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新規事業を加速させる戦術

いいアイデアは人に話して即行動すること──SnSnap西垣雄太が語る、着想をイノベーションにつなげる秘訣

立ち上げから2年、SNSを活用した写真プリントサービス#SnSnapは、DIESEL、GIVENCHY、Volkswagen等のイベント会場や、読売ジャイアンツの試合(東京ドーム)でも導入され、企業のイベントプロモーション活動に革命を起こしている。いいアイデアを思いついたら、人に共有して誰よりも早く行動すること。それが革新的なビジネスを実現する秘訣だという。

「#SnSnap」はSNS上に投稿した写真をイベント会場などに設置した専用端末から印刷できるサービス。株式会社SnSnapは創業2年目ながら、実店舗に顧客を誘導するO2O(オンライン・ツー・オフライン)マーケティング事業で急成長している。取引先にはそうそうたる有名企業の名前が並ぶ。

代表の西垣雄太は、なぜここまで多くの取引を成立させ、サービスの急成長につなげることができているのか。そこには留学先のアメリカ、さらには学生時代に働いていたアップルストアでの経験が活きているという。注目の新世代起業家にビジネスネットワーク活用術を聞いた。

#SnSnapの紹介動画。スマホで自撮りしたら、その場で写真を印刷してくれる。

#SnSnapはハッカソンで生まれた

#SnSnapはまさに人と人との出会いから始まった。代表の西垣はいまから2年前に、よきビジネスパートナーを探すべく、とあるハッカソンに参加。そこで意気投合したのが、現在CTOを務める平沼真吾だった。

「もともとWebサービスを作りたいと思っていたのでいろいろなアイデアを持っていたんですけど、ぼくはマーケティングが専門なので、実際に作ることはできない。自分のアイデアを形にしてくれる技術者はどこにいるかと考えて、行き着いたのがハッカソンでした」

平沼は東芝、富士通を経て独立。エンジニアとして、指輪型ウェアラブルデバイス「Ring」など、さまざまな製品の開発に携わる。ソフトからハードまで幅広い技術を持つ平沼と西垣は、「デジタル平面を超えてリアルに絡めるサービスがやりたい」という部分で意見が一致。それを形にすべくPayPal主催の別のハッカソンに出場し、#SnSnapの原型となる作品を作って準優勝した。

ハッカソンのようなオープンな場に、こうした出会いがあること自体は多くの人が知っている。にもかかわらず参加をためらうのには、自分の持っているアイデアを公開することへの抵抗感があるようだ。だが、西垣はそうしたことを恐れない。

重要なのは、情報を発した後に、いかに素早くアクションを起こせるかってところだけ

「起業してからもそうなんですけど、自分がいいと思ったことは隠すことなく、社内外を問わず発しています。そうするとフィードバックがもらえるから、自分でも思ってもみなかった方向にアイデアが膨らんだり、そこから賛同する仲間ができたりする。その結果、自分の頭の中で隠して進めるよりも高速で進むことがあるんです。重要なのは、情報を発した後に、いかに素早くアクションを起こせるかってところだけ。発するだけでアクションしなかったら誰かにやられて終わりだけれど、反応を見て良かったらすぐに行動すれば、絶対自分がいちばん有利なはずなんで」

そうして事業化した#SnSnapはいきなり軌道に乗った。これも、ハッカソンに出て、アイデアの価値を世に問うたからこそだと西垣は言う。

「ハッカソンは準優勝だったんですが、その審査員の方々の反応もよくて、いちばん早くビジネスになりそうと言ってくれたことに背中を押されて、事業化に踏み切りました。ベータ版を作ってイベント会場に置いていたら代理店の人に声をかけられて、そこからフライングタイガーのお仕事をいただいて。TechCrunch Japan編集長の西村賢さんがそれを記事にしてくれて、一気に火がつきました」

いまでは、#SnSnapの新規案件は6割強がクライアント側からの問い合わせだという。ブランドから直接、西垣のSNSにDMで問い合わせがくるケースも多く、そのほとんどが口コミ経由であるため、当然成約率も高い。

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西垣は、API(アプリケーション連携)の承認を得るために渡米。Instagram担当者と直接打ち合わせし、承認基準を具体的にヒアリング。ヒアリングした内容を元に申請を行い、大企業でも通ることが難しい難関の審査を突破した。

人種のるつぼで身につけたコミュニケーション術と人脈

相手が有名人だったり、自分があまり知らないタイプの人たちの集まりだったりしても、まったく臆することなく自分から声をかけるのが西垣のコミュニケーションのスタイルだ。展示会などに行っても、「営業担当を含めても自分がいちばん名刺を多く獲得できる自信がある」と豪語する。

