メールマガジン登録フォーム

BNLの最新記事情報やイベント告知などをEメールでお届けします。
こちらの個人情報の取り扱いに同意して、「Subscribe」に進んでください。

ビジネスネットワーク活用の裏ワザ

「誰が何を知っているかを把握しておこう」
横浜コミュニティデザイン・ラボの杉浦裕樹が語る
“黒子”の仕事術

業種や専門分野、世代の壁を超えて、多種多様な人々をつなぎながらプロジェクトを成功させるには、いったい何が求められるのか。横浜で次々と注目の地域プロジェクトを立ち上げる影の仕掛け人・杉浦裕樹が、ビジネスネットワークを活用する4つの“裏ワザ”を伝授する。

Eightユーザーのつながる技術を探る「ビジネスネットワークの裏ワザ」

名刺をEightに取り込むだけではもったいない。あなたのビジネスネットワークをもっと効果的に活用できれば、仕事の課題に対して新たな解決の糸口が見つかるかもしれない。

つながりを活かして、ひとりの力では実現できないことを達成していく人たちには、きっと新人研修では教えてくれないビジネスネットワーク活用の“裏ワザ”があるはずだ。それを探るため、Eightユーザーを取材する新企画、「ビジネスネットワークの裏ワザ」をスタート。

第1回は、ローカルコミュニティ運営のプロフェッショナル、杉浦裕樹を横浜のシェアオフィスに訪ねた。


裏ワザ1. ローカルニュースサイトを立ち上げる

地域コミュニティの課題解決は、一筋縄ではいかない。

地元の企業や生活者の意見を汲み取るだけでなく、行政や大企業も含めて、また業種や世代の壁を超えて、さまざまな人を巻き込み、プロデュースしていく必要があるからだ。横浜で活動する杉浦裕樹は、まさにその分野におけるパイオニアだ。

杉浦は、2003年にNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボを設立し、翌年には、ラボの事業のひとつとしてローカルニュースサイト「ヨコハマ経済新聞(以下、ハマ経)」を開設。00年に開設された「シブヤ経済新聞」を起点とした「みんなの経済新聞ネットワーク」の地域展開のきっかけを生み出した。

「ちょうどブログやSNSが流行りだした頃でした。ローカルメディアを軸に、市民参加が生まれるきっかけを仕掛けていくことができるかもしれない。地域の情報をキャッチし、ハマ経で記事にしていけば、誰かのアクションのきっかけにつながるだろうと考えたのです」

それから12年以上運営しているハマ経は、いまでは1万本以上の記事のデータベースがある。取材した商店やベンチャー企業、NPOや行政のつながりが、そのまま自身のビジネスネットワークになり、コミュニティデザインの活動を支えているという。

「メディアがあることで、いろんな人に出会えたり、さまざまな情報が入ってきたりします。一度取材をして関係をつくれば、継続した情報のやりとりを行うこともできます。そこから新しいプロジェクトの種が生まれる好循環ができています」

横浜コミュニティデザイン・ラボは、「街にいる人たちが持つ可能性を引き出し、人と人がつながることで地域のコミュニティづくりと課題解決を実現する」というミッションを抱いているという。

東日本大震災の影響もあり、2011年以降、多くの人が自分の住む地域(=ローカル)に目を向け始めた。地域の課題解決を行政に一方的に頼るのではなく、自分たちでできる範囲で、自ら街を良くしていく仕組みを求める声も広がってきた。

そこで横浜コミュニティデザイン・ラボは、アクセンチュアのCSRチームの支援を受け、横浜市政策局や横浜市立大学とも連携し、2014年に横浜市内の地域課題を市民参加型で解決していくウェブサイト「LOCAL GOOD YOKOHAMA」を開設した。

地域の価値ある取り組みを伝えるニュース機能や地域情報の「見える化」機能のほか、自分の暮らす地域の課題を投稿すると、それが共通の地図に表示され、地域の課題が可視化されるという仕組みを備える。さらに、地域の課題に取り組むプロジェクトを後押しするためのクラウドファンディング機能とスキルマッチング機能も実装し、ミッションに賛同する市民の力だけで資金が調達できるプラットフォームになっている。

ほかにも、シェアオフィス「さくらWORKS<関内>」や、ものづくり工房「FabLab Kannai」など、さまざまな地域の課題解決に取り組むプロジェクトを生み出している。

