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ビジネスネットワークの“ものさし”

「CRAZY WEDDING」森山和彦の仕事は、“楽しい”の連鎖をつくること

完全オーダーメイド・コンセプトウェディングサービスで業界に変革をもたらした「CRAZY WEDDING」。最近、彼らのもとには企業からもビジネスの相談が持ち込まれるようになり、法人向けの新事業を立ち上がった。その求心力の源泉はどこにあるのか。"楽しい"がすべてをドライブしていると語る、代表・森山和彦の仕事術に迫る。

Business Network Labのインタビューシリーズ「ビジネスネットワークのものさし」は、こんな問いを掲げてスタートした。

自分のビジネスネットワークを効果的に活用している人は、

「名刺の枚数」という“ものさし”だけで、

引き出しに眠る名刺の束を数えて満足してはいないはずだ。

彼らはいったいどんな“ものさし”を持っているのだろうか。

今回は、革新的なウェディングプロデュース事業で注目を集める「CRAZY」代表、森山和彦の思考を探る。

2012年に立ち上げた完全オーダーメイドコンセプトウェディングサービス「CRAZY WEDDING」は、5月にテレビ番組「情熱大陸」でも特集されるなど、業界を超えて今年大きな話題を呼んでいる。

森山にとっての“ものさし”は、「楽しい」を共有できる人たち=ファンだ。ファンになってもらえるとCRAZYの名前は広がり、ビジネスの引き合いも増える。そのチャンスを見逃すことなく、森山は自ら客先へと通い、とにかく「楽しい!」と思えるような企画を提案する。

一度でも彼の話を聞けば、本当に何か一緒に面白いことができそうな気になってくるから不思議なものだ。その頭の中はどのような思考になっているのか。CRAZYを率いる頭脳が語る、成功モデルに迫る。

「いまあらゆるビジネスに『リアルな接点』が足りていない」。ウェディング事業の経験を活かして、今度は企業を相手に新たな挑戦に踏み出した。

──ウェディングプロデュース事業で知られるCRAZYですが、最近新しい事業を始められたそうですね。どういったものなのでしょうか。

CRAZY WEDDINGの技術を応用した「CRAZY CREATIVE AGENCY」という、法人向けのサービスです。ぼくらはウェディングでコンセプトから空間デザイン、当日の進行内容まで、ゼロベースで全部つくって、他にはない一体感を生むということをずっとやってきたわけです。そのノウハウを活かして、法人向けにイベントを設計します。

──そのニーズはどこから?

例えばちょうど今日、広告代理店の人が遊びに来ていて、「広告業界の中ですごい人って誰ですか?」と聞いてみたら、博報堂ケトルの嶋浩一郎さんの名前が挙がりました。彼のすごいところは「広告業界の枠組みを変えたことだ」とその方から教わりました。これまではメディアのプランニングだけで十分だったのですが、いまは最終的な「消費者との接点」まで設計することが重要になっているそうです。CRAZYはまさにその「リアルな接点」をずっと極めてきた会社です。

──そこでどうしてCRAZYの力が必要になるのでしょう?

広告代理店の中でも、イベントってそもそも儲かる部署ではないのです。業者扱いのところが多くて、あまりクリエイティブではない。だからイベントって進化していないんです。まず真っ暗になって映像流して...ってなるでしょ。

──たしかに、大体そこから始まりますね。

つまり一般的なパッケージはウェディングだけでなく、企業のイベントにも存在しているということです。例えば多くの主催者はプレゼンテーションとか映像とかだけで企業のメッセージを伝えようしています。その人たちには「空気で伝えようと思ったことはありますか?」と問いたいですね。

──「空気」ですか?

いわゆるイベントの雰囲気、流れている空気感の設計ということです。例えばクリエイティブな空気って存在するんです。その商品が好きだっていう空気も。その空間の中に感謝という空気が溢れている時もあります。

──なるほど。完全オリジナルウェディングを手がけるCRAZYなら、「空気で伝える」技術があるわけですね。

その通りです。世界にひとつしかない、たったふたりを題材にして、そのふたりのことが空気で伝わるかたちで表現するのがCRAZY WEDDINGのやり方です。装飾から椅子の座り心地まで、一つひとつ丁寧に考えてベストなものを選んでいます。その実績を見込んで、最近CRAZYには「ソフト面」の相談が多く集まっています。

──「ソフト面」って何ですか?

例えばこのオフィスを「ハード面」だけで捉えたら、ただの快適なオフィスです。でもここになぜ年間何百人も外部の方が見学にいらっしゃるんですが、それは「自分たちでつくった」というソフト面があるからだと思います。ソフトは面白さや意外性、企画性によって生まれるものです。このオフィスのフローリングは、ハード面だけで見ると4,000枚ほど敷かれています。でも実は社員一人ひとりが磨いていたりと、社員が語ることができるコンテンツがあるのです。ソフト面がなければ、他社のフローリングとさほど差別化できず、見学に訪れる価値の大部分を失ってしまいます。

CRAZYのオフィスは、両国駅から10分ほど歩いた住宅地の中に突如現る4階建ての建物だ。受付の代わりに、1階には訪問者をもてなすカフェを運営している。

──「ソフト」をやることで、他と同じでないものができると?

