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ビジネスネットワークの“ものさし”

「人脈は数ではない」AERA前編集長・浜田敬子に訊く、“濃い”ビジネスネットワークをつくる企画力

人脈の価値は数ではなく、“濃さ”で決まる。濃い関係づくりに欠かせないのが、いい企画を練って一緒に仕事をすることだ。編集長を退き、新部署でメディアと企業の新しいビジネスを推進する浜田敬子が、その注目のビジネスネットワーク活用法を公開。

本記事から始まるインタビューシリーズ、「ビジネスネットワークのものさし」では、以下の問いを掲げ、Eightを活用して第一線で活躍するビジネスパーソンを取材する。

自分のビジネスネットワークを効果的に活用している人は、

「名刺の枚数」という”ものさし”だけで、

引き出しに眠る名刺の束を数えて満足してはいないはずだ。

彼らはいったいどんな”ものさし”を持っているのだろうか。

インタビュー候補として真っ先に名前が挙がったのが、浜田敬子だった。

2014年4月からAERA編集長に就任した彼女は、ネットでニュースを読む時代における週刊誌のあり方を追求し、積極的に誌面改革を行い、ひとつの成功例を世に示した。さらに、Yahoo!ニュースとの共同企画「みんなのリアル~1億人総検証」や、NewsPicksとのメディアタイアップなど、従来の紙のメディアの枠を超えて、デジタルメディアとのコラボプロジェクトも実現した。

それらの実績が評価され、16年5月からは朝日新聞社総合プロデュース室のプロデューサーとして新たな挑戦を始めている。その仕事は、同社の全リソースを活用して企業にメディアソリューションを提案するというもので、いわば自分のビジネスネットワークを最大限に活用できる舞台に上がったようなものだ。

彼女のEightのアカウントには、3000枚以上の名刺がすでに登録されているが、ビジネスネットワークは“数のものさし”で測るのではなく、「濃さ」で測るべきだと語る。ビジネスにおいて人間関係を濃くするコツは、とにかく一緒に仕事をしたい人に会って企画を練り、実際に仕事をつくって人脈を可視化していくことだという。

その編集スキルを活かした注目のビジネスネットワーク活用術を、Eightユーザーのために語ってくれた。

──AERAで編集長をされていた頃は、Eightをどのように活用していましたか。

編集部全体の人脈を広げるという意味でも、なるべく多くの方と名刺交換するのが編集長の仕事のひとつだと思っていました。

「こういう面白い人がいたよ」とか、「貴方がいま取材しているテーマに、この人がいいと思うよ」とか、積極的に会った人を編集部員に紹介するよう、心がけていました。

例えば、「この企業取材したいんですが、浜田さん誰か知り合いいませんか?」と相談されたときに、「あっ!このあいだ名刺交換した人がいるよ」と、Eightでパッと検索したりして。

──編集長だと、たくさん名刺交換する機会があったのでは?

編集長になる前までは、1年間でだいたい500〜600枚ぐらいだったのですが、編集長代理になったくらいから格段に増えました。編集長をしていた2年間で、約2,500枚の名刺を配りました。同じ数だけ相手からもいただいているので、もうEightがないと整理しきれなかったですね。

名刺には携帯番号やメールアドレスが書いてあるので、「編集長の立場で名刺を広く配るのは大丈夫か」という意見もありました。

でもわたしはなるべく多くの人と名刺交換した方がいいと思っていました。いつ、どんな取材でどんな人にお世話になるかわからないし、わたしの場合は編集長という立場で名刺交換をしているので、わたしだけの人脈ではなくAERA編集部の人脈を広げるためだと思っていたからです。

──編集長としてビジネスネットワークを広げる上で心がけていたことは?

外からいただいた取材や講演などのお仕事はAERAのためになると思ったものは基本断らない。それだけは意識していました。AERAにとって販促・営業の機会になると同時に、人脈を広げるチャンスにもなるからです。

編集長を退いたいまでも、自分が経験したことや取材で培ったことが誰かのお役に立てるならば、そんなに嬉しいことはないと思っているので進んでお受けしています。

──例えばどんな感じのものですか?

女性活躍や働き方改革といった社会課題に関するイベントの登壇依頼が多いですね。最近は「女性管理職向けの研修の講師を」という企業内研修の相談もよく受けます。

そうした研修の合間に人事の方から、「グローバル人材を求めているけど、なかなか採用で困っているんですよね」といった話を聞いたことを覚えていて、後にグローバル人材をテーマに特集を組んだこともあります。担当の編集部員にはそのときの人事の方の話をし、「この企業に取材行ってみたら?」というように紹介していました。

さらに最近は同時に企画の立て方、情報の整理の仕方といった編集に関するテーマの依頼も受けるようになりました。まさにこういった人脈の中で聞いた話をどう企画に結びつけるか、といったテーマを話すこともあります。

──浜田さんのビジネスネットワークの価値って、単につながりの数で測れるものではないと思うのですが?

数ではなくて、「濃さ」だと思います。

ビジネスの人間関係を濃くするには、やっぱり一緒に仕事をするしかないと思います。会っただけで終わるのでは人脈になかなかならないんですね。

Eightに入っている3000人と均等に付き合えているかというとそんなことはなくて、「この人といつか仕事してみたい」と思った人とは何らかのチャンスをつかんで、再び会いに行くようにしています。

──浜田さんの場合、例えばどんな方と仕事をしてみたいと思うのですか?

AERAにいたとき、「2大仕事をしたい仕事人」と思った人がいてそのひとりがコルクの佐渡島庸平さんでした。

佐渡島さんは、AERAで連載してくださっている漫画家の安野モヨコさんのエージェントでもあるので、「一度ご挨拶に」と連絡して会いに行きました。

もともと“ご挨拶”というのは口実で(笑)、佐渡島さんが今後何をやろうとしているのかを聞きたいという意図がありましたので、「わたしはこれからAERAでこんなことを仕掛けようと思っています。その中で何か一緒に新しいことをしませんか 」と言って、いくつかアイデアを話し合いました。その後、半年くらい経った頃に彼の方から突然電話がきました。

「リクルートが、これから『受験サプリ(現スタディサプリ)』の新しいキャンペーンをやるのですが、AERAとして企画を提案したらどうですか?。 ぼく来週リクルート行くから、浜田さんも一緒に行きませんか?」って。

結果的に、AERAで大型の広告キャンペーンを受注させていただき、『たった一度の人生を変える勉強をしよう』という藤原和博先生の本を制作するメディアミックス的なキャンペーンも実現しました。

コルク代表の佐渡島庸平。かつては、『モーニング』誌の編集者として『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』などの大ヒット漫画を手がけた編集者。「より勉強に興味を持ってもらうための仕掛けつくりを担ってほしい」と、藤原和博に誘われて、受験サプリ(現スタディサプリ)の企画メンバーに加入したとNewsPicksで報じれている

──「2大仕事をしたい仕事人」のもう一角は?

NewsPicksの佐々木紀彦さんです。

初めてお会いしたのは、佐々木さんがまだ「東洋経済オンライン」の編集長だったときです。当時リニューアルした東洋経済オンラインがすごく面白いと思って、わたしがつくった『天職』という秋元康さんと鈴木おさむさんの対談本を取り上げてほしくて、編集部の問い合わせにメールを送ったのです。すると、現場の担当の方から連絡があったので、本を持って編集部に行きました。

そのとき、「最近東洋経済オンライン、とても面白くなりましたよね。一度、佐々木編集長をご紹介いただけませんか?」と伝えたところ、一緒にご飯を食べることになり、「一緒にイベントやりましょう!」という話になって、働く女性のためのイベントを開催しました。

その後、佐々木さんが移られた先のNewsPicksでも、「また何か面白いことをやれたらいいですよね」と話していた中から、NewsPicksとAERAの共同企画「ニッポンから課長が消える?」が生まれたんです。

ネットメディアと紙メディアのコラボとして注目を集めたNewsPicksとAERAの共同企画「ニッポンから課長が消える?」。「何度かAERAの編集部員の何人かはNewsPicksに行って編集会議を開き、あちらのメンバーがAERAに来てみんなで原稿を読んだりして、編集部同士も交流したことで、AERA部員はデジタル媒体のことが少し学べたと思っています」と浜田は振り返る。

──いい企画を立てれば、相手と一緒に仕事ができて、濃いつながりもつくれる。NewsPicksのお話を聞いて、企画力の大切さを改めて感じました。

そういった講演依頼も最近はいただくようになりました。例えば「企画力って鍛えるにはどうしたらいいですか?」とか。

──例えばNewsPicksとコラボしたときは、お互いの思惑がある中で、どのようにして企画にまとめたのですか?

一緒に何か仕事をしたいと思ったときは、本気でその人とその人の会社のことを考えます

一緒に何か仕事をしたいと思ったときは、どのようなことを2社でやったらお互いにとってメリットになり、面白い企画になるか、本気でその人とその人の会社のことを考えます。もちろん、自分の会社にとってもプラスになるかどうかも考えます。

AERAとしては、より多くの人にリーチできるNewsPicksに特集を載せることで、もっと多くの人にAERAのことを知ってもらえるという目的がありました。逆にNewsPicksは当時、まだ編集部員の数が少なかったので、オリジナルコンテンツを、AERA編集部がつくったコンテンツで補えます。

どうやったらお互いの強みと弱みを保管し合えたり、効果を最大化できるかを突き詰めていけば、それがいい企画になると思うのです。

──総合プロデュース室は、浜田さんの企画力とビジネスネットワークを活かせる新たな舞台だと思いますが、具体的な仕事内容は?

従来の新聞広告は広告のスペースを売っていましたが、これからはクライアントの課題やニーズに合わせてプロダクトの形を変えていくべきではないか。そのような考えのもと、朝日新聞社が保有するさまざまな商品を柔軟に組み合わせることによって、適切に企業側のニーズに答えていこうと、5月に総合プロデュース室が立ち上げられました。

いま例えば、「うちの企業のブランディングを手伝って欲しい」とか、「女性活躍を熱心に進めているのだが、社内外にうまく発信できていない」といったご相談に対して、朝日新聞社としてお手伝いできることを企画としてご提案しています。

いままでは報道という形でやってきましたが、企業とのコラボレーションによっても、何かできることがあるかもしれない

──どのような企業から相談を受けることが多いですか?

いまは、もともとAERA時代に知っていた企業が中心です。「今度こういう仕事に就くので、一度ご挨拶に伺えますか?」と言って、お話をしているうちにいろんな課題をお聞きすることが多いです。

中でも女性活躍や働き方改革など社会課題を解決したいというものは新聞社にとっても取り組むべき大きな命題です。いままではそれを報道という形でやってきましたが、企業とのコラボレーションによっても、新聞社として報道とは違う形で何かできることがあるかもしれないと思っています。

──社内のどのようなリソースを組み合わせて企画をつくることが多いですか?

朝日新聞社は、新聞や雑誌だけでなく、デジタルメディアもありますし、最近はイベントも開催しています。また、カスタム出版の部署を活用することもあります。

商品を組み合わせるというのは、いろんな人のアイデアの組み合わせを考えるということでもあります。わたしは企画を立てますが、それを実現するには、社内のいろんな人たちの力を結集しなくてはなりません。営業の担当と考えたり、デジタルの担当に相談することも多いです。

朝日新聞社のリソースだけでは完結しないときもあります。例えば、「やっぱり動画が必要だよね」となったら、外部で動画をつくれる制作会社の知人に声をかけるなど、社内外の人の知恵を集めて「ユニット」をつくっていくイメージです。

──社外の人もチームにいれる理由は?

いまの時代は社外の知恵も取り込まないと、新しいことはできないからです。逆に何か新しいことにチャレンジすれば、新しい人と知り合えて、それがまた人脈になっていくものです。

新しいことにチャレンジすれば、新しい人と知り合えて、それが人脈になる

先ほど話した動画が制作できる知人も、AERA時代、新しいことにチャレンジしたことがきっかけで知り合い、信頼するようになった人です。

AERAがYahoo!ニュース用にオリジナルコンテンツを制作して提供し、「みんなのリアル~1億人総検証」というコーナーをつくりました。いまでも続いています。そのときYahoo!ニュースで声をかけてくださった方は、もともとドワンゴでニコニコ動画のチームにいた方で、「ニコ生×AERA」という番組をやっていたときのスタッフの方です。

それもたまたまあるニコ生の番組にAERAの記者が出演したときに、わたしが付き添いで行って、「ニコ生でAERAの番組を創りたい」と話したことを、その方が「面白いからやろう!」って言ってくださって、月1で生放送番組を放送するようになったのです。その後、彼がYahoo!ニュースに移ると「また何かやりませんか?」と声をかけてくれたんです。結果、トントン拍子でコラボ企画案が決まりました。

多くの人にリーチできるプラットホームであるYahoo!ニュースに、AERAのコンテンツを出せるという魅力も当然ありましたが、動画とテキストを組み合わせたオリジナルコンテンツをつくろうということで、古田清悟さんという東北新社のディレクターがアサインされていたことが決定打となりました。

古田さんもやはり、以前から「いつか一緒に仕事をしてみたい」と思っていた人でした。NewsPicksのシンポジウムにたまたま彼が登壇していて、先進的なテクロノジーと融合させた番組をつくっていたから、名前を覚えていたのです。その古田さんが動画制作のチームにいると聞かされて、「絶対やる!」って返答しました。

そのとき初めて動画制作会社と仕事をしましたが、古田さんが撮った映像はとてもクオリティーが高いものでした。一度でも一緒に仕事をすると、「この人と仕事をするとこんな面白いことができるんだ」と思えて、強い絆が生まれます。

いまも動画制作の提案が必要になれば、古田さんに真っ先に相談しています。

──濃いビジネスネットワークは、互いにいい企画を練るところから始まるのですね。

人脈って何のためにあるかというと、いい仕事をつくるためですよね。ただ闇雲に数を増やすのではなくて、一つひとつ仕事に落とし込むことで「人脈を可視化」していかなければ意味がないと思うのです。

「この人と知り合ってよかった、この人と仕事したい」って思える人に出会えたら、それを媒体のためにいい企画にどうやって落とし込んでいくかを一生懸命考え出します。

ただ闇雲に人脈の数を増やすのでは意味がない。それを仕事に落とし込むことで、『人脈を可視化』していくべき

そこでいい仕事ができれば、また新しい人と知り合えて、そこからさらに新しい企画が生まれて、媒体の力も強まる。人脈もどんどん可視化されていく。その繰り返しで仕事のフィールドが少しずつ広がっていくイメージで、結果的に面白い企画が生まれる連鎖がつくれると思うんです。

──濃いビジネスネットワークをつくれている人と、そうでない人では仕事のパフォーマンスに大きな差が生まれそうですね。

「人脈格差」って単に数ではないと思います。いい仕事をしているなあと思う人は本当に困ったときに助けてくれる人がいるか、本当にやりたい仕事のために集まってくれる人がいると思います。そういう意味で、人脈が”濃い人”と”薄い人”では大きな差があると思います。

──いまは”薄い”けど、これから”濃く”していきたいと思う人たちに向けて、何かアドバイスをいただけますか?

人から与えられたチャンスを自分のものにするのが第一歩。まずは人から与えられたチャンスを活かしてやってみると、一緒にやった会社の人に知り合いができて、何かあったら次も一緒にできるかもしれません。後は、やっぱり「この人と仕事やってみたい!」って強く思うことですね。

──浜田さんの「2大仕事をしたい仕事人」のように、ということですね?

何か強い動機がないと、なかなか濃いつながりってつくれないと思うんですよ。単に異業種交流会やネットワーキングパーティーに行って、「名刺の数を集めます!」って言うだけでは。

会いたい人の情報を少し追ってみたら、セミナーの講師をやっていたりするので、直に会いに行って名刺交換できるチャンスは誰にでもあるんです。

──相手はすでに自分より活躍している方が多いと思いますが、やはりギブするものがないと駄目でしょうか。

自分からギブできるものが思い当たらなくても、「何か一緒に仕事できませんか?」ではなくて、例えば、「こういう課題を自分(自社)は抱えていて、御社の事業と組み合わせることによって、ここを助けてもらえませんか?」というように話すといいのではないでしょうか?

ちなみにAERAの編集長時代、特別編集長という1号限りの編集長を秋元康さんやジブリの鈴木敏夫さん、放送作家・脚本家の小山薫堂さんなどに引き受けていただきました。そのとき、なぜ引き受けていただきたいのか、どんな雑誌を一緒につくりたいのか、想いを直筆の手紙で伝え、お願いしました。最後は熱意があるのみだと信じています。