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ビジネスネットワーク活用の裏ワザ

地域課題をエンジニアのネットワークで解決。Code for Japan・関治之のコミュニティづくり、3つの裏ワザ

市民参加型のコミュニティ運営を通じて、地域の課題を解決するアイデアを考え、テクノロジーを活用して公共サービスの開発を行う「Code for Japan」。自身もエンジニアとして日々コードを書き続けている代表の関治之から、エンジニアならではの視点で「3つのビジネスネットワークの裏ワザ」を紹介する。

Eightユーザーのつながる技術を探る「ビジネスネットワークの裏ワザ」

名刺をEightに取り込むだけではもったいない。あなたのビジネスネットワークをもっと効果的に活用できれば、仕事の課題に対して新たな解決の糸口が見つかるかもしれない。つながりを生かして、ひとりの力では実現できないことを達成していく人たちには、きっと新人研修では教えてくれないビジネスネットワーク活用の"裏ワザ"があるはずだ。

注目のEightユーザーを取材する企画「ビジネスネットワークの裏ワザ」。今回は、市民が主体となってテクノロジーを活用し、地域の課題解決を進める「Code for Japan」の関治之が登場する。


立ち上げのきっかけは東日本大震災

テクノロジーを軸に市民の地域課題解決を促進するためのコミュニティづくりをしているCode for Japanでは、デザイナーやエンジニアと市民とが集まり、地域の課題解決に向けたアプリ開発やアイデアソン、ハッカソンなどを行っている。

また、企業内で働いているエンジニアやデザイナーらを行政内部に一定期間派遣し、公共サービスの開発やデザインを推し進める「フェローシップ」プログラムを提供するなど、テクノロジーと公共セクターを結びつける活動も行っている。

いまでは、「Code for ◯◯」と名付けられた団体が全国各地で活動しており、各地のデザイナーやエンジニアたちが、地域課題のためのアイデアや情報共有を行うネットワークが広がっている。こうした動きが生まれた要因として、東日本大震災は大きな出来事だったと関は話す。

「震災を受け、多くのエンジニアたちが技術を使って社会に対して貢献しようとする動きが起きました。わたしも仲間とともに『sinsai.info』というサイトを立ち上げ、被災地での情報ボランティア活動を行いました。こうした経験を踏まえて、テクノロジーがこれまで以上に地域の課題解決を促すツールとなれる社会となるために、Code for Japanを立ち上げようと考えたのです」

2014年、Code for Japanのフェローシッププログラムを福島県浪江町で実施。東日本大震災で被災し避難生活を余儀なくされた市民に対して、タブレットの配布とそれに伴うアプリケーション開発のための住民参加型ワークショップを行った。 Photo by Code for Japan

裏ワザ1. 既存のコミュニティに貢献する

いまでこそCode for Japanを始め、さまざまな組織をまとめあげている関だが、もともとはエンジニアで、何かを主催するような立場ではなかったという。

システムインテグレーターやスポーツのポータルサイトの立ち上げなどを経て、位置情報が人々の生活に関わり、役に立つことを実感してきたことから、それらを実践する場として携帯電話向けの位置連動広告を展開するシリウステクノロジーズに転職。同時に、その頃から次第にオープンソースの考え方に触れてきた。

「当時は高価なシステムやサーバーを購入し、OSをインストールしたりしていたものが、オープンソースの無料のソフトウェアが広がっていた時代でした。『何でこれが無料なんだ?』と興味を持ち、次第にオープンソースのコミュニティに参加するようになりました」

オープンソースのコミュニティに参加するようになり、これまでの社内だけのつながりから社外のつながりが次第に生まれてきたと関は話す。仕事ではなく趣味のコミュニティだからこそ、自身のスキルアップにつながる面白さに、次第にのめり込むようになったという。

「道路地図などの地理情報データを誰でも利用できるよう、フリーの地理情報データを作成することを目的とした『OpenStreetMap Japan』など、いくつかのコミュニティに参加していました。コミュニティ内で新しい技術を互いに教えあったりしながら、技術やスキルを高め合う経験が新鮮でしたね」

いきなり何かを始めるのではなく、すでに動いているコミュニティのいち参加者として楽しむこと。コミュニティの中心にいる人の手伝いをすることで、さまざまな情報も入ってきやすくなる。これらの経験が、後のコミュニティづくりやCode for Japanなどの組織づくりにとても参考になったという。

海外の技術をフォローするために、勉強会や技術書の輪読会などに積極的に参加していた。その人のつながりや経験は、現在のさまざまな活動に生きている。

裏ワザ2. わかりやすい旗を立て、小さなことから始める

コミュニティのいち参加者からオーガナイザーとして動き始めたのは、位置情報技術に関するイベント「ジオメディアサミット」を立ち上げた時だ。

「位置情報がビジネスとして摸索されていた時に、位置情報好きな人たちを集めて飲み会を企画したのです。そうしたら、30人以上も人が集まる大規模な会になったんです。そこから派生して、勉強会などを行うようになりました」