そうです。

──それが価値になる?

価値になります。

──それがいまいろんなところで足りていないと?

まったく足りていないし、ものすごく大きなニーズを感じています。例えば、イベントを開催するという大きな枠組みはありますが、ただ開催するだけだと期待以上の効果は得られません。

──何でですか?

いまは一人ひとりが日々受け取る情報量が増えているため、発信された情報は瞬間的に消費されてしまいます。消費されないためには記憶にいかに残るかを工夫しなければならない。例えば、頭の中に「おっ!」っていう空白をつくるという方法があります。

──「空白をつくる」とは?

人間は基本的に自分の経験にもとづいて物事を判断します。経験による映像を頭の中に投影するのです。人の話は意識の半分くらいで聞いています。だからまったくわからない話をすると、いままでの経験で理解できなくなるので、相手の意識に空白が生まれるのです。

オフィスを移転した時、業者に頼ることなく、なるべく自分たちで内装をつくることを掲げ、フローリングから壁のペンキ塗りまで、スタッフ総動員で仕上げたという。

──「空白」というのがまだよくわからない。わざわざ難しく話すというわけでもないですよね?

違います。例えば、いまインタビューされている状況で、仮に「インタビューって意味なくない?」とわたしが言えば、あなたの頭に空白が生まれますよね(笑)。

──なるほど(笑)。「え、どういうこと?」って聞き返したくなりますね。

それを意図的にやる、というよりは「ぼくはぼくだから」という独自の世界観がいつもあるような感じです。誰かの言語で話そうっていう感覚や、社会的な枠組みがどうこうという感覚ではないんです。むしろ関係ないとすら思っています。だからぼくが話すと相手に空白が生まれるのです。

──それだと相手に何も理解してもらえないのでは?

結構そんなことなくて、意外に共感してもらえて、結局わかってもらえることが多いのです。感覚としては、みんな普通の話、普通の毎日に飽きてるんだと思うんです。で、相手に空白ができると、もっと理解したいという欲求が生まれて、相手が理解しようと努力するようになるのだと思います。

──いままさにぼくがやっていることですね(笑)

その通り(笑)。ぼくは常に新しい世界が知りたい。だからいつも必死に学んでいます。真剣に「新しい世界をつくるんだ。ぼくはできると思っていますよ」と、人に話すわけです。そして「こういう方法なんですけど...」とぼくなりの方法論を話す。すると「それ新しい! 面白い!」っていう反応が返ってきたりします。

──そうやってこれまでCRAZYの事業を進めてきたわけですね。

はい、その熱量の積み重ねによっていまがある、という感覚です。何か素晴らしいことがやりたいという思いがあって、それをまわりにシェアしている感じです。そうすると、必ず大事な場面でチャンスが巡ってくるのです。

──例えばどんなチャンスですか?

誰かが助けてくれて、使えなかった場所が使えるようになったり。SNSで発信したら偶然新規の案件につながったり...。でも頑張って"ネットワーク"をつくったり、「人のつながりを大事にしよう!」などと特別に意識しているわけではありません。自分がまわりに対して丁寧に誠実に生きることを大事にしているのです。自分の思いがあって、自分の仕事に責任を持っていて、全部の仕事に全力で取り組めば、必ず人は集まってきます。なぜかというと、その全力がクレイジーで、それが差別化になるくらいやるからです。

社員は現在約65人。美大から新卒で入ってきて会場の装飾づくりに励む人もいれば、自らCRAZYの結婚式をお客さんとして体験して、まったく異なる業界から転職してきた人たちもいる。

──「差別化」は森山さんの中で特に大事にされている言葉のようですね。

物事は違う視点で見た方が価値は高まるものです。予測値と結果の差が生まれるからです。差がないものに特別な価値は無いと思います。人は差に対してお金を払うのです。

──その「差」をこれから立ち上げる事業でもつくっていきたいと?

差を生み出すために、CRAZYでは「自由」であることを大事にしています。社会からはみ出ればはみ出るほど、差ができていく。そしてそれが次の商品になるんです。

──CRAZYでは、今後数百もの事業を立ち上げるとか、何万人の雇用を生み出すとか、とてつもない数値目標を掲げているじゃないですか。

はい、してますね(笑)

創業から掲げているビジョンは、"豊かな生態系をつくる"こと。そのために2,000社100万人の雇用を生み出す。その第一歩として、まず創業10年で20社の"マーベリック・カンパニー"(飛び抜けた会社)を輩出する、とCRAZY 2.0というウェブサイトで宣言している。

──あれにはどのような意図があるのでしょう?

単純に「もっと人間らしく生きられたらいいな」と思っているのです。

──「人間らしく」とは?

人間は「社会的動物」だと思っています。例えば、いま日本人の社会的役割を考えた場合に、会社で働くことに対するネガティブな文脈が存在しています。会社員は自由ではないと。社畜とかブラック企業とか、会社と人が分離していると思います。ぼくは「もっと人が人として生きていく社会ってあるんじゃないの?」っていうオルタナティブな提案をしたい。

──そういう考え方で望めば、多くの事業がつくれるのですか?