「舞台監督をずっとやっていたせいか、全体を見ながら、すべてがうまくいくための調整をすることが習慣になっているのです」(杉浦)

裏ワザ2. “黒子”のように気を配る

杉浦は、自身がプレイヤーとなるよりも、さまざまなプレイヤーを盛り立てたり支援したりする、「地域の“黒子”のような存在でありたい」という。

金銭的な価値ではなく、地域の課題を解決することをミッションに掲げるからには、その思いを形にし、実現させていくためのプロデュース能力が運営者には求められるのだが、その点に関して杉浦は適任だ。なぜなら、もともと舞台監督をしていたことがあり、多種多様な人々が関わるプロジェクトにおいて、人々の間に起きる摩擦や不協和音を冷静に見つめ、プロジェクトのゴールを見据えたコミュニケーションのあり方を知り、そのために動くことに長けているからだ。

舞台監督とは、「AAA (Access All Area)パス」を持ち、すべての装置や設備の場所に出入りでき、現場が滞りなく動いているかどうかを微細に確認する役割を担う人を指す。そうした裏方気質な立ち振舞いが、「いまでも身体に染みついている」と杉浦は語る。

「舞台監督は、周囲に気を配りながら、みんなが快適に過ごすための場を整える役割を担っています。特定の分野のスペシャリストたちを尊敬しているからこそ、その才能やスキルを十二分に発揮するための設えをすることができるのです」

こうした考え方は、舞台の現場だけでなく、地域資源のマネジメントにもつながっているという。

「地域で活動している団体や企業のことをより多くの人に知ってもらうことで、仲間が増えて事業やプロジェクトが継続できたりすれば、それ以上に嬉しいことはありません」

一方で舞台の仕事にはない挑戦も地域のマネジメントには求められるという。

「舞台はひとつの現場ですべてが完結しますが、街はそれまでの地域の歴史の積み重ねを意識しなければなりません。意識すべき時間軸がより長いわけです。そこに住む人たちそれぞれに生活があり、多様な価値観や美学もある中で、どうしたらお互いが共生できるか。それを常に考えています」

杉浦の活動の拠点でもある、横浜市関内にあるシェアオフィス「さくらWORKS<関内>」は、イベントスペースとしても使われており、地域コミュニティの交流の場になっている。

裏ワザ3. 相手からの連絡は見過ごさない

日々、多種多様な人々と出会い、つながりを生み出している杉浦にとって、連絡先を把握し、いつでもコンタクトが取れる状態にしておくことは活動の生命線だ。相手に連絡する際も、共通の話題や次へとつながるきっかけを意識したコミュニケーションをいつも心がけているという。

「NPOはミッションベースで動いている組織なので、人々に共感してもらえるか、興味を持ってもらえるか、あるいは相手にとって価値ある情報やつながりを提供できるかによって、存在価値が図られるものだと思います。そのため、会った相手からメールやメッセージが届いたときは必ずお返事するように心がけています。1日に100件以上のメッセージが飛び交うので遅れることもしばしばで申し訳ないのですが、何かしらわれわれの活動に興味を持って、わたしに連絡するために時間を割いてくれた人たちとのつながりは、とても大切だと思っています」

「他者と関係性を築く行為は時間がかかるもので、一朝一夕で成果がでるものではありません。何年もかけながら、普段のちょっとしたやりとりの積み重ねが“見えない価値”になっていくのです」(杉浦)

裏ワザ4. 「誰が何を知っているか」を把握しておく

新たなプロジェクトの企画を立案するときは、積極的に周囲に相談しながら企画をつくり上げていくという。そのとき、「誰が何を知っているか」を把握しておくことが大事になってくる。だからこそ、つながりのある人たちが最近どんなことに興味や関心や持っているかを知るために、日頃から、こまめにコミュニケーションをとっておくことが重要だという。

つながっている人のビジネスの近況を知ることができるEightのフィードも、杉浦の視点から捉えれば、多様な価値観を持つ人々の近況や仕事を知って、新しい仕事をつくる源泉になる。

「つながり」という目に見えないものだからこそ、常に気配りをしながら良好な人間関係を築くための手間を惜しまない。どんなに忙しくても、その日に出会った人の名刺は、必ずその日のうちにEightに登録しているのは、そのためだ。杉浦が語るビジネスネットワークのマネジメントは、誰もが容易につながる時代だからこそ、求められる考え方なのかもしれない。

文/江口晋太朗 撮影/西田香織