それはビジネスという目的以上に、好奇心に駆られての行動だと西垣は言う。

「知らない業界の人と話せば、それだけ新しい学びがあるから。例えばうちはファッション、ビューティー系のクライアントが多いんですけど、彼らの考える美しさとIT畑にいるぼくらの感覚には、最初は大きな隔たりがありました。彼らは色校とかでも紙の質にまで徹底的にこだわるので、20パターン印刷してイタリアまで送ったり。台紙の折れ線が「ラグジュアリーじゃない」とダメ出しされたり......。折れ線がラグジュアリーかどうかなんて、最初は『何を言っているんだ?』という感じなんですけど、でもコミュニケーションを重ねていくと、『これはあり』『これはなし』という感覚が、自分の中にも芽生えてくるんですよね。そうやって新しいことを学ぶのは、純粋に面白いじゃないですか」

こうしたコミュニケーションがナチュラルにできるのは、アメリカに留学していた時期の経験が大きいと西垣は言う。

「大学内にはアジア系もいればホワイトもブラックもいる。それぞれ趣味趣向がまったく違うさまざまな学生が世界中から集まっているから、自分から話しかけないとそれぞれが何を考えているかはわからない。そうした環境にいるうちに、自然とコミュニケーションが取れるようになっていったんだと思います」

人種のるつぼに留学したことで得たものは、こうしたコミュニケーションのやり方だけではない。留学先での出会い、当時培ったネットワークそのものが、いまに活きているという側面もある。

世界中に留学時代の友人がいて、必要な人をつないでくれる。もちろん助け合いなので、こちらから紹介することも

「#SnSnapはアジアやヨーロッパでもすでに使われ始めているんですけど、そうした世界展開を考えた時に、現地でそれを支えてくれるのが留学時代の友人だったりするんです。世界中のどこへ行ってもだいたい当時の知り合いがいて、必要な人をつないでくれる。もちろん助け合いなので、こちらから紹介することもしょっちゅうあります。それがお互いのビジネスにつながっているんです」

イノベーションがシリコンバレーで立て続けに起きているというのも、そこに一因があるのではないか、と西垣は続ける。

「あそこへ留学してくる学生は恐ろしいほどの金持ちか、奨学金をもらえるくらいの秀才のどちらか。それが卒業とともに世界中に散らばって、なおFacebookなどでつながり続けることができる。実際にそういう人間関係で多くの人やお金が動いていたりします。助け合うパートナーもいて、投資してくれる人もいて、作ったサービスは一気に世界に広がる。だからアメリカは最強なんじゃないかなって思うんです」

#SnSnapは約1年半で350件以上の導入実績を上げた。2016年12月には、ニューホライズンキャピタルに株式譲渡。さらなる事業拡大を図っている。

アップルストアで芽生えた起業家精神

西垣は留学する直前まで、地元名古屋のアップルストアで4年間にわたって働いていた経歴を持つ。そこで日常的に交わされるグローバルなコミュニケーションがきっかけとなり、西垣は海を渡ることを決めたのだという。アップルストアでの経験は、さまざまな形で自分の人生に活きていると西垣は言う。起業を志したというのもそのひとつだ。

西垣がアップルストアで働き始めた2008年は、まだiPhoneの発売以前。そこからiPod touch、iPhone、iPad、MacBook Airと次々に新商品が生まれ、2012年にアップルは株価最高値になる。

「新商品が発売になるたびに店の前には長蛇の列ができた。それまではオタクしかいなかった店内に、女子高生やおばあちゃんまでが訪れるようになったんです。おそらくこの4年間は、アップルが世の中をもっとも爆発的に変えた時期。その様子を目の前で見たことで、自分もITで世の中を変えたいと思うようになりました」

#SnSnapはリアルとデジタルの交差点のようなサービスだ。リアルな接点の重要性というのも、当時のアップルストアが体現していたことだと西垣は言う。

「値段だけであれば量販店で買う方が安いかもしれないけれど、値段で買った人は次に別の安い商品が出れば、そっちへ流れてしまう。アップルストアが提供していたのは、それとは別の価値なんです。いまでこそカスタマージャーニーという言葉をいろいろなところで聞くようになりましたが、アップルストアは当時から、『体験を生み出すリアルポイント』と銘打っていました。そこに行くだけでワクワクするとか、商品を手にしている自分をカッコよく感じるとか、そういう体験をした人は、たとえそこで買わなくても、結果としてファンになってくれる。そのことをアップルストアは教えてくれたんです」

SnSnapが掲げる3つのミッションの一つに「Enriching Lives」というものがある。日本語に訳せば「実りある人生を」。実はこれも、当時のアップルにあった理念をそのまま拝借したものだ。「プロダクトやサービスに関わる全ての社員やその家族、お客さまに実りあるサービスを届ける」という意味だという。

ストアという現場で働くいち大学生は、見方によっては会社の末端でしかないかもしれない。しかし、その位置にいた西垣にも、この精神はしっかりと受け継がれている。この一事を取ってみても、当時のアップルでは理念がしっかりと実践されていたことがわかる。

「新しいiPhoneが出たら店員と客がハイタッチするような、あの感覚が自分の中にいまも生きているんです」。人と人との接点を作るサービスを手がける次世代の旗手は、アップルストアで培ったオープンでGiverな精神を、いまなお体現しているようだ。