きっかけはちょっとした集まり。そこから次第に勉強会やセミナー、最終的にはジオメディアサミットというカンファレンスの開催へとコミュニティは大きくなってきた。

「ジオメディアサミットでは、登壇者も主催者もみんなボランティア。みんなでジオメディアを広げていこうという意思を共有しながら、中立な立場としてコミュニティをつくってきました。金銭的なリターンはないけれども、人とのつながりやイベントを通じた学びや楽しさが評判を呼び、開催するたびに『参加して良かった』と言っていただくようになりました」

2008年からスタートしたジオメディアサミットは、いまでは年に2回の大きなイベントを開催するまでとなった。「最初から大きな場をつくろうとしたわけではなく、まずはできるところから」と話す関は、エンジニアならではの視点を持ってコミュニティを運営している。

「短い開発期間で、フィードバックをもとに改善を繰り返すアジャイル開発のように、まずは小さく始めて、そこから色んな人たちを巻き込みながらコミュニティを大きくしていくことを心がけています」

大事なのは、自分なりの旗を立ててまずは一歩を踏み出すこと。Code for Japanを立ち上げるときも、初めに発足準備会を立ち上げ、団体設立に興味のある人たちを集めた。そこから、どのような組織形態にするか、どのような運営体制で進めていくかを互いに議論しながら進めていったという。

「何かを始めるときには、準備会やキックオフイベントなどを企画して『こんなことをやりたい!』と伝えること。そこからアイデアや新たなつながりが生まれます。もちろん調整やコーディネートなどは大変かもしれませんが、それによってコミュニティが生まれ、目的を共有した人たちで前に進みやすくなります」

オープンソースの概念でもある「伽藍とバザール」は、コミュニティ運営にも通じるという。「設計者がすべてを決めるのではなく、小さく始めて、参加者の意見やアイデアを受け入れることで発展していくのです」

裏ワザ3. 業界をつくる意識で動くこと

ジオメディアサミットもCode for Japanも、コミュニティづくりの裏には、「業界をつくろう」とする意図があるという。

「いまでこそ位置情報はポピュラーですが、ジオメディアサミットを立ち上げた頃はまだまだプレイヤーが少なかったんです。けれども、先んじてこうした取り組みをすることで、国内でのネットワークやコミュニティが形成され、業界が誕生することで仕事にもつながっていく。ビジネスが生まれるだけでなく、世の中として必要な役割が生まれ、社会にインパクトを与えることもできます」

Code for Japanが立ち上がったことで、「シビックテック」というキーワードが日本でも広がりを見せ始め、テクノロジーが地域課題や社会課題解決のための大きなツールである、という認識が広がっていった。

コミュニティづくりをただの趣味で終わらせることなく、「業界」というひとつの産業や分野として確立させることで、その分野の第一人者として牽引することができる。そうした活動によって「新たなビジネスネットワークが構築される」と関は話す。

現在、関が仲間と設立した「HackCamp」も、近年の大企業らのオープンイノベーションを促進するために行われているハッカソンを、ただのイベントで終わらせるのではなくイノベーション促進のためのフレームに落とし込むことを目的に活動しているという。

「HackCamp」では、自分たちで新たな形のハッカソンの事例をつくり、そこに興味を持つ企業とつながりをつくりながら導入につなげ、大企業の課題解決のサポートを行っている。

「ハッカソンが一般化するにつれて、イベント自体の開催は増えたが、それをきちんと製品や大企業の社内の意識改革やイノベーションにつなげなければ意味がありません。ハッカソンを企画するにしても、事前の社会の合意形成や、ハッカソン後をどのように見据えるかなど、期待値の設定や大きなフレームの中にどうハッカソンを位置づけるかを事前に考えておく必要があります。ハッカソンという文化を醸成し、企業のオープンイノベーションがより促進されるための仕掛けをしていきたいと考えています」

コミュニティを「業界」づくりのためのひとつのきっかけとし、常に自身が旗振りとなってきた関の活動は、コミュニティ内におけるファシリテーションを行うと同時に、時代に求められる新たな価値づくりのためのファシリテーションでもある。

関の活動は、始めの一歩は小さいかもしれないが、次第に大きな時代のうねりとなっていくだろう。

「ジオメディアサミットもCode for Japanも、時代の流れとして必要なものだと自分自身も感じました。なぜ自分がやるべきか、やり続けたいかを常に自問自答しながら、ある程度やりきる覚悟を持って取り組んでいきたいと考えています。業界とビジネスが生まれることで、少しでも社会の課題解決が進んでほしいと願っています」

文/江口晋太朗 撮影/小野田陽一