないか、と。この「スキルとロールのミスマッチ」というのが最大の不幸なんですよ。なぜなら、スキルとロールが合わないというのは、あくまでこの場所でだけ見ているから起こることにすぎなくて。別の場所に行きさえすれば、活躍できる人はたくさんいるはずなんですよね。

だからまずは、こういったものを可視化して、その上で両者をつなげることができれば、みんながハッピーになれるのではないか、と。マッチングというのは、まさにインターネットが得意とするところですし。

日本は長らく「転職しない国」だと言われてきた。そのカルチャーを変えることで、閉塞感を打破したい。

日本は長らく「転職しない国」だと言われてきて、その文化はもう30年近くも変わってないんですよ。そのカルチャーを変えることで、日本を覆う閉塞感を打破したい。そういう思いを持って、ぼくはLinkedInに来ることにしたんです。

もちろんそれだけじゃなくて、ビジネス的に見ても、人材市場って潜在層を含めて見れば1兆円規模くらいあると言われていて。社会的なインパクトという意味でも、この領域は日本社会に残された数少ないフロンティアだというふうに、ぼくの目には映っています。

──いま、「働き方改革」という言葉を聞かない日はないくらいに、村上さんと同じ問題意識を持っている人が少なくないように見えます。

安倍首相が言う「働き方改革」というのも、まさにそういうことだと思うんですけど、ここ数年で、官民双方からこうした動きが盛り上がってきているというのはありますよね。だから、「なぜいまこのタイミングなのか?」と問われれば、やはりこの「働き方改革」の流れがあることは大きいです。

転職というのは、日本人にとってはやっぱり重い。いろいろと引きずっているものがあるじゃないですか。だから、そんなに簡単にカルチャーが変わるとは思ってないです。でも一方で、ちょうどいま、世の中が大きく変わりそうな予感もある。これはロジックではなく、感覚的なものです。こういう時、ぼくはだいたい直感で動くので。

「飲みニケーションのオンライン化」は、これまで通りにFacebookでいいかもしれないけれど、昼間に使うSNSはビジネスに特化したものを使うべき。

Facebookはビジネスに最適じゃない

──LinkedInはこれまでも、ダイレクトリクルーティングのサービスを世界規模で提供してきました。ところが、日本ではユーザーが思うように増えていないように見えます。そこはどう変えていくのでしょうか?

ダイレクトリクルーティングというのは、どちらかというとわれわれがBtoBの領域で提供してきたものであって、日本展開のカギを握るのは、むしろBtoCの部分だと思っています。

LinkedInのタイムラインには日々、質の高いビジネス関連のニュースが流れてきます。そこから自分のビジネスに関わる情報を効率よく取得し、それを元に何かいいアイデアを思いついたら、チャットを使って連絡を取り、あるいは新たなビジネスパートナーを検索して探す。海外のユーザーの間では、すでにこうした使い方が一般的になっています。

日本でも、ビジネスをすべて自社で完結するのは難しくなってきており、オープンイノベーションということが盛んに言われるようになりました。そうした状況とLinkedInが得意とするところは、非常に合っていると思うんですよね。

──ただ、日本では現状、まさにそうしたことがFacebookで行われていると思うのですが?

確かに、タイムラインに流れてきた投稿を起点に、とりあえずFacebook Messengerで連絡を取って、そこから新しいビジネスをということを、ぼくの周りでも皆さんやっていますね。

でも、そこの部分というのは、そもそも本来はLinkedInが得意な領域なんですよ。先ほども言ったように、世界ではすでにそうした使われ方がされていて。Facebookはプライベートで、という使い分けがされているんです。Facebookのぼくのタイムラインには、夜になるとラーメンの写真とかしか出てこない。それが朝になるとビジネスニュースに変わる。昼はそのごった煮という感じです。ぼくが言いたいのは、はたしてそれが本当にビジネスに最適なのか? ということです。

Facebookは、飲み会の延長、飲みニケーションのオンライン化です

もちろん、Facebookのコメント欄で仲のいい人とワチャワチャすることにより、リレーションシップが深まるという、そういうのもまああっていいとは思います。でも、あれは言ってみれば飲み会の延長ですよね。飲みニケーションのオンライン化。

それとは別に、デイタイムっていうのは、なるべく効率的にいろんなビジネスを作っていく時間のはずじゃないですか。しかも、そっちの時間の方が圧倒的に長い。だとしたらやっぱり、デイタイムにはビジネスに特化したSNSを使った方がいいんじゃないかと思うんです。もちろん、いきなりすべてがスイッチするなんて思ってないですよ。なので、日本においては、しばらくはFacebookとの併用になるんだろうとは思います。

かつてFacebookの日本展開を率いた児玉太郎はヤフーの元同僚だ。児玉は当初難しいと言われた「実名のSNS」を日本で広めることに成功した。そのおかげで、村上はLinkedIn再起動の可能性を探ることができているという。

Facebookが普及してなかったらオファーは受けなかった

──とはいえしつこいようですが、現状は皆、Facebookでそれをやっているわけじゃないですか。だからそうした棲み分けを実現するには、ビジネス専用のものがあることが大事だと、どうにかして伝える必要があると思うんです。そのためには何が大事になると考えていますか?