人間らしい生き方がしたいという人たちは、いま増えているように感じています。彼らは経済成長だけでは駄目。社会貢献だけでも違う。その真ん中がいいんです。第3の解を求めているのです。会社を大きくしなければいけないと思って事業をするのか、自分の人生をかけて事業をするのかは別です。これからCRAZYが立ち上げる事業は、一つひとつは小さくてもいい。10人とかで十分です。でも彼らには志がある。楽しんでいる。それでいいんです。それを2000社つくりたい。

──「2000社」はとても挑戦的な数字ですね。いま準備しているものだと、どのようなものがありますか?

例えば、WHEREっていう旅の会社があります。近々大学の事業も始めます。ホテルもやります。教育事業もいま準備を進めています。

──すごい! どんどん出てきますね。

スタッフは誰もがそれぞれの人生において、世の中に伝えたいメッセージをもっています。だから機会があればどんどんやっていきます。すぐに投資を回収することを考えている会社ではないし、全体としてうまくいけばいいと思っています。でもぼくたちの強みであるリアルな接点のノウハウは、さまざまな事業に応用できます。

CRAZYではすでにケータリング事業「CRAZY KITCHEN」も運営している。

──ウェディング事業の技術を、これから次々と横展開していくわけですね。

個人として、そこに人生をかけるほどの熱量をもってやりたい人たちがいる。それが事業をやるかどうかの経営判断の大事なポイントになります。例えば人材派遣の事業もこれから立ち上げようとしています。

──人材派遣ですか?

実はいまCRAZY WEDDINGの結婚式の運営を手伝ってくれている「キャスト」と呼んでいる人たちをわれわれは全国で数百人抱えているのですが、そのうち約半数の人は、平日別の仕事をしているんです。

──せっかく休みの日なのに働いているのですか?

そう、面白いでしょ。でもみんなお金のためではなくて、楽しいからやっているんです。普通に平日たくさん稼いでいる広告代理店の人とかもいますよ。

──本当に好きでやっていらっしゃるのですね。

これからはその人たちを数人のユニットにして、企業のイベントで活躍してもらう事業を立ち上げようと思っています。一生に1回しかない結婚式で毎回企画内容が違うものを何度も経験してきた人たちですから、現場の状況に応じて臨機応変に動ける高度な技術を持っています。その人たちが企業の周年イベントやお店とかのオープニングイベントに派遣されると、客際がとても強くなります。現場の雰囲気まで変える力を持っているのです。

CRAZYの社員はお互いの距離感が近い傾向がある。打ち合わせスペースのフローリングの板の長さを普通より短くするなど、オフィスの設計段階から意識して設計している効果もあるようだ。

──やはりCRAZYでは「楽しい」を非常に大事にされていますよね。

新しい事業を立ち上げるときに、それが巨大なビジネスになるかという次元の話はほとんどしていません。「楽しい」っていうことは、少なくともまずは自分が顧客の一人で、その時点で一定のマーケットがあるはずなんです。それだけで「はい、OK!」って感じです。

──え、社長としての経営判断はそれだけでGOサインが出るわけですか。

もちろん他の要素もあります(笑)。でも、その事業の市場規模が1億だろうが10億だろうが別に関係ないんですよ。1億でもそれが1000社あれば、1000億ですから。

──そこまでいけばもう大企業ですね。

でも「社員をマネジメントをしてやる」という考え方では、それほどの数はつくれません。「雇われている」という既存の概念が嫌いなんです。もちろん基本的な起業のルールや、CRAZYの文化は共有します。でもあとはそれぞれの事業を個人として人生かけてやりたいという人がいるので、その人たちがやりたいようにやってもらいたい。きっとコアはCRAZYの文化で、普通の事はしないという前提があるので、それが可能になるのかなと。

──マネジメントしていないとなると、代表の森山さんは普段何をされているのですか?

「情熱大陸」ではお金の管理をする人として紹介されていましたけれど、実際は違います(笑)。面白いことをやるのがぼくの仕事です。今日もお客さんのところに行ってプレゼンしてきました。結局、皆さんの感想は「楽しいっすね!」というものでした。これがリアルな接点、ソフトの力です。CRAZYの源泉です。だってぼくと話していて楽しくないのに、本番のイベントが楽しくなるはずがないでしょ(笑)。だからぼくの仕事は、引き合いがあったときに楽しい提案をしに行くことですね。

──それで他と違うものができれば、また差別化できて引き合いが増える。

違うだけでは駄目です。意味合いとか熱量とか、いろんなものがそこに含まれていることが重要です。そうすると何よりもやっている人たちが楽しい。楽しいっていうのは結局いろいろ含んでいるからすごい大事なんです。またやりたくなるし、次も早く回るようになります。

──楽しければ人もどんどん巻き込まれていきますしね。

そうそう、それで気づいたら採用されていたりもするわけ。そうやってこれまで上手くまわってきたんです。

──やっぱり、CRAZYの源泉には「楽しい」がありますね。

ぼくはやっぱり楽しいことをやるのが得意だし、やりたいタイプなんです。