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Eight Fireside Chat

AERA前編集長・浜田敬子が「Eight Fireside Chat」で語った、読者目線ビジネス・雑談企画術・おせっかいの勧め

9月30日(金)、Eightを開発している青山のオフィスで、Business Network Lab初のトークイベントが開催された。初回の記事で取材した浜田敬子が、90分間に渡って語ったトークの内容をダイジェストでお届けする。

9月30日(金)、Business Network Lab(BNラボ)主催のトークセッションシリーズ「Eight Fireside Chat」が、青山にあるSansan社内のイベントスペース「Garden」にて開催された。

Fireside Chatは、BNラボでインタビューした人をゲストに招き、BNラボの編集長が聞き手となって、これからのビジネスネットワークのあり方について話すトークセッションだ。

第1回目のゲストは、AERA前編集長で、現在は朝日新聞総合プロデュース室プロデューサーを務める浜田敬子。彼女はAERA編集部時代、作詞家・プロデューサーの秋元康やスタジオジブリ代表の鈴木敏夫らを招聘しての「AERA特別編集長号」や、NewsPicksなど他媒体とのコラボ企画、企業とのコラボムックの立ち上げなど、ビジネスネットワークを生かした企画を数多く仕掛けた実績を持つ。8月にスタートしたBNラボのインタビュー企画「ビジネスネットワークのものさし」の第1回にも登場している。

取材時には「企画力で"濃い"ビジネスネットワークをつくる」ヒントが語られたが、Fireside Chat形式の今回は、具体的な体験談を交え、より刺激的なトークとなった。

物事を読者目線で捉える編集者のスキルは、いかに企業の課題解決に使えるか。浜田がAERA時代に手がけた企業ムックに、そのヒントがあった。

これからは企業も「読者目線」を意識すべき

浜田は、2014年4月から2年間AERAの編集長を務めたあと、現在は朝日新聞社に新設された総合プロデュース室のプロデューサーとして、さまざまは社会課題の解決につながるような事業を、企業とともに進めていく仕事に従事している。

課題として持ち込まれることが多いテーマは、女性活躍や子育て支援のような、働く人たちの生活に直接関わる問題から、地方創生や東京五輪に向けてのコンテンツ開発など幅広い。また企業の採用活動やブランディングにつながるコンテンツの提案を求められることも多い。

「AERA時代の経験はいまの仕事につながっているか」という丸山の問いに、浜田は「企業が何を望んでいるか、ニーズを汲み取って、取材・ヒアリングをして、編集者として第三者的な視点でコンテンツをつくった経験は、確実に現在の仕事に生きている」と答えた。

浜田は、AERA編集部に在籍していた頃、住友商事の企業ムックを手がけた経験を語った。通常、メディアによる企業取材ではエース級社員1〜数名にインタビューをする形が多いが、それはある意味、企業側が読者や消費者に「こう見られたい」という一面でもある。しかし、浜田は「読者が見たい」企画にこだわった。

このムックは商業出版物でありながら、採用ツールとして活用したいという意図があった。であれば、商社を志望する学生たちは、その企業の「素顔」を見たいと思うはず。そこで、選ばれた社員だけを載せるのではなく、ある年次入社の社員約80名全員の入社以来の全職歴を載せる「入社10年目全社員の記録」という企画を提案した。制作の労力はかかるが、学生にとっては自分のキャリアイメージを描くための重要な情報となる。他にも、採用ツールとしてみれば型破りな企画を提案した。

メディアの強みはこの「読者目線」だと浜田は言う。

見る人にとって本当に面白いか、役に立つか。それがいつも浜田が企画を考える起点となる。

「AERAをつくっている時に常に考えていたことは、どうやったら面白くなるか、400円近くを払ってもらう価値を創れるか、社会的に話題になるか、ということです。たとえクライアントであっても、『見る人にとってあまり面白くないのでは』と思えば、はっきりとそう言います」

ただ、メディアの力を活用できる企業は多くない。「さまざまな事情で、自分たちでコンテンツをつくり、発信しなければならない場合、どんなところに気をつければ良いか」という丸山からの問いに、浜田は、「広報などだけで考えるのではなく、社内の他部署を巻き込むこと」だと答えた。

「複数の視点で見るほうが、『うちの会社は実はこういうふうに見えてたんだ』という気づきがあります。できればユーザーの声が聞けるといいですね。それが難しかったら、少なくとも社内ヒアリングは絶対にしたほうがいい」