そうですね。まずはEightさんのCMじゃないですか?(笑)

というのは半分冗談ですけど、でも半分は本気です。やっぱり「ビジネスのためのSNS」という、これまで日本になかった新しいカテゴリをつくる必要があるんで、この志に賛同できる人は、誰であれ一緒にやりたいと思っているんですよ。Eightとはもちろん競合する部分があるのは確かなんですけど、この意識は多分一致していると思うので、ぜひ一緒にやっていきたいですね。

振り返れば、FacebookとLinkedInが日本に来たのはどちらも2010年ごろで、ほぼ同じタイミングだったんですよね。当時の日本には、2ちゃんねるに代表される匿名文化というのがあって、「グローバルの実名SNSであるFacebookは失敗する」って、みんなが口を揃えて言ってたじゃないですか。「誰も実名なんて出さないよ」って。

でも、現状は見ての通りです。だからあのタイミングでひとつ、文化が変わったんですよね。Facebookが普及したことによって、地ならしが進んだという肌感があります。それが済んでなかった5年前に同じオファーを受けていたら、ぼくはやっぱりLinkedInには来なかったと思うんですよね。あれで日本人がグローバル標準のSNSの使い方っていうものを学び、実名をオンラインに出すということも学んだ。だから今度は、グローバル標準のビジネスSNSの使い方を日本人が学んでいくフェーズなんじゃないかと思っていて。

あれだけ「日本の匿名文化は変わらない」って言われていたのにそれが変わったというのは、やっぱりこの領域は、結局のところグローバルのプラットフォームの方に寄っていくのだろうと思うんです。だとすると、LinkedInは日本以外だと大成功してますんで、そっちに寄っていくはずだというふうに考えたんですね。

──Facebookをはじめ、過去に外国企業が日本市場で成功した際には、パートナーシップがカギになったとよく言われます。村上さんはこれまでヤフーにいらして、日本のIT業界にたくさんのネットワークをお持ちだと思いますが、みんなでそれをやる、という意識はありますか?

もちろんです。どんどんやっていきますよ。最初に触れたように、その先には日本人の働き方を多様化したいという思いがあるので。「働き方改革」の旗を一緒に掲げてくれる人であれば、どなたでもご一緒する機会はあるだろうと思います。

どんな会社と組みたいか? どうプロダクトを変えていこうとしているのか? そのいちばん気になる点については詳細までは語らず、「すごいのがあるんですけど、まだちょっと言えない」と笑ってごまかされた。

プロダクトマーケットフィットの方針にLinkedInの本気を見た

──就任してまだ2カ月ですが、どこから手をつけていきますか?

まずはローカライズをちゃんとしないといけないと思っています。やっぱりまだ奇妙な翻訳が残っていて、ぱっと見でアメリカから来たものだよねっていうのがバレちゃうんですよね。それがバレないくらいには、プロダクトをマーケットフィットしないとダメだろうなと思っているんです。今年の前半くらいまでは、そういう細かいところを調整していくことになりそうです。すでに手をつけ始めているんですけど、それを地道に続けていくっていう。

まあ、今年からLinkedIn再起動ということで、もう一回しっかりと投資をして、日本のやり方で、日本向けのプロダクトにしていくというのは、もう合意できているので。あとはどんどんやっていくということですね。ぼくが最終的にLinkedInに入ることを決めたというのも、その合意があることが大きかったんです。

──どういうことでしょうか?

彼らが探しているカントリーマネジャーの条件に、プロダクトのバックグラウンドが強くあることというものがあって。それを聞いた時に、「ああ、ようやく考え方を改めたんだね」と思ったんです。

LinkedInがヤフーに提案しに来ても、いつも追い返していたのはぼくだったんです

一般的に、外資のカントリーマネジャーって営業系の人が多いじゃないですか。要は、「エクセレントなプロダクトをすでに用意してあるから、あとはお前が売ればいいだけだ」っていうのが基本的なやり方なんですよね。彼らからしたら、「日本向けにカスタマイズする」とかっていうのはナンセンスに聞こえる、と。LinkedInも、かつてはそういう姿勢でした。何年も前から日本展開を模索してきた彼らは、ヤフーに対してもずっと提案しに来ていたんですよ。その時に毎回「そのやり方じゃダメだ」って言って追い返していたのは、他ならぬぼくでしたからね(笑)。

やっぱり、日本とアメリカとではカルチャーが大きく違うじゃないですか。いまだに判子がなくならない国で、商習慣を変えるっていうのは難しいですよ。そんな国で成功するには、やっぱり日本向けにカスタマイズすることは不可欠だと思うんです。

ただ、彼らはそこを学んだんです。そういったことを含めて考えて、戦略とプロダクト改善ができる人物というのを求めていて。その話を聞いた時に初めて、ぼくはちゃんと話を聞こうと思えたんですよね。選考の過程で、VP全員と話す機会がありましたけど、みんながちゃんとこの部分の大切さというのを理解していることが伝わってきて、逆に「じゃあどう変えればいいんだ?」というのを聞いてくる。そこに本気度を感じたということです。

アメリカでは一人ひとりの仕事の成果が明白で、LinkedInにも書いてある。一方、日本の大多数の社員は、名刺に自分の仕事内容を表す肩書きすら載っていない。

企業はいつまで個人を「囲う」のか?

