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AppsFlyer

グーグルやアップルにAppsFlyerの真似はできない。いまアプリに解析専門のサービスが求められる理由

イスラエル発、世界最大のマーケットシェアを誇る、モバイル広告のアトリビューション分析サービス「AppsFlyer(アップスフライヤー)」。現在Eightで採用募集を行っているカントリーマネジャーを直撃。今後、日本でさらなるシェア拡大を狙うビジョンに迫る。

日本のモバイルトラッキングツールを巡る勢力図が、いままさに変わろうとしている。

モバイルトラッキングツールとは、モバイルアプリがどの広告を経由してインストールされたのかを測定するためのツールだ。企業とユーザーの接点としてのモバイルアプリの重要性が高まるのに合わせて、プロモーションを効果的に行うための測定ツールの重要性も、日に日に高まってきている。

日本市場におけるモバイルトラッキングツールは、代理店企業が提供する国産プロダクトが長くシェアを独占してきた。そこに2015年秋から本格参入してきたのが、イスラエルに本社をもつAppsFlyer(アップスフライヤー)である。

グローバル市場でトップシェアを誇る同社は、日本でもすでに3割のシェアを獲得。いまなお右肩上がりの成長を続けているという。

AppsFlyerの日本におけるカントリーマネジャーを務めるのは、大坪直哉。かつて在籍したOvertureでは検索連動型広告を、Criteoではリターゲティング広告を、それぞれ日本ではまだ知られていなかった時代にいち早く手掛け、アドテク業界を牽引してきたキーマンのひとりだ。

そんな大坪によれば、この業界には大きな事業成長の可能性があるだけでなく、グーグルやアップルといったテック界の巨人たちでさえ、参入したくても参入できない特殊性があるのだという。

大坪の目に映るモバイルトラッキングツールの可能性とはいかなるもので、AppsFlyerはそこでどのような役回りを演じようというのか。

AppsFlyerのCEO、オレン・カニエルから全幅の信頼を得ている大坪は、「日本の代表として、いろいろ自由にやって欲しい」と国内の事業を任されているという。

──イスラエルの会社ということであまり馴染みがないのですが、AppsFlyerの概要から教えてください。

最初に、ぼくらが扱っているモバイルトラッキングツールの業界全体の話をすると、最近になってアプリのトラッキングというところに企業の注目が集まっています。

なぜかといえば、まず一般的なユーザーがスマホを使う時間を100とした時に、80をアプリに使う時代になってきている。企業のマーケターはユーザーとの接点を探していると思うのですが、それがもうモバイルWebではなく、アプリになってきているわけです。

だから多くの企業がアプリマーケティングをやろうとするのですが、アプリにはWebとは違って、インストールという作法があります。効率的にインストールしてもらうためには、ユーザーがどこの広告を経由してインストールしたのか、どういうクリエイティブを出した時にインストールにつながったのかを全部測る必要があります。そのためにあるのが、モバイルトラッキングツールです。

こうしたモバイルトラッキングツールのグローバルマーケットの中で、AppsFlyerは昨年末時点で6割を超えるシェアを持っています。現在ではその数字がもっと伸びているはずです。

──圧倒的ですね。他の主要なプレーヤーも国外の企業ですか?

そうですね。グローバルのトラフィックから見ると、日本のマーケットは相対的に小さいので。

日本にフォーカスして考えると、サイバーエージェントの子会社のCyberZが出している「F.O.X」と、アドウェイズの「PartyTrack」というドミナントなものが、長く市場を二分してきました。

ただ、これらはどちらも広告代理店が出しているツールです。野球に例えるなら、選手が審判も兼任してしまっているような状態です。

──どういうことでしょう?

計測ツールは審判のようなものです。メディアや代理店がやっているパフォーマンスをニュートラルな立場からチェックして、どのメディアがインストール数を稼いでいるかとか、どのクリエイティブが効果の出ている良いクリエイティブなのかといった、ストライク/ボール、アウト/セーフを判断する。

一方で代理店やメディアは選手だから、パフォーマンスを見せる立場です。その選手が自分でボールを投げておきながら、「ストライク!」と判定してしまうというのはどうなのか、ということです。

そういう声はクライアント企業の間にも昔からありましたが、これまでは代替するソリューションがありませんでした。そこにぼくらのようなニュートラルなツールが海外から入ってきて、急速に受け入れられ始めているというのが、日本市場の現在の状況です。

グローバルで圧倒的なシェアを獲得している彼らの日本への参入は、IT・広告業界に衝撃をもたらしている。

──日本でも順調にシェアを伸ばしている?