BNラボのインタビュー記事の中でも触れていた「企画力」も、メディアの強みであると浜田は言う。

AERAの優秀な編集者は、よく取材の雑談の中から次の企画のアイデアを拾ってきていたという。

「雑談」から次の企画の種が見つかる

「AERAの時に編集部員に言っていたことは、『取材の際、準備した質問が終わって、ノートを閉じてから、その人と雑談をしてほしい』ということでした。相手がリラックスしたときに話す何気ない一言にこそ、個人としての本音があるから、と。むしろそういう脇道だけど面白いことが、次の企画に結びつくんです」

雑談のポイントは、「何らかの共通項を見つけること」だと浜田は言う。NewsPicksの現編集長である佐々木紀彦が、東洋経済オンライン編集長時代にAERAと共催した働く女性向けのキャリアシンポジウムも、ランチをして話すうちに、互いにビジネスパーソンを読者に持つメディアとして、「働く女性向けのコンテンツや情報発信ができないか」という共通課題を持っていることがわかり、そこからシンポジウムというアイデアにつながっていったという。この時は、意気投合してから約3カ月で実現にこぎつけた。

アイデアで終わらせないコツはやはり「巻き込み力」。外部とコラボするためには、社内の支持が欠かせない。佐々木と会ってすぐに、互いの営業チームを引き合わせ、編集だけでなく営業も巻き込んでプロジェクト化したという。

「仕事を一緒にやるとその絆は濃くなります。ネットワークを濃いものにするには、相手と本気で仕事をするしかないんです」

トークの後半では、ビジネスネットワーク活用の具体的なアドバイスを聞くことができ、多くの参加者が熱心にメモを取っていた。

"おせっかい"は積極的に

その後、話題はウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」とのコラボ企画「40歳は、惑う。」のきっかけとなった糸井重里の言葉や、秋元康にAERAの特別編集長を依頼するために書いた熱い手紙、大特集企画で培った「0.5歩先を読む」企画術などへと移り、ここでしか聞けない話が満載でトークは進んでいった。

プロデューサーとなった現在、浜田は人と人をつなぐ役割を果たすことも多くなっていると言う。最近では、リクルートの子育て支援プロジェクト「iction!」のプロジェクトリーダーを務めた小安美和と、地球環境との共栄をコンセプトにした事業創生で注目を集め始めている「re:terra」代表の渡邊さやかの出会いの場を演出した。

「でも、わたしがやったことは、それぞれにメールを書いて、CCを入れて送るという、それだけなんです。言ってみればちょっとしたおせっかい。特殊な技術が必要なことじゃない。それによって、何か新しいプロジェクトが生まれて自分も嬉しいだけでなく、結果的に自分の人脈も錆つかないんですよね。ネットワークの引き出しが錆つかないように、時々開け閉めして、いざというときに思い出せるようにしておくことが重要かもしれません」

90分間、緊張感を保ちながらも、時々会場から笑い声が上がるようなリラックスした雰囲気でトークは進んだ。

質疑応答では、参加者からこんな質問が投げかけられた。「ビジネスネットワークを錆びつかせないために、日ごろから気をつけていることがありますか」

浜田は、「メンテナンスをする発想だと大変だと思います」と答えた。

「ビジネスネットワークには濃淡がある。わたし自身、実際に会うのは1年に1度程度という人が多いです。ただ、この人とは相性が合う、リスペクトできると思う人とは、きっとまた一緒に仕事をするチャンスが訪れます。『関係をつないでおかなきゃ』とそれに追われるのは本質的ではありません。それよりも、自分の本業に力を尽くしてチャンスが巡ってきた時に、本気で濃く付き合えばいいのではないでしょうか」

登壇者との距離が近く、参加者からの質問の時間も盛り上がった。

また、「紹介される人になるためにどうすればよいか」という質問には、「自分が持っているリソースが何かを認識することが大切では」と答えた。

「わたしの話を聞いて、朝日新聞やAERAなどのメディアというリソースを持っているからできることですよねと思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、必ずそれぞれがもっているリソースはあると思うんです。自社や自分が持っているリソースの良いところ、得意なことは何だろう、それを相手とどう掛け合わせるとお互いにプラスになるだろう。そう考えれば、きっとネットワークは広がっていくのではないでしょうか」

トーク終了後は懇親会へ。会場のセッティングを変え、ドリンクや軽食が用意された。約1時間、参加者同士の交流も活発に行われた。Eightアプリで名刺交換をする参加者も。22時、2時間半に及ぶセッションは参加者の熱気を残しながら幕を閉じた。Eight Fireside Chatは、今後も回を重ねていく予定だ。

参加者は全員Eightユーザーなので、懇親会では紙の名刺を交換する代わりに、その場にいる人同士で直接Eightでつながることができる新機能を使ってみた。