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ビジネスネットワーク活用の裏ワザ

「信頼はタグ付けとインプットから生まれる」コラボラボ横田響子が実践するマッチング術

女性ならでの視点から新規事業や新商品を生み出す。女性起業家の活躍が注目される背景に、女性社長のネットワークをもとにした事業支援を行う横田響子の存在は大きい。1900社を超える女性社長コミュニティ「女性社長.net」を運営する彼女の「ビジネスネットワークの裏ワザ」を探る。

Eightユーザーのつながる技術を探る「ビジネスネットワークの裏ワザ」

名刺をEightに取り込むだけではもったいない。あなたのビジネスネットワークをもっと効果的に活用できれば、仕事の課題に対して新たな解決の糸口が見つかるかもしれない。つながりを生かして、ひとりの力では実現できないことを達成していく人たちには、きっと新人研修では教えてくれないビジネスネットワーク活用の"裏ワザ"があるはずだ。

注目のEightユーザーを取材する企画「ビジネスネットワークの裏ワザ」。今回は1900社を超える女性社長コミュニティづくりや、女性社長のネットワークをもとに大企業の新規事業やイノベーションを推進する、株式会社コラボラボ代表の横田響子が登場する。

女性社長が活躍する世の中を目指して

「女性起業家を支援し、女性が活躍する世の中にしたい」と考えた横田は、リクルートを退社後、1年間で200人の女性社長と会うことを決意した。2年目を向かえ、約400人近くの女性社長と出会うなかで、一般的なビジネスパーソンと女性社長の違いや、女性社長ならではの特性が見えてきたという。

「キャリアなしに独立した人、コミュニケーションの取り方や経営に対する向き合い方など、多様な価値観や起業の背景を持つ女性社長はたくさんいます。けれども、そうした人たちが資金難や人脈不足を理由にチャンスを逃している人も多いんです。そうした彼女たちを支援し、事業が継続できるための情報提供やネットワークづくりのためのコミュニティをつくろうと考えました」

2008年に女性社長コミュニティをサポートしながら女性社長を紹介する「女性社長.net」を設立。いまでは、1900社を超える女性社長たちが集まる場にまで成長した。2009年から女性社長約300人を集めた「J300」というイベントを開催。日本全国の女性社長同士のビジネスネットワークを広げている。また女性が活躍できるための政策提言を行うなど、女性経営者の活躍推進の旗振り役として、政府の有識者会議などで積極的に声をあげている存在でもある。

2016年9月からスタートした、フェイスブック社による女性起業家支援プログラムの日本のパートナーとして女性社長.netが企画運営を担当。SNSのビジネス活用や企業全般に対するマーケティング・セミナーを実施していくという。

裏ワザ1. 相手を「タグ付け」して、つながりの可能性を広げていく

「女性社長.net」は、登録制、女性社長限定のクローズドコミュニティだ。創業補助金の情報や申請のアドバイス、企業からの案件相談などを会員向けに発信している。相互に貢献し合うコミュニティを通じて、女性社長同士が互いに成長しあう場づくりを意識している。

日々多くの女性社長やビジネスマンと出会うなかで、横田は独自の手法で相手の特徴を把握するようになったという。

「初対面の人と会ったときには、その人の強みや興味関心、出身地やいま何を求めているかを引き出し、自分の中でタグ付けしておきます。その人のタグ付けが増えれば増えるほど、次につながるご縁をつくりやすいですからね」

コラボラボのもとには、日々さまざまな企業から相談や紹介の案件が舞い込んでくる。そうした自分に来た案件に対して、女性社長のコミュニティ内に投げかけ、仕事につなげる紹介も積極的に行っている。投げかけに対して、情報に適切な回答をしてくるかどうかで、それぞれの特徴やPRポイントが明確になってくる。また、日々のやりとりの積み重ねから、その人の仕事の仕方も見えてくる。コミュニティに投げつつも、自分の頭の中にあるタグに引っかかる人に対して個別打診するなど、タグをきっかけに積極的につながりをつくっている。

「相手のことを知る大きなポイントは、一緒に仕事をすること。その時に気をつけていることは、いままで仕事をつないだことがない人にもできるだけ紹介すること。日々の対話をきっかけにその人のことを知り、タグを増やしながら情報をアップデートしていくことを心がけています」

常に相手の最新の状態を把握しようと心がけている横田は、その膨大なデータベースを通じたマッチングに定評があるという。横田ならではのネットワーク把握術とマッチングの精度を通じた信頼の積み重ねによって、いまや大企業だけでなく行政からも仕事の相談が舞い込むようになった。

「世の中には、自分が知らないだけで面白い人はたくさんいます。可能性を潰さないよう、思い込みをせずに常に新しい人との出会いに奔走しています」

裏ワザ2. インプットを増やし、相手との会話の接点をつくり出す 

タグを増やすためには、絶対的なインプットの量が必要だと横田は話す。その際に意識していることは、自分の得意領域だけでなく、これまで見たことも聞いたこともないさまざまな分野にも興味関心を向けること。そこから相手との共通の話題が生まれ、相手を知るきっかけになるという。