2015年の10月に日本にオフィスを開いたのですが、その時点ではまだ誰もAppsFlyerを知らないような状態でした。それが昨年1年間で、シェア30%というところまで伸びています。おそらくさらに1年後くらいには、グローバルのマーケットと同程度の数字になっていくと思います。

というのも、ぼくは以前Overtureという会社にいたのですが、その頃は、日本ではまだ誰も検索連動型広告なんて知らなかった。それが2、3年後には、日本でも検索広告なんて当たり前というふうになりました。

そのあとに入ったCriteoという会社ではリターゲティング、パフォーマンスバナーを扱っていたのですが、それもだいたい2、3年くらいかけて日本にトレンドが来ました。海外で起こっていることが3年後くらいに日本でも起こるというのが、この業界の傾向と言えるのではないかと思います。

──Overture、Criteoと長く広告業界にいる大坪さんから見て、モバイルトラッキングツールを扱うことの面白さってどこにあると思いますか?

大きく3つあると思っています。1つは、先ほど申し上げた通りアプリマーケティングの重要度が増していますから、市場自体が毎年大きくなっています。

2つめは、参入障壁がものすごく高いことです。グローバルな市場で見ると、計測ツールを扱うメジャーな会社はかつて6社程度あったのですが、いまでは淘汰されて、実質的にAppsFlyerを含めた2強になっています。

そこに新たに入ってこようと思うと、それはもう大変です。計測ツールというからにはフェイスブックやグーグルといったメジャーなメディアで効果を計測できなければ話にならないのですが、そうしたプレイヤーとパートナーになるのが、まず非常に難しい。

パイは右肩上がりに大きくなる。その中で離脱していくプレーヤーを尻目に、残った限られた会社でそれを分ければいいというのが、この業界の構造です。こんな業界、他にないですよね?

とはいえ、インターネット業界ではこのような状況で我が世の春を謳歌していたら、フェイスブックとかグーグルとかアマゾンとかがやってきて、「はいどいてどいて〜、今日からここはぼくらの街ですよ〜(笑)」と言ってすべて持っていってしまうということがよくありますよね?

ところが、そうした巨人たちも参入したくてもできないというのが、3つめのポイントなんです。

──巨人たちが参入できないのはどうしてですか?

さっきの審判-選手問題を思い出してください。フェイスブックもグーグルもアマゾンもアップルも、みんな広告をメインにやっている選手なんですよ。ということは審判になれないわけです。

いや、やろうとすることはできます。でも、自分で広告をやっておいて「その効果はこうですよ」とやったら、みんな「それって本当?」となってしまう。

グーグルも「Firebase」というのを出して、一時期盛り上がったのですが、いまでは計測ツールとしてではなく、主にプッシュ通知の機能を提供するツールとして使われるに止まっています。

なので巨人たちも、いまでは審判業務は審判専業のところに任せましょう、となっているのです。

もちろん参入障壁の高さと求められる精度の高さというのは比例するので、プロダクトのレベルを維持できればという条件付きではありますが、以上のような理由から、すごく魅力的な業界だと思いますね。

iPhoneケースは「Candy Crush」。「顧客なんですか?」と聞くと、「いや、ずっと恋い焦がれているクライアントです(笑)」。

──確かにそういう気がしてきました。でもそこでお聞きしたいのは、なぜAppsFlyerだけがライバルとの競争に勝ち残れたのかということです。

プロダクトですね、いちばんは。うちにしかできないことがたくさんあるので。例えば、アプリがアンインストールされた数が分かるのもAppsFlyerだけです。

アプリにはインストールという作法があれば、アンインストールという作法もある。でもそれまではこれが分からなかったものだから、メディアの価値は入り口だけで評価されていたんです。

2つのメディアをインストール数だけで比較すると、当然インストール数が多いメディアにバジェットを回そうということになりますが、アンインストール数も加味して考えれば、残存ユーザー数は逆のメディアの方が多かった、ということもありえます。