アメリカでLinkedInが流行ったっていうのは、やっぱり西と東とがだいぶ遠いという地理的な条件も大きかっただろうと思うんですよ。例えば、共通の知人を介して紹介してもらった人と、今度ニューヨークで開催されるイベントで会いましょうという時に、アメリカの場合、最初のやり取りはオンラインなんですよね。いきなりオフラインで会うとか、物理的に難しいんで。

そうした時には、会う前にまず名前検索して、「ああ、今度会う人はこういう人なんだ」という事前情報を得ようとするじゃないですか。その上でSkypeかなんかでミーティングをして、チャットでやり取りを続けて、それでようやく実際に会うわけです。そうだとすると、前職で何をしていたのかとか、仕事でこういうことを成し遂げた人なんだっていうのが、検索結果としてちゃんと出てきて、わかった方がいいわけですよ。そのようにして、LinkedInの需要が生まれていった経緯があるんです。

──なるほど。それと比較すると、日本の場合は東京に一極集中しているから、そのニーズが少ないように見えますね。

そう。それに、仮に大阪や京都とかにいても、大事な案件だと思えば、2時間くらいかけて新幹線で東京まで来て、オフラインで挨拶することが美徳とされる文化もありますよね。「すぐに行きます!」「おお、わざわざご足労いただきまして」みたいな。

ただ、「働き方改革」が進んで、いろいろな人といろいろな働き方をするようになると、当然リモートの機会が増えてくると思うので、ひとつのユースケースとして、LinkedInが合っているというふうになるんじゃないかな、と。LinkedInはマイクロソフトグループであり、そのマイクロソフトのツールというのもどんどんリモートワークに寄せていっているので、この両輪というのはすごくワークするんじゃないかなと思ってます。

欧米の「ネットワーキング」と、日本の「人脈」は意味合いが違う

もっとも、そうは言っても日米の文化的な違いは大きいので、繰り返しますが、簡単ではないと思ってますよ。例えば欧米の「ネットワーキング」と、日本でいう「人脈」という言葉も、若干コンセプトが違う気がするんですよね。

──興味深いです。どういうことでしょうか?

欧米型のネットワーキングというのは、前提として、その人が前職で何をしていたかとか、どんなことを成し遂げた人なのかということが一目瞭然なので、そこからどんどん話を広げていって、新しい大きなビジネスを作っていくという形です。先ほど、アメリカでは実際に会うよりもオンラインでのやり取りが先になるという話をしましたが、これも、お互いの仕事の実績が明白だからこそ成り立つことなんです。

ところが、日本企業の場合は、その人個人が仕事で何を成し遂げたのかっていうのがわかりにくいじゃないですか。だからなのか、日本でいう人脈って、どちらかというとパーソナリティありきというところが強くて。その上で実際に仕事をしてみて、ようやく継続的に一緒に何かできそうな人なのかがわかる、というプロセスのような気がします。

──確かにこうしたメディアをやっていても、日本型の大企業の場合は、「このプロダクトを作った人を取材したい」と思っても見えてこない部分が多いです。

そうですよね。日本の会社は、従業員の顔を表に出さない。出すのは一部のスポークスマンやPRの人だけで、作り手の顔が見えないっていうところがありますよね。それだと、どうしても会社が主語になってしまう。だから人脈作りをするというと、「とりあえず飲み会」になってしまうんだろうと思うんです。でも、いくら飲んだって、ビジネスの面で信頼できるかどうかは、結局のところ仕事をしてみなきゃわからないんですから。

──「飲みにケーションのFacebook」と「ビジネス専用のLinkedIn」の違いという、先ほどのお話にも通じますね。

会社が従業員を表に出さない文化っていうのは非常に昭和的で、終身雇用にコミットする代わりに、引き抜かれるリスクをなるべく避けたいという発想なんですよね。「年金まで約束しているのに、お前は会社に後ろ足で砂をかけて去るつもりか?」っていう。

まあそういう心情になるのはわかるんですけど、でも、さすがにもうそういう時代じゃないですよね? もはや会社は終身雇用にコミットなんてできないし、実際していませんよ。むしろこのソーシャル全盛の時代ってことでいうと、「箱から人へ」っていうのが流れじゃないですか。

だって、いまやスーパーに行けば、野菜だってそうなんですから。「有機野菜、私が作りました」って生産者の顔が貼ってある。そっちの方が単価が高く売れてるわけですからね。会社のプロモーションだって変わっていくはずですよ。

......というような流れは間違いなくきていて、徐々に変わってきているので、あとはそれをちゃんと進めていくってことだけだと思っています。