「多種多様なインプットを増やすことで、色んな情報が自分のもとに入ってきます。その情報が会話のきっかけになります。相手の関心事に近いもので会話できないと、コミュニケーションは生まれませんからね。また、NewsPicksでは自分が興味関心が高い分野の記事にコメントをするだけでなく、ビジネスパーソンの関心が高い分野や新しいITツールなどについても記事を読み、意見をコメントとしてアウトプットを試みています。自分の意見を出したうえで、立場によって異なる他の専門家や一般ユーザーの解説・意見・感想を通じ、自分の理解度をはかったり相対的立ち位置を把握することを意識して取り入れています」

さまざまなコミュニティでインプットや発言を行っている横田。政府の有識者会議や事業仕分けなどの会議に参加することも、有効なインプットが入るひとつの機会であり、横田にとってはすべてが新たな情報との出会いだという。自身の知識欲に素直になり、知らない世界を知るものほど楽しいものはない、と話す。

「タグが相手に対してのインプットであれば、そのタグを生み出すために自分の知識や経験を豊かにするインプットも重要なんです。そこから見えてきた情報が、次なる紹介やマッチングに生きてくるのです」

インプットをもとに相手との情報の接点をつくり出すこと。相手の特徴やタグをもとに、フラットにゼロベースな観点でその人興味関心や潜在的な意識を想像すること。そうした想像力が、横田なりのマッチングの妙を生み出す原点となっている。

裏ワザ3. チャンスを見極め、「ここぞ」というときに人に頼る

コミュニティづくりやマッチングだけでなく、横田自身も大きな挑戦の場に何度も踏み出している。2009年から開催しているJ300は、まさに横田自身が大きなチャレンジに挑んだ取り組みのひとつでもある。

「2009年当時は、リーマンショック後で日本全体が停滞していました。だからこそ女性社長が300人集まるという、いままでにないイベントを企画することで、日本全体が元気になるきっかけになれば、と思ったんです」

誰も実現したことがない企画。「こうなったらいい」と思う世界観を描き、そこに現実を追いつかせるようなチャレンジが横田を駆り出していく。そうした自身の大きなチャレンジに、これまでの自身の信頼があるから周囲も快く協力してくれる。結果、これまで横浜市長の林文子さん、竹中平蔵さん、秋元康さんをはじめ実力派女性起業家の協力を得てきた。

「自分自身のチャンスを見定め、ここぞ!と勝負するときにいかに人に頼ることができるか。それまでの自分自身の振舞いの積み重ねで、チャンスを活かせるかどうかが変わってきます。人へ何かを頼むときは、時と場合をきちんと見極めていくからこそ意味がでてくるんです」

オフィスには、過去にJ300に登壇したゲストらの色紙が飾られている。女性経営者に対する応援は、日本社会の新たな活力となることを横田は信じている。

2009年に開催したJ300を皮切りに、2回目、3回目と会を重ねるごとにイベントの規模も周囲の注目も増してきた。5年目からは、内閣府と協力しながら、上場企業と女性経営者をつなぐマッチング事業に力をいれるようになる。

都内だけでなく、地方開催を軸に日本全国の女性社長を後押しするイベントへと成長したJ300。10拠点を超える女性起業家との協業で地方の女性起業家発掘に、さらに、大企業と女性社長がマッチングするためのビジネスネットワークの場となっている。実際、鉄道会社とIT女性起業家のサービス提携や大手メーカーの新事業開発につながっている。そのきっかけも、横田の最初のチャレンジがあったからこそと言える。

女性社長のチャンスを広げ、新たなチャレンジを後押しすることを目的に横田は活動してきた。次なる展開として、女性起業や女性社長のみならず、大企業もチャレンジする社会になるための仕掛けを考えているという。

「大企業もこれまで以上に新たなチャレンジに積極的になってもらいたいですね。組織を超えた協業が大事。社名の通り、会社としてどれだけのコラボを生み出していけるか。女性社長のチャンスだけでなく、大企業や日本社会全体でこれまで以上に面白いことが生まれる世の中にしていきたいですね」

日本社会全体の新たな可能性を見据えている横田。女性社長の背中を支え、時にチャレンジをあと押しする縁の下の力持ちである。そこで生まれたビジネスネットワークの積み重ねが、次なるイノベーションを生み出す種となっているのだ。

「政府の有識者会議でも、まだまだ女性起業家の活躍やこれからの働き方を支援する声は小さい。自分がやらないといけない、という義務感もありやっています。ベンチャー全体が新陳代謝を起こすエンジンとなるために、自分ができることはできるだけやっていきたいですね」

文/江口晋太朗 撮影/西田香織