クリエイティブ単位でもアンインストール数が計測できるので、以前よりもずっときめ細かなアプローチでユーザーリテンションを図ることができるようになりました。

いま挙げたのはごく一例であって、こういうことが他にもいっぱいある。他社さんよりだいたい2年くらい先を行くことができていると自負しています。

──なぜそれが実現できるのでしょう? 単純に開発力なのか......。

うちのプロダクトがいいというのには、視点がまったくブレていないというところが大きい気がしますね。

というのも、ぼくらのミッションの最上位にくるのは、「お客さまの成功がぼくらの成功である」というもので、すべてはそこが軸になっている。一つひとつのコンセプトや機能はすべて、「お客さまのイシューを解決する」という根本的なポリシーから派生したものです。

だからクライアントの声を元に、困ったことがあれば解決しましょうというアプローチでどんどん機能を作っていくことができるわけです。最近リリースした「Data Locker」という、クライアントがローデータを貯めておけるサービスはその一例で、日本のゲーム会社のgumiさんのお声が元になってできました。

──現場からのフィードバックをうまく開発につなげるための仕組みのようなものもあるのですか?

組織のあり方がすごくフラットなのがその要因かと思います。CEOと全メンバーとの距離がめちゃくちゃ近いんです。

例えばオープンオフィスという時間が設けられていて、誰でも彼のオフィススペースへ行って何を言ってもいいということになっていたり、Slackで直接彼にメッセージを送ることができたり。違うと思うことがあったら、CEOが相手であっても違うと言っていいというカルチャーもあります。

ぼく自身もお客さまの声を吸い上げて、それをCEOに会った時に直接伝えることができる。「日本でビジネスを大成功させるための条件を一つだけ挙げるとしたら?」「代理店対応です」「分かった」みたいに、ちゃんと一人ひとりの声に耳を傾けてくれるプロセスがあるというのは、うちのいいところですね。

代理店カルチャーは日本だけではない。韓国やアメリカの東海岸でも状況は似ている。そこで、大坪は本社に代理店対策を要請。それによって代理店向けの機能開発が進み、いまでは本社に専任の担当者もいるという。

──なるほど。一方で、先ほど少し触れていただいたような日本というマーケットの特殊性を考えると、グローバルな戦略とは違う、何か特別なやり方をする必要もありますよね?

そのために考えていることは大きく2点あります。

1つは日本では代理店カルチャーというか、海外と違って代理店の果たす役割というのがすごく大きいと思うのです。海外のそれとは全く違う。実際、AppsFlyerとクライアントとの間に代理店さまが入るケースが多いです。

なので、いかに代理店の方々が使いやすい環境を準備できるのか。クライアント視点で言うと、代理店を使っても成果をタイムリーに理解できる仕組みを作ることが重要だと思っています。

もう1点は、中国とかインドとか、人口の多いマーケットではユーザー獲得にフォーカスしている企業が多いのに比べ、日本の場合はマーケットが成熟しているので、ユーザー獲得に加えリテンションにもフォーカスしたいクライアントが多い。

しかしそうした時に、リテンションに関する考え方が各国によって違うケースがあるので、日本のマーケットに合った形でリテンション施策ができるようなプロダクト・機能開発を促進していきたいとも思っています。

──そういった日本のマーケットならではのニーズをうまく汲み取って機能改善を加速する上で、どういう人がチームに加わったらいいと考えていますか?

1つは代理店側にいたことのある人ですね。実際、この5月から入社したのも以前代理店にいた人間で、代理店だったらどういう情報が欲しいのかとか、クライアントとの板挟みになってこういうことに困っているだとか、代理店の視点を持ち合わせています。ぼく自身、代理店で働いた経験がないので、彼のような人から学べるところは多いと感じています。

もう1つは、現状うちのチームにはどちらかというとメディア側にいた人間が多いので、クライアント側にいた人が加わると、さらによくなると思います。例えばゲーム業界だったり、旅行系のクライアントだったり、プロモーションに関わっていた人が入ってくると、ぼくの知らないディープなレベルでその業界の特徴をフィードバックしてくれたり、クライアントのニーズをより深く理解できると考えています。

欧米に本社がある米Overture、仏Criteoは本国の意向が最優先される中央集権的なところが多少あったが、イスラエルのAppsFlyerの企業文化は、とてもフラットで、グローバルの全メンバーの距離がかなり近く感じられるという。

──では、そうしたチームで日本での普及を推進していったとして、その先にどういう世界を作っていきたいというお考えがあれば教えてください。

日本での売り上げのレベルはグローバルレベルで見るとまだまだ小さいので、当面はなるべく早く他のマーケットに追いつき、追い越したいというのがあります。そしてその先には、アプリを作る人、アプリに関わる人たちから「相談事はAppsFlyer」みたいに思ってもらえるような立ち位置になれたらすごくいいなと思います。

というのも、ぼくらの立場って、カオスマップとも言われるいろんなプレーヤーがひしめくアドテク業界の表面上にはいなくて、もっと俯瞰するような場所から、ニュートラルな視点で彼らを評価するものなんです。

いまはまだ、アプリ開発といえばデベロッパーが主人公で、ぼくらの業界はそこまで認知もリスペクトもされていないと思うのですが、そういうニュートラルな立場だからこそ生み出せる価値もあると思うので、そこをきちんと評価していただいた上で、頼られる存在になれたらいいなと思っています。

もちろんそれにはすごく時間がかかると思いますが、中国ではもうシェアが7〜8割もあって、そういう立ち位置になりつつあるのかな、とも思うので。

──中国でそんなに先行できたのには、何か理由があるのですか?

どこよりも早くマーケットに入ったからというのがあると思いますが、もう一つには、イスラエル人と中国人のメンタリティが合っていたのではないか、と。

──というと?

日本人って石橋を叩いて渡るところがあると思うんですが、イスラエル人、中国人は「まずやってみる」。それで、失敗したらその時に考えるというところがあると思うんです。

関連して、先日中国を訪れた際に面白い光景を目にしました。中国でいま、どこでも乗り捨てていいバイクシェアリングのビジネスが流行っているのをご存知ですか?

最初は1社が始めたのですが、それがうまくいったということで、真似をする会社がどんどん出てきて。いまでは一部の業者が、競合のタイヤに穴を開けてパンクをさせて、オペレーションができなくしてしまうところまで加熱しているんです。

──めちゃくちゃですね。

そうなんです。でも、最初にこのビジネスを始めた会社はこういう事態を受けて、空気を必要としない、パンクレスタイヤを開発することに成功したんですよ!

最近、中国に出張した際に見かけたバイクシェアリングの"穴空きタイヤ"。競合が仕掛けるパンク対策として導入されたものだ。

これを見てぼくは、コンフリクトとか摩擦とか、そういうところからイノベーションは生まれるんだな、と改めて気づかされました。日本ってそれと比べると平和で、なかなかそういうイシューが顕在化しないのではないかと思うんです。

乗り捨てのサービスをやるなんてアイデアが出たら、駅前の整理はどうするんだとか、社会全体の幸せとかすぐにそういう出る杭は打つ的な議論が始まって、ユーザーのイシューをまず解決するってことにはならない。

中国はどちらかというと、「そこが問題ならまず解決しようぜ!」的なところがあるので、イスラエルの「考える前に走れ」的なカルチャーとすごく相性がいいと思うんです。

──それはまさに、先ほどお話いただいたAppsFlyerの組織としての強みとも合致しますね。お客さまのイシューから考えて、失敗してもいいからまずやってみる。また、フラットな組織だからこそそれをスピーディーに機能改善につなげられるという......。

そうですね。だからそういう失敗を許容できるカルチャーを日本のチームでも作っていきたいし、日本という国全体にそういう文化を作っていきたい。

日本っていまは失敗できない、したらおしまい的な、どこか閉塞的なところがあって。それって多分、教育によるところが大きくて、徐々にそれは変わってきているとは思うのですが、そうしたものを加速させられるエバンジェリストのようになれればなと思っています。

──AppsFlyerが成功してみせることで、その体現者になる?

それもありますし、サービスを通じてということもありますね。うちのサービスを使えば、Aという施策もBという施策もニュートラルに効果を測ることができるので、挑戦した数だけ次の成功につながるフィードバックが得られるわけです。だからこそサービスを磨いていくことを通じて、「失敗を恐れずどんどんやってみましょうよ」と背中を押すようなことができるのではないかな、と思っています。

年初の全社集会の様子。過去2年間で収益は500%成長。12のグローバルオフィスで従業員数は40人から240人へ拡大した。1月17日に発表された5600万ドルのシリーズC資金調達の話に、大坪含め、みな喜びの声をあげている。