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ビジネスネットワークの“ものさし”

ロンブー淳のビジネスネットワーク論。「ぼくのたくさんの『夢』を、きっとEightはつないでくれる」

名刺交換をする機会の少ない芸能界にEightユーザーはほとんどいない。だが田村淳は例外だ。数多くの「やりたいこと=夢」を持ち、芸能界の外の人とも積極的につながり、どうにかして実現できないものかと日々挑戦している。普段バラエティ番組では見ることのできない、彼のビジネスに対する思考の一端に触れる。

Business Network Labのインタビューシリーズ「ビジネスネットワークのものさし」は、こんな問いを掲げてスタートした。

自分のビジネスネットワークを効果的に活用している人は、

「名刺の枚数」という"ものさし"だけで、

引き出しに眠る名刺の束を数えて満足してはいないはずだ。

彼らはいったいどんな"ものさし"を持っているのだろうか。

今回は、テレビを中心に人気タレントとして活躍しながらも、常に新しいこと、やりたいことに挑戦する姿勢を貫いてきた田村淳のインタビューをお届けする。

「自分のやりたいことがテレビではできない」とわかれば、彼は躊躇なくインターネットの新しい技術を使って自前で番組を配信する。やりたいと思ったら自分で決断してどんどん進めていくので、事務所に怒られることもあるらしい。だがそれでも行動をやめない田村の原動力は「なんでダメなの?」という素朴かつ根源的な問いだ。タブーをつくらず自分の頭で考える。それはビジネスにおけるイノベーションの精神と、どこか通じるものでもある。

迅速果敢な実行力で芸能界にとどまらない独自のネットワークを築く彼の"ものさし"は「一歩を踏み出している人」だ。そういう人は「成功しているか、していないかに関わらずリスペクトする」という。その一歩を踏み出すために大事な「たくさんの夢を持つ力」と「夢を実現に導く人とつながる力」について、話を聞いた。


筆者が名刺を渡したら、その場でパシャ。すぐにEightでつながった。

──淳さんは、Business Network Lab編集長の丸山にEightで名刺交換リクエストを出してくださって、そこから取材の申し込みをさせていただいたのが、このインタビューのきっかけになりました。

Sansan(Eightの開発元)の社長とテレビの仕事でご一緒したことがあって、彼の人柄とかをわかっているから、社員の人とつながってもそんな大きな事件にはならないだろうと思ってリクエストしたんだと思います。それで「取材したい」と言ってきてくれたから、ちゃんと受けようと思いました。

──淳さんがテレビやインターネットでつくるコンテンツには「人と人のつながり」を生み出したり、楽しんだりするものが多いと思うんです。例えば「淳の休日」の「マスクdeお見合い」のように。そこで、淳さんに「ビジネスネットワークをどう生かすか」をテーマにお話をうかがいたいと思いました。それにしても、こんなにカジュアルにつながってしまって大丈夫なのでしょうか。

自分が有名人であることや、相手が有名人かどうかということはあまり考えません。人と人としてのつながりのほうが長く付き合えるし、より深く付き合える。そうなるかどうかは、名刺の情報だけではわからない。だから、極力会って話すことを大事にしています。

──今年の8月に、シリコンバレーの情報サイト「LOGSTAR(ログスタ)」の企画で、現地へ旅に行かれていましたね。

それこそEightで知り合った人がLOGSTARにいて、LOGSTARの人とうちのマネージャーがつながって、取材兼夏休みみたいな感じで連れて行ってもらったんです。

昔のマネージャーが、夏休みに旅行に行ってきますと言ってシリコンバレーに遊びに行ったんですよ。で、帰ってきてすぐによしもとを辞めたんです。その時から、シリコンバレーに何があるんだろうとずっと思っていました。最先端技術が集まるとか、大きなITの会社がいっぱいあるというイメージはありましたが、でも行かないとわからないから、とりあえず飛び込んでみよう、と。


帰りたくない、このままシリコンバレーに残って何かやってみたいと思いました。


たまに「エンジェル投資家ですか? 」と聞かれることもあるそうだが、そんなに綺麗なものではないという。「面白いアイデアを実現しようとしている人がいて、もしお金に困っていたら応援できる範囲でそこに預けているだけです。それで大きくなったら自分にとっても嬉しいので」

──フェイスブックやグーグルだけでなく、WHILLやDrivemodeなど、日本人が立ち上げた企業も訪問されていました。そこで出会う人たちはどんな印象でしたか。

シリコンバレーで起業している人はみんな、リスペクトできる人ばかりでしたね。成功していても、まだ成功していなくても、一歩踏み出している時点ですごいとぼくは思うので。来年、来月、どうなるかわからないけど、夢を追いかけている人が多いなと思いました。

同時に、日本の働き方がいかに時代に合っていないかを強く感じました。自分がいま所属している事務所のことを考えても、考え方や取り組みが相当遅れているんだなと。帰りたくない、このままシリコンバレーに残って何かやってみたいと思いました。

──淳さんにそこまで言わせるものとは、何だったのでしょう。

いままでになかったものを自分たちの力で生み出して、不自由が当たり前だったことを、便利が当たり前の世の中に変えていく、という考え方ですね。例えばDrivemodeはクルマとスマホを結びつけようとしているんですけど、ぼくは、あの狭い運転席のスペースの中で、カーナビはカーナビ、ハンドルはハンドル、スピードメーターはスピードメーターとしか認識してなかったんですよ。でも彼らはスマホやアプリを使って、運転することそのものを変えようとしているんですよね。それは全然、想像もしなかったようなことでした。自分にないものが脳みその中にある人はやはり刺激があるので、この人たちとだったら面白い仕事ができそうだなと思ったんです。

──淳さんのこれまでの活動にも、いままでやったことのないことだからやってみようよ、という精神を感じます。シリコンバレーの人たちの考え方には共感されるのではないですか。

そうですね。会議室で考えるのがすごく嫌いで、行動しないと失敗も成功もわからないからとりあえず動こうよということを人生において大切にしているので、まずやってみようという人とはとても話が合います。シリコンバレーの人も、すごく早かったですね。

──早いというのは、具体的にはどういうことですか。

大きい会社でも会議室で打ち合わせしている人が少ないんですよ。みんな歩きながらミーティングする。わざと散歩コースみたいなのを会社の中につくって。フェイスブックの人には、「トップから末端まで大きな部屋に集まって、あたかもみんなの意見が集約されたと見せるような会議よりも、本当に必要な2〜3人が歩きながら話して決定して、それを他の人に伝えるほうが決定が早くて効率的で、責任が誰にあるかわかるから、そっちのほうがいい」と言っていました。

──責任のありかがちゃんとしてないことが日本の組織の問題点と言われることも多いですね。

責任はあるでしょうけど、なすり付け合いするからダメなんだよね(笑)。トップダウンの仕事しかしていない会社は滅びるだろうなということは、シリコンバレーに行って思いました。生き生きとして伸びている会社って、トップに圧倒的なカリスマがあるんだけど、その人の言うことにみんなが黙って従うんじゃなくて、その人にどんどん意見を言う人を雇っているところだと思う。

トップの責任って、社員が「ぼくはこの会社のためにこんなことをやりたい」と言うことに「それいいね、やろう」と決めることであって、社員一人ひとりのやりたいことを決めることではないんですよね。やりたいことは現場の人間がどんどん出していって、その判別をトップがするというのが、いい仕組みだなと思います。


やりたいことが出てこないというのは、結局、仕事をしていないのと一緒だと思います。


社員一人ひとりが自分のやりたいことを言う。それがシリコンバレーの強さの秘訣。ダメと言われると、「何とかやれるようにはできないものか」と考える淳には、きっと居心地のいい環境だ。

──そうすると、現場の人間としては、やりたいことがどんどん出てくることが重要ですよね。でも、自分のやりたいことってなんだろう、というところでつまづく人も多いような気がします。

ぼくは芸能の仕事をしているから、コンテンツを通じてどんなことを伝えたいかを、いつも考えています。じゃあそれがテレビでできるか、テレビでできなければ実験する場をネットで探そうか、と考えるんですね。ネットで成功したコンテンツを見て、テレビの制作者と「テレビでも実現させよう」と話す場面も増えてきました。そうやって面白いコンテンツをどんどん仕掛けていきたいです。

一人ひとりの「やりたいこと」は仕事によって変わってくると思います。ぼくがSansanに就職していたら、あるいはグーグルで働いていたら、たぶんやりたいことは違っているでしょう。やりたいことが出てこないというのは、結局、仕事をしていないのと一緒だと思います。

──厳しいお言葉ですね。

もちろん「生きていくのに必要な分、与えられた仕事をするだけでいいです」というのもひとつの生き方なので、それを選ぶ人がいても全然いいとは思います。でも、成功したい、世の中に対して発言する力を持ちたい、というのであれば、やはり何かを犠牲にしなければ手に入れることはできない。それはシリコンバレーで強く感じたことです。明るく仕事をしているけれど、アウトプットが足りなかったら給料を払ってもらえないというリスクを背負いながら生きている。そこがまた日本とは違うなと思いました。

──リスクも桁違いに大きいですよね、きっと。

確かにリスクは桁違いですが、同時に報酬も全然違うので健全ですよね。ぼくは歯車という言葉が嫌いなんです。歯車になると言うと会社をすごく支えているようだけど、ずっと歯車のままでは会社は大きくならない。職人の世界はまた別だと思いますが、普通に大学に入って、会社員になって、という人生だと、会社に入るという目標を達成した後に何を頑張るのかわからなくなっている人は多いと思います。目標がないことがいちばん不幸だなと。


Eightは、ぼくがばらまいた夢をつないでくれる役目を果たしてくれるようになるんだろうな、と思っています。


多種多量な仕事をこなす淳に、時間の使い方についてアドバイスを求めると、「人それぞれだから、自分の生き方のマニュアルは自分でしかつくれない」と返答。恋愛と一緒で、ビジネスもマニュアル本に頼っているようでは、自分の生き方ややりたいことを見失ってしまうという。

──それはすごく大きな夢でなくてもいいですか。

はい。以前、植松電機の植松(努)社長に会った時に、「夢はたくさん持ちなさい」と言われたんです。小学校の時って、なんとなく空気で夢はひとつだと決まっていますよね。ぼくは作文に何個も夢を描いてひとつに絞りなさいと言われたクチなので(笑)、植松社長が夢はいくつもあってもいいし、明日肉食べたいというのもロケット飛ばしたいというのも夢だって言うのを聞いて、いいなと思ったのです。植松社長は、「夢を考えたらできるだけ多くの人にしゃべりなさい」とも言っていました。そこでぼくは「ウエディングをやりたい!」とか、「テレビ局をやりたい!」とか、テレビが息苦しくなってきたから「テレビ以外のメディアで何かやりたい!」とか、夢をどんどん口に出すようにしたのです。

──それが、DEFanniversary(結婚式をプロデュースする会社)の立ち上げや、CS放送での「TVatsushi」の実現につながっていくんですね。

どこかでぼくがそう言ったことを聞いた人が寄ってきてくれるのです。Eightは、ぼくがばらまいた夢をつないでくれる役目を果たしてくれるようになるんだろうな、と思って、いま名刺をすべてここに入れるようにしているのです。

──なるほど、そういうことだったんですね。確かに、Eightで人とつながることでアウトプットが実現可能なものに近づくと言えるかもしれません。ひとりで達成できる夢って、そんなにないですものね。

そうなんですよね。当然、ひとりの力で生きていくのは無理だし、ひとりの力で起業するのも無理だし。それにやっぱり夢はみんなで追いかけたほうが楽しいし。書道家とかピアニストだったら別かもしれないですけど......。

──確かに。芸術活動は個人かもしれません。

それでも、それを広める人がいたほうがいいですよね。ぼくは芸術家にも広報が必要だと考えるほうなので。うん、夢とつながりは、たくさん持ったほうがいいと思います。

取材をした新番組収録前の楽屋に、よしもとのマネージャーはいなかった。現場には必要ないと考えた淳自身の指示によるものだ。芸能人だが、「田村淳」という個人商店を経営しているような気分だとも。

文/長瀬千雅 撮影/西田香織