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CAREER PROMOTION(アクセンチュア)

四重苦の金融はいま、どの業界よりもデジタルが進んでいる──アクセンチュア執行役員・中野将志

20年以上、アクセンチュアで金融業界の変革に携わってきた中野将志を直撃。先進的なデジタルテクノロジーを導入する取り組みは、金融が他のどの業界よりも先を行っている。「Change」を好む人にとって、いま金融のコンサルティングは圧倒的に面白いという。

日本の金融業界は、いま「四重苦」に陥っている。

国内の金融市場はもはや拡大を期待できるフェーズになく、それどころか異業種の参入により、既存の金融機関は縄張りを侵されているというのが現実だ。つまり生き残るには、世界に打って出るしかない。

ところがグローバルな金融市場は、頻発するテロへの対策などの文脈でどんどんと規制が強化されている。そのため、各金融機関の規制対応にかかるコストは増大する一方だ。なおかつ日本の金融機関には、バブル崩壊以降、若い社員を積極採用してこなかったという問題もある。つまり、人が絶対的に足りない(あるいは近い将来に足りなくなる)というリスクを抱えている。

しかし、アクセンチュアで20年以上にわたって国内外の金融業界を見てきた中野将志によると、この四重苦があるからこそ、いま金融は先進的なデジタルテクノロジーの開発が、あらゆる業界の中で最も進んでいるという。

「日本の金融機関はいま、非常に面白い時期にある」とまで言う彼の目には、いったいどのような可能性が映っているのだろうか。企業の変革を担うコンサルタントとして、どこに面白さを見出しているのか。

常に「Change」を求めるアティチュードに、その答えはあった。

経済の縮小、規制の強化、人手不足、異業種の参入。金融業にはこの四重苦があるからこそ、どこよりも変革のニーズがある。

──日本の金融業界ではいま、何が起きているのでしょうか。

最近になって、「テクノロジーを使って何か新しいことをやらなければいけない」とさかんに言われる背景には、大きく4つの要因があります。

まず、日本というマーケットでこのまま成長し続けることは難しくなってきています。人口は減るし、経済が成長しているわけでもない。企業の設備投資もそんなにない。だからビジネスを拡大しようと思ったら、海外に出ていかなければならないタイミングにきているということです。

一方で、金融機関への規制はどんどん厳しくなってきています。グローバルで見てもそうだし、国内は一部には緩やかにという動きがあるものの、基本的には金融庁の金融機関に対する姿勢は厳しい。そのため、規制に対する取り組みの負荷も大きくなってきているんです。

しかし、日本の金融機関はバブル以降、リーマン・ショックの影響などもあり、社員をあまり採用してこなかったという問題があります。年齢構成のピラミッドは40代以下が少ないいびつな形になっているため、シニア層のリタイア後を見据えて、生産性を高めるための手を打たなければ立ちいかなくなる状況にあります。

さらに、楽天やグーグル、アマゾンといった異業種が決済周りを中心に金融ビジネスに参入する動きがあり、自分たちの市場が侵され始めているという要因もある。

こうした「四重苦」ともいえる状況に置かれるなかで、生産性を上げなければならないのはもちろんですが、異業種を積極的に取り込むなどして、新しいテクノロジーを使ったビジネス展開を模索する動きが出てきているというのが、いま金融業界で起きていることです。

業界全体としてまさにトランスフォームしようとしているタイミングなので、そういう変化を楽しめる人からすれば、非常に面白い時期にあると言えるでしょう。

人工知能の導入も、金融の世界ではすでにアイデアフェーズに入ってきているという。

──具体的にはテクノロジーをどう活用できますか。

やるべきことは、いろいろあります。

例えば、金融機関が迫られているグローバルな規制対応の一つに、アンチマネーロンダリングがあります。ある国で口座を開設しようとした人や、その送金先が信頼に足りるかどうかを調べるのは、社内外のさまざまなデータを照合する非常に手間のかかる作業です。

この作業はこれまで人が行ってきましたが、これを「Robotic Process Automation(RPA)」の技術で代替するという動きが世界中で進んでいます。さらにデータを照合するというプロセスだけではなく、その先にある判断の部分に人工知能を取り入れようというアイデアもあります。

──現時点でどれくらい実現しているのですか。

RPAの活用は、世界レベルで見ればかなり進んでいます。最も進んでいるのは欧州で、日本はそれより2年ほど遅れているでしょうか。

なぜ欧州の方が進んでいるかと言えば、グローバルバンクという意味では日本の金融機関よりも欧州の方がランクは上なので、その分、厳しい規制に対応する必要性に切実に迫られていたからです。

欧州の金融機関が、こうした「誰でもできるけれど手間のかかる作業」をロボットにより代替するという発想で動いていたのに対し、日本の金融機関は一足とびに、コールセンターへのディープラーニングの活用などAIを使ってスーパーマンをつくる発想で動いていました。そうした発想の違いが、短期的な成果の差として表れたと表現することもできるでしょう。

その後、日本の金融機関もグローバルにビジネスを展開するようになり、規制対策としてロボットの活用は随分と進んでいます。先ほども触れたように、日本には欧州の金融機関にはない社員不足という問題がありますから、「ビジネスを進展させるのは必要性である」という観点から考えれば、今後日本がこの分野で欧州を逆転する可能性も十分あるでしょう。

──ロボット活用という点で、他の業界と比べて金融業界はどういうフェーズにあるのでしょうか。

国内の業界で比べると、金融業界はかなり進んでいる方だと思います。実際、アクセンチュアで扱っているプロジェクトを見渡しても、RPAに関する案件は圧倒的に金融業界に多いです。

それだけ、生産性を高めないといけないという必要性に迫られているということでしょう。いわゆる産業用ロボットのようなものは他業界にもありますが、ホワイトカラーのデスクトップの仕事をロボットで代替するというのは、金融業界の業務により多くのニーズがあります。

おそらく、金融業界から始まったものが他の業界へと広まっていくというのが、大きな流れの向きではないでしょうか。

アクセンチュアでは企業経営の変革に携わる機会が多い。「Change」を好む人には打ってつけの場所だ。

──それは金融業界で働く面白さのひとつと言えそうですが、となると、そうした変革を担える人材は現状、金融業界の中にしかいない?

金融機関の中にもいませんよ。なぜなら、企業活動には現在進行形で動いている事業を回す「Run」と、次の成長のためにそれを大きく変革する「Change」の両方が必要ですが、各企業が大きな変革を迫られるタイミングというのは、10年に1度あるかないかです。つまり、企業の中で働く人は、Runのスペシャリストであって、Changeに関しては素人である可能性が高いんです。

その点、われわれコンサルタントはつねにどこかの企業のChangeの現場にいるわけですから、Changeのスペシャリストであるということができます。

加えて、現在のビジネス環境の変化のスピードを考えると、何か新しいビジネスをつくる際にはテクノロジーと業務の両方を理解しているジェネラリストの必要性が高まっています。その点においても、ぼくらのような外部のコンサルタントには優位性があると考えています。

──中野さん自身もテクノロジーに精通している?

もちろん細かいレベルまで深掘りしていけば技術的な知識にキリはないですが、わたし自身も元々はSEとしてキャリアをスタートしました。それから業務コンサルをやり、戦略コンサルをやって、現在のポジションにいます。そういう意味ではぼくもジェネラリスト。アクセンチュアにはそうした人間が揃っているのです。

アクセンチュアには、大きく分けて5つの部門がある。中野が所属する、特定の産業・業界を担当するコンサルティングの他に、産業・業界を横断する、ストラテジー、デジタル、テクノロジー、オペレーションズが設けられている。

──なぜそういう人材が揃っているのでしょうか。

それは会社としての成り立ちに由来しています。元々はアンダーセンコンサルティングという名称でしたが、世の中にさまざまあるオープンソリューションの中からお客様の課題に対してどのソリューションが一番いいのかを提案する、ITコンサルティングというマーケットを最初につくったのが弊社です。

そこから長くビジネスを続けていくうちに、コンサルだけでなく実際にシステムを作るところも担うようになり、現在の「テクノロジー」部門ができました。さらに、その手前にあるビジネス課題を考えるところからやる部門としてできたのが戦略コンサルの「ストラテジー」、運用するところまでを担う部門としてできたのがアウトソーシング事業を担う「オペレーションズ」です。

エンド・トゥ・エンドの幅広い人材が育ちやすいというのは、アクセンチュアがこのような成り立ちできているからこその強みだろうと思います。

──元々そうした興りだったにせよ、時代の流れとともにコンサルティングという仕事を再定義する必要性に迫られた局面もあったのでは?

当然あったと思います。20年以上前でいえば、コンサルタントはいわゆる方法論だけで食えていた時代がありました。しかしいまの時代、そんなものは本屋に行けばいくらでも手に入ります。

では、この時代に求められているコンサルティングとはどんなものなのか。それはビジネスの実装をとことん助けられるか、ビジネスのアイデアを論理的に考えられるかにあると思っています。

いま求められているコンサルティングは、実装をとことん助けられるか、アイデアを論理的に考えられるかにある

さらに、どんなにいい機能だったとしてもインターフェースがダサかったら使ってもらえないという現実がありますから、コンサルティングとはいままでそれほど親和性のなかった、デザインのような領域まで含めて求められてきている。すべてが融合しないとビジネスが成立しない時代になってきているんです。

アクセンチュアはそのことを認めて、自社の組織にそれを取り入れるということをずっとやってきました。そのための買収もするし、そのための人材育成もする、というように。そうしたことが源泉となっているからこそ、お客様企業の社員一人ひとりの行動が変わるところまで、Changeにとことんコミットできるのです。

顧客に対してだけでなく、社内の変革にも積極的な企業文化があり、数年に1回、世界規模で大組織変更が行われる。

──そうした仕事に異業種から転職するとしたら、どんな素養が必要ですか。

何かを変えたいという人、そして効果を出すところまでとことん付き合いたいというマインドセットを持った人は当然向いていると言えます。

新しいものを吸収して自分自身もChangeできることが求められる

ただし、効果を出すためにはお客様企業を変えるだけでなく、自分自身も絶えず変わる必要があります。特定の技術だけしかやりませんというのでは、お客様に対して最適なソリューションを提供することなど望むべくもないですから。

古臭くなったものを捨てて、新しいものをどんどん吸収することで自分自身もChangeできることが、ベーシックに求められるでしょう。

──とはいえ、日常的にはコンサルティングという仕事自体のRunがあるわけで、その中で実際にアップデートし続けるのは難しいことではないですか?

もちろんおっしゃる通りですが、アクセンチュアでは4年に1回くらいの頻度で世界規模の大組織変更があります。これはぼくなりの解釈ですが、そのことにより既得権益をぶっ壊し、全員が新しく自分自身の強みや客観的市場価値、そしてキャリアを考え直さないといけない状況を意図的に作り出しているのではないでしょうか。そしてそれを続けてきたことこそが、アクセンチュアのしぶとさの源泉なのではないかとぼくは思っています。

Changeを楽しめる人なら、どんな業界から来ても活躍できる

──その結果、一時的に生産性が下がることもあり得る?

あると思いますよ。それでも、新しいものが生まれる可能性はそっちの方があるはずですから。アクセンチュアは、そのようにして環境自体がChangeすることすらも楽しめる人なら、あとは一定以上のスペックさえあれば、どんな業界から来たとしても活躍できる場所のある会社だと言えるでしょう。

そして、環境自体がそのように大きく変わるということは、同時にそんな中にあって、自分はどこにいるべきなのか、どう変わるべきなのか、どういうキャリアを歩むのか、どういう価値を提供していきたいのかといったことは、常に考えざるを得ない。そうした個人のプリファレンスをすごく重視するというのも、この会社の特徴だと思います。

変革が好き。だからこそ中野にとって、金融はいま圧倒的に面白いのだ。

──では、中野さん自身にとってのあるべき場所、提供していきたい価値とは?

ぼくは入社以来ずっと金融がらみの仕事をしてきました。入社したのはちょうど金融ビッグバンの起きた直後で、金融手数料の自由化が始まり、外資も入ってきて、業界自体がそれまでの護送船団方式の時代から大きく変わろうとしている時期でした。

同時に、日本はそれまで製造業が強く、金融業界はそれと比べて遅れているとも言われていました。ぼくが金融業にフォーカスして仕事をやってきたのには、こうした遅れているものが世界で通用するものへと変わることに貢献したいという思いがあったからです。

そのモチベーションはいまも変わりません。今後も金融機関が海外で戦っていくためのビジネスのサポートをしていきたいし、先進的なテクノロジーを使って新しいビジネスをつくることに貢献していきたい。いや、新しいビジネスをつくることに関しては支援するだけでなく、一人称で臨みたいとさえ